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【騎士団長サー・ヴィンセント】
夜、娼館「夜想曲」に通う
商人ダリウスと密談
護衛は常に4人
屋敷の警備は厳重
サクサクと書ける。
羽ペンのように、インクが垂れない。
紙も安価に作れる。
「この魔法は...革命的だ」
ドアがノックされた。
「マルクスさん、戻られましたか?」
アリアの声だ。
「ああ、入ってくれ」
アリアが部屋に入ってきた。
そして、マルクスの手元を見て驚いた。
「それは...何ですか?」
「新しい魔法で作ったノートと鉛筆だ」
マルクスは見せた。
「これなら、羊皮紙より安く、羽ペンより便利だ」
「情報をまとめるのに最適だ」
アリアは目を輝かせた。
「すごいです! こんな魔法、見たことありません!」
「お前にも教える。便利だぞ」
マルクスは魔法の理論を説明し始めた。
「まず、物質創造の基本は...」
こうして、また一つ、マルクスは新しい魔法を生み出した。
前世の知識が、この世界の魔法と融合していく。
アリアは真剣にメモを取っていた。
もちろん、マルクスが作った鉛筆とノートで。
「物質創造魔法は、高度な技術とされています」
「魔法学院でも、上級者しか学べません」
「でも、マルクスさんは簡単に...」
「簡単じゃない。前世の知識があるからだ」
マルクスは説明を続けた。
「この世界の魔法使いは、『何を作るか』しか考えていない」
「だが、前世の科学では『どうやって作られているか』を学ぶ」
「紙がどう作られるか。鉛筆の成分は何か」
「それを知っているから、イメージが明確になる」
アリアは感心したように頷いた。
「なるほど...だから、マルクスさんの魔法は強いんですね」
「ああ。そして、これは武器にもなる」
マルクスは鉛筆を手に取った。
「例えば、戦闘中に即座に武器を作り出す」
「矢が切れたら、魔法で矢を作る」
「毒薬が必要なら、魔法で毒を作る」
アリアの表情が変わった。
「それは...危険な使い方ですね」
「そうだ。だが、悪人を相手にするには必要だ」
マルクスは窓の外を見た。
「この王都には、法で裁けない悪がいる」
「騎士団長のように、権力で守られた悪人」
「そういう相手には、こちらも手段を選べない」
その時、ドアが再びノックされた。
「マルクス、いるか?」
ティグリスの声だ。
「入れ」
ティグリスが入ってきた。
その後ろに、ルーナとカミラもいた。
「情報を集めてきた」
ティグリスが言った。
「俺もだ」
ルーナが続ける。
「私も、いい情報を手に入れたわ」
カミラが妖艶に笑った。
マルクスは立ち上がった。
「全員集まったか。では、情報を共有しよう」
机の上に、マルクスが作った地図を広げる。
これも魔法で作ったものだ。
「まず、俺から報告する」
マルクスは鉛筆で地図に印をつけた。
「騎士団長は毎晩、娼館『夜想曲』に通っている」
「そこで商人ダリウスと密談している」
「おそらく、賄賂の受け渡しだ」
ティグリスが腕を組んだ。
「なるほど。証拠を掴むチャンスだな」
「ああ。だが、警備が厳重だ」
マルクスは続けた。
「次、お前たちの報告を聞こう」
「ティグリス、冒険者ギルドでは何を聞いた?」
「騎士団長の評判は最悪だ」
ティグリスが答えた。
「冒険者たちの間では、『騎士団長に逆らうと消される』と噂されている」
「実際、反対派の騎士が何人も行方不明になっている」
「暗殺か...」
マルクスは記録する。
「ルーナは?」
「屋敷の周辺を調べたわ」
ルーナが地図を指差した。
「裏口は夜間、警備が薄くなる」
「使用人用の出入り口もある。そこから侵入できそうよ」
「いい情報だ」
