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第二部『王都編』
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【極秘依頼】腐敗した騎士団の粛清
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■ 依頼概要
依頼主: 王女アリシア(匿名)
場所: 王都
対象: 騎士団長サー・ヴィンセント
罪状: 賄賂、不正取引、民衆への暴力
報酬: 金貨100枚
備考: 王族からの直接依頼。極秘厳守。
■ 対象者の罪状詳細
1. 賄賂での癒着
- 商人と結託し、不正な取引を繰り返している
2. 民衆への暴力
- 暴力で民衆を弾圧し、恐怖で支配している
3. 暗殺行為
- 反対派の騎士を次々と暗殺している
4. 王族への脅迫
- 王女すら脅迫する横暴ぶり
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■ シーン:王都への道
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馬車は王都に向かって走る。
マルクスは聞いた。「王都までどれくらいかかるんだ?」
「街道を通れば三日。だが、山道を使えば一日短縮できる。ただし危険だがな」ティグリスが答えた。
「どうする?」
マルクスは即答した。「山道だ。時間が惜しい」
山道は予想以上に険しい。
「血の匂いがする...」ティグリスが鼻を鳴らした。
マルクスは警戒する。「近くに魔物がいるな」
次の瞬間、上空から影が落ちてきた。
「ワイバーンだ!」
「ソイルマスク!」
命中。
土がワイバーンの顔を覆う。
「ギャアアア!」
視界を奪われたワイバーンが暴れ、墜落する。
地面に激突し、土煙が上がった。
「ワイバーンの肉はうまいからな。取ってくる」
「え? どうやって――」
ティグリスの言葉が終わる前に、マルクスは宙に浮いた。
「飛べるのか!?」
「レビテーションと風魔法の組み合わせだ」
そう言って、マルクスは空を飛んで行った。
残された仲間たちは、呆然と空を見上げる。
「あの方...いつの間に飛行魔法を...」
アリアが驚愕の表情で呟く。
「魔法の組み合わせ、か。そんなことができるのか」
ルーナも信じられない様子だ。
数分後。
マルクスが戻ってきた。手には大きな肉の塊と、輝く魔石。
「これで今夜の夕食は豪華だな」
「...マルクスさん、本当に何者なんですか?」
アリアの問いに、マルクスはただ笑った。
「ただの底辺冒険者だよ。ちょっと知恵を絞っただけだ」
マルクスは肉を馬車に積み込む。
「それより、この肉をどう調理するか考えようぜ。ワイバーンステーキは最高だぞ」
ティグリスが呆れたように肩をすくめた。
「お前、本当に変わったよな」
「ああ、前世の記憶を取り戻してからな」
マルクスは空を見上げた。
「これからもっと変わる。この世界で、俺はまだまだ強くなる」
馬車が再び動き出す。
「そういえば、ワイバーンの魔石はどうするんですか?」
アリアが尋ねた。
「売る。王都なら高値で買い取ってくれるだろう」
マルクスは魔石を手のひらで転がす。
「金は必要だ。これからの戦いには、装備も人手も要る」
「戦い...ですか?」
「ああ。王都には、もっと大きな敵がいる」
マルクスの目が鋭くなる。
「腐敗した騎士団長、悪徳貴族、裏で糸を引く商人たち」
「全員、俺たちが相手にする」
ティグリスが笑った。
「面白くなってきたな」
ルーナも弓を磨きながら頷く。
「王都か。楽しみね」
「まずは情報収集だ。敵を知らなければ勝てない」
マルクスは前世の経験を活かす。
「戦う前に、準備を整える。それが勝利の秘訣だ」
夕暮れ時、馬車は街道沿いの宿場町に到着した。
「今日はここで休もう」
マルクスが馬車を降りる。
宿屋の看板には「銀月亭」と書かれている。
「部屋を二つ頼む。それと、厨房を借りたい」
「厨房を...ですか?」宿の主人が怪訝な顔をする。
マルクスはワイバーンの肉を見せた。
「これを調理する。余った分は、宿の料理に使っていい」
主人の目が輝いた。
「ワイバーン!? 本物ですか!?」
「ああ。さっき倒したばかりだ」
「それは...ありがとうございます! 厨房、どうぞお使いください!」
主人は興奮気味に案内する。
マルクスは仲間たちに言った。
「お前たちは部屋で休んでろ。俺が料理を作る」
「え? マルクスさん、料理もできるんですか?」
「前世でな。一人暮らしが長かったからな」
厨房に立ったマルクスは、手際よく肉を切り分けていく。
「前世の知識が、こんなところでも役立つとはな」
ワイバーンの肉に塩とハーブを擦り込む。
この世界の調味料と、前世の調理法を組み合わせる。
「火加減は中火。表面をしっかり焼いて、中は柔らかく」
肉がジュウジュウと音を立てる。
いい匂いが厨房に広がった。
「おお...いい香りだ」
宿の主人が覗き込む。
「こんな焼き方、見たことない」
「企業秘密だ」
マルクスは笑って答えた。
三十分後。
部屋に料理が運ばれる。
「うわあ...すごい」
ルーナが目を輝かせた。
完璧に焼かれたワイバーンステーキ。野菜の付け合わせ。ソースまで手作りだ。
「さあ、食え。明日からが本番だ」
マルクスは椅子に座った。
「王都での戦いに備えて、体力をつけておけ」
一同はワイバーンステーキを口に運ぶ。
「美味しい...!」
アリアが感激の表情を浮かべた。
「こんなに柔らかくて、味が濃いなんて...」
ティグリスも頷く。
「確かにうまい。魔物の肉とは思えないな」
ルーナは黙々と食べ続けている。
「お気に召したようで何よりだ」
マルクスも自分の分を食べ始める。
前世では、こんな贅沢な食事はできなかった。
毎日コンビニ弁当か、インスタント食品。
「この世界も悪くないな」
食事が終わると、マルクスは地図を広げた。
「さて、明日の予定を確認する」
「王都まであと二日。到着したら、まず冒険者ギルドで情報を集める」
「騎士団長の行動パターン、護衛の数、屋敷の構造」
「全て把握してから動く」
「暗殺は、準備が九割だ」
アリアが不安そうに尋ねた。
「マルクスさん、本当に騎士団長を...倒せるんでしょうか?」
「倒せる。いや、倒す」
マルクスは断言した。
「相手は権力者だ。正面から戦えば、こちらが不利」
「だが、俺には前世の知識がある」
地図に印をつけていく。
「騎士団長の弱点を見つける。証拠を集める。そして、確実に仕留める」
「前世で学んだ戦略、この世界の魔法、お前たちの力」
「全てを組み合わせれば、勝てる」
ティグリスが笑った。
「自信満々だな」
「当然だ。俺は前世で、理不尽に殺された」
マルクスの目が鋭くなる。
「この世界では、理不尽を殺す側になる」
「騎士団長も、悪徳貴族も、腐った権力者も」
「全員、俺が成敗する」
部屋に静寂が訪れた。
マルクスの決意が、仲間たちに伝わる。
ルーナがグラスを掲げた。
「