マルクスは頷いた。
「カミラは?」
カミラが色っぽく笑った。
「商人ダリウスに接触したわ」
「彼、意外と口が軽いのよ。お酒が入るとね」
「それで?」
「騎士団長は毎月、金貨200枚を受け取っているそうよ」
「その代わりに、ダリウスの違法取引を見逃している」
マルクスの目が鋭くなった。
「決定的な証拠だ」
「ただし、帳簿は屋敷の金庫に保管されているらしいわ」
「なら、その帳簿を盗み出す」
マルクスは計画を立て始めた。
「三日後、実行する」
「ギムリは?」
マルクスが尋ねた。
その時、廊下から重い足音が聞こえた。
ドアが開き、ギムリが入ってきた。
手には大きな袋を抱えている。
「おう、悪い。遅くなったぜ」
ギムリは袋をドサッと床に置いた。
「鍛冶屋を回って、色々聞き込んできたんだ」
「それで、何がわかった?」
ギムリは髭を撫でながら答えた。
「騎士団長の武器と防具を作ってるのは、『鋼鉄の槌』って工房だ」
「そこの親方と飲んできた。ドワーフ同士、話が弾んだぜ」
「それで?」
「騎士団長の鎧は最高級品だ。魔法耐性もある」
「正面から魔法攻撃しても、効かないだろうな」
マルクスは記録する。
「弱点は?」
「関節部分だ。どんな鎧も、動くためには隙間がある」
ギムリは自分の腕を動かして見せた。
「首、脇の下、膝の裏。そこは薄い革しかない」
「そこを狙えば、一撃で倒せる」
「なるほど。さすが鍛冶師だな」
「それだけじゃないぜ」
ギムリはニヤリと笑った。
「親方から、もっといい情報を聞き出した」
「騎士団長の屋敷の金庫は、特注の魔法錠前だそうだ」
「普通の鍵開けじゃ、開けられねえ」
ルーナが眉をひそめた。
「それじゃ、帳簿を盗めないじゃない」
「安心しな」
ギムリは袋から何かを取り出した。
金属製の細い棒と、小さな魔石。
「これは、魔法錠前解除装置だ」
「俺が昔、作ったやつだ」
「魔石の魔力で、錠前の魔法を無効化する」
マルクスは感心した。
「よくそんなものを持っていたな」
「まあな。昔、色々あってよ...」
ギムリは照れたように頭を掻いた。
「それと、もう一つ」
ギムリは袋から小瓶を取り出した。
「これは音消しの油だ」
「扉の蝶番に塗れば、音を立てずに開けられる」
「潜入には必須だぜ」
「完璧だ」
マルクスは頷いた。
「お前の情報で、作戦がかなり具体的になった」
ギムリは親指を立てた。
「へへっ、役に立てて何よりだ」
「それで、いつやるんだ?」
「三日後だ」
マルクスは全員を見渡した。
「ギムリの情報で、侵入から金庫破り、証拠の奪取まで道筋が見えた」
「あとは、セリアの報告を待つだけだ」
その時、軽いノックの音が響いた。
「失礼します」
優しい声とともに、セリアが部屋に入ってきた。
「遅くなって申し訳ございません」
セリアは丁寧に頭を下げた。
「いや、ちょうどいいタイミングだ」
マルクスが椅子を勧める。
「教会での調査は、どうだった?」
セリアは少し暗い表情になった。
「あまり良い話ではありませんわ」
全員が真剣な顔で聞き入る。
「王都の大聖堂で、神官長にお話を伺いました」
「表向きは、騎士団と教会は協力関係にあります」
「ですが...」
セリアは言葉を選ぶように続けた。
「神官長は、騎士団長を深く憎んでおられました」
「憎んでいる? なぜだ?」
「三年前、教会の孤児院が焼かれたのです」
セリアの声が震える。
「騎士団長が建設しようとしていた商業施設の場所に、孤児院があったそうです」
「教会は移転を拒否しました。そうしたら...」
「放火か」
マルクスが冷たく言った。
「はい。証拠はありませんが、誰もが騎士団長の仕業だと知っています」
「その火事で、子供が二人、亡くなりました」
部屋に重い沈黙が落ちた。
カミラが吐き捨てるように言った。
「最低ね。子供まで...」
ティグリスも拳を握りしめている。
「そんな奴、生かしておく価値もねえ」
セリアは続けた。
「神官長は言いました。『いつか天罰が下る』と」
「でも、三年経っても何も起きていません」
「権力が、全てを握り潰しているのです」
マルクスは静かに聞いていた。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「天罰は下らなかった。だから、俺たちが下す」
セリアが顔を上げた。
「マルクス様...」
「子供を殺すような奴は、生きている資格がない」
マルクスの目が鋭くなる。
「当初の計画通り、証拠を集めて王女に渡す」
「だが、それだけじゃ足りない」
「どういう意味だ?」
ティグリスが尋ねた。
「騎士団長は、必ず俺たちが処刑する」
マルクスは断言した。
「法で裁けないなら、直接裁く」
「それが、俺たちの役目だ」
セリアは複雑な表情を浮かべた。
「私は神官です。本来なら、殺生を戒めるべき立場...」
「ですが」
セリアは祈るように両手を組んだ。
「あの子供たちのためにも、騎士団長は裁かれるべきです」
「私は、皆様の行動を支持します」
「セリア...」
アリアが心配そうに見る。
「大丈夫ですわ。これは私の決意です」
セリアは微笑んだ。
マルクスは頷いた。
「ありがとう。お前の情報で、俺たちの決意が固まった」
マルクスは全員を見渡した。
「これで、全員の報告が揃った」
「騎士団長の罪状は明らかだ」
「賄賂、暗殺、放火、子供の殺害」
マルクスは地図に印をつけていく。
「三日後、実行する」
「ルーナとギムリが屋敷に侵入し、証拠を盗む」
「その間、俺たちは騎士団長を娼館で足止めする」
「そして...」
マルクスの目が冷たく光った。
「証拠を手に入れた後、騎士団長を始末する」
全員が頷いた。
「了解」
「では、詳細な作戦を説明する」
マルクスは地図を広げ、新しく作った鉛筆で書き込んでいく。
「三日後の夜、騎士団長は娼館『夜想曲』に行く」
「カミラ、お前はその前に娼館に潜入しろ」
「騎士団長が来たら、接客して時間を稼げ」
「任せて。男を転がすのは得意よ」
カミラが妖艶に笑った。
「ティグリスとアリアは、娼館の外で待機」
「万が一、騎士団長が屋敷に戻ろうとしたら、足止めしろ」
「魔物の襲撃を装ってもいい」
「了解だ」
ティグリスが頷く。
「わかりました」
アリアも答えた。
「セリアは宿で待機。緊急時の回復要員だ」
「はい。いつでも駆けつけられるよう、準備しておきます」
「そして、ルーナとギムリ」
マルクスは二人を見た。
「お前たちが最も重要だ」
「騎士団長が娼館にいる間に、屋敷に侵入する」
ルーナが地図を見ながら言った。
「侵入ルートは決めたわ。裏口から使用人の通路を通る」
「警備の交代時間は、夜の10時」
「その隙に入る」
ギムリが続けた。
「金庫は二階の書斎にある」
「俺の解除装置なら、5分で開けられるぜ」
「帳簿を見つけたら、全部持ち出せ」
マルクスは命じた。
「いや、待て」
ティグリスが口を挟んだ。
「帳簿を全部盗んだら、気づかれるんじゃないか?」
マルクスは微笑んだ。
「だから、これを使う」
マルクスは手を掲げた。
「クリエイト・ノートブック」
光が収束し、帳簿そっくりのノートが現れた。
「偽物か!」
ギムリが驚く。
「ああ。本物と入れ替える」
「見た目は同じだが、中身は白紙だ」
「気づかれるのは、数日後になる」
ルーナが感心した。
「その魔法、便利ね」
「前世の知識だ。会社では偽装工作が日常茶飯事だったからな」
マルクスは苦笑した。
「それで、証拠を手に入れた後は?」
アリアが尋ねた。
「王女アリシアに届ける」
マルクスは答えた。
「だが、その前に...」
マルクスの表情が冷たくなる。
「騎士団長を始末する」
「どうやって?」
カミラが聞いた。
「娼館から出たところを襲う」
「帰り道、必ず暗い路地を通る」
「そこで、全員で襲撃する」
ティグリスが剣の柄を握った。
「正面から戦うのか?」
「いや、暗殺だ」
マルクスは断言した。
「前世で学んだ。敵を倒すのに、正々堂々である必要はない」
「騎士団長は子供を殺した。そんな奴に、騎士道精神など不要だ」
全員が頷いた。
「三日後、準備を整えろ」
「武器、魔法、体調」
「全てを最高の状態にしておけ」
マルクスは地図を閉じた。
「これが、俺たちの最初の大仕事だ」
「成功すれば、王都での地位が確立する」
「失敗すれば...死だ」
重い言葉が部屋に響く。
だが、誰も恐れていなかった。
むしろ、全員の目には決意が燃えていた。
「さあ、散会だ」
「明日から、各自準備を始めろ」
一人ずつ部屋を出ていく。
最後に残ったのは、アリアだけだった。
「マルクスさん」
アリアが静かに呼びかけた。
「どうした?」
アリアは少し躊躇してから、口を開いた。
「本当に...騎士団長を殺すんですか?」
マルクスは窓の外を見た。
月明かりが、街を照らしている。
「ああ。殺す」
「でも、それは...」
アリアは言葉を選ぶ。
「私たちが裁くことは、正しいんでしょうか」
「法があります。王の裁きがあります」
マルクスは振り返った。
「法は、権力者の味方だ」
「前世で、俺は何度も見た」
「不正を働く上司。それを見逃す会社」
「内部告発しても、もみ消される」
「警察に訴えても、証拠不十分で終わる」
マルクスの声には、深い怒りが込められていた。
「法は、弱者を守らない」
「守るのは、金と権力を持つ者だけだ」
「だから...自分たちで裁くんですか?」
「そうだ」
マルクスは断言した。
「騎士団長は子供を殺した」
「賄賂を受け取り、民衆を虐げた」
「そんな奴を、法が裁かないなら」
「俺たちが裁く」
アリアは複雑な表情で俯いた。
「私は...魔法学院で、正義について学びました」
「善と悪。正しい道と間違った道」
「でも、現実は違うんですね」
「ああ。現実は、もっと汚い」
マルクスは優しく言った。
「お前が、ついてこられないなら無理はしない」
「この作戦から外れてもいい」
「いえ」
アリアは顔を上げた。
「私も、行きます」
「マルクスさんが正しいかどうか、まだわかりません」
「でも、あの孤児院の子供たちのことを思うと...」
アリアの目に、涙が浮かんでいた。
「騎士団長は、許せません」
マルクスは頷いた。
「ありがとう、アリア」
「でも、約束してください」
アリアは真剣な目で見た。
「私たちは、悪人だけを裁く」
「無実の人は、絶対に傷つけない」
「約束する」
マルクスは誓った。
「俺たちは、理不尽を裁く」
「だが、新たな理不尽は生まない」
アリアは微笑んだ。
「それなら、私も最後までついていきます」
「心強いよ」
アリアは部屋を出ようとして、ふと立ち止まった。
「あの...マルクスさん」
「ん?」
「前世では...どんな人だったんですか?」
マルクスは少し考えてから答えた。
「ただのサラリーマンだ」
「理不尽に耐えて、何も言えずに、死んだ」
「でも、今は違うんですね」
「ああ。今は違う」
マルクスは拳を握った。
「この世界では、俺が理不尽と戦う」
「前世でできなかったことを、全部やる」
アリアは優しく微笑んだ。
「きっと、前世のマルクスさんも、今の姿を見て喜んでいると思います」
「...そうだといいな」
アリアが部屋を出た後、マルクスは一人、月を見上げた。
「前世の俺よ、見ているか?」
「俺は今、お前ができなかったことをやっている」
「理不尽と戦い、弱者を守り、悪を倒す」
風が窓から吹き込んでくる。
「三日後、最初の大仕事だ」
「必ず成功させる」
マルクスは剣を手に取った。
刀身が月光を反射して、鈍く光る。
「騎士団長よ、お前の罪を数えろ」
「俺が、裁いてやる」
三日間は、あっという間に過ぎた。
各自が準備を進める。
ルーナは毎晩、騎士団長の屋敷を偵察し、警備のパターンを完全に把握した。
ギムリは武器を研ぎ、魔法錠前解除装置を調整した。
ティグリスは剣の訓練を欠かさず、いつでも戦える状態を維持した。
アリアは魔法の練習を繰り返し、詠唱時間をさらに短縮した。
カミラは娼館に通い、店の構造と騎士団長の好みを調べ上げた。
セリアは回復魔法の準備を整え、緊急時に備えた。
そして、マルクスは。
前世の記憶を頼りに、作戦を何度もシミュレーションした。
「失敗は許されない」
机の上には、詳細な計画書。
マルクスが魔法で作ったノートに、びっしりと書き込まれている。
タイムテーブル。
配置図。
想定されるトラブルと対処法。
逃走ルート。
全て、前世のプロジェクト管理の経験が活きている。
「会社でやらされた資料作りが、こんなところで役立つとはな」
そして、運命の日。
夕方。
全員が宿の一室に集まった。
「今夜、決行する」
マルクスが全員を見渡す。
「各自、役割を確認しろ」
ルーナが立ち上がった。
「私とギムリは、夜10時に屋敷へ侵入」
「金庫を開けて、帳簿を盗む」
「所要時間は20分」
ギムリが続けた。
「偽物の帳簿と入れ替えて、証拠を消す」
「足跡も残さねえ。完璧な仕事をしてやるぜ」
カミラが髪を整えながら言った。
「私は9時に娼館へ入る」
「騎士団長が来たら、徹底的に相手をする」
「少なくとも一時間は引き留めるわ」
ティグリスが剣を構えた。
「俺とアリアは娼館の周辺で警戒」
「騎士団長が戻ろうとしたら、妨害する」
アリアも頷いた。
「魔法で、道を塞ぐこともできます」
セリアが祈るように両手を組んだ。
「私は宿で待機します」
「何かあれば、すぐに駆けつけます」
マルクスは全員を見た。
「そして俺は、全体を統括する」
「各自から報告を受け、状況に応じて指示を出す」
マルクスは懐から、小さな魔石を取り出した。
「これは、通信用の魔石だ」
「魔力を込めれば、他の魔石と繋がる」
「前世の携帯電話の原理を応用した」
全員に魔石を配る。
「これで、離れていても連絡が取れる」
「何かあったら、すぐに報告しろ」
ルーナが魔石を見て驚いた。
「こんな魔法まで作ったの?」
「必要だからな」
マルクスは答えた。
「では、最終確認だ」
マルクスは時計を見た。
「現在、午後7時」
「各自、配置につくまで2時間ある」
「食事を済ませ、装備を整えろ」
全員が頷く。
「そして、忘れるな」
マルクスの目が鋭くなる。
「今夜、俺たちは殺人を犯す」
「法を超えた、私刑だ」
「後戻りはできない」
沈黙が部屋を支配する。
「それでも、やるか?」
ティグリスが最初に答えた。
「やる。あんな悪党、生かしておく価値はねえ」
ルーナも続いた。
「私も同意見よ」
ギムリが拳を打ち鳴らした。
「当然だ」
カミラが微笑んだ。
「悪人を殺すのに、躊躇は要らないわ」
セリアが静かに言った。
「神はお許しにならないかもしれません」
「でも、私は皆様と共に行きます」
最後に、アリアが頷いた。
「私も、覚悟はできています」
マルクスは全員を見渡した。
「ありがとう」
「では、行くぞ」
「作戦開始だ」
夜が、王都を包み始めていた。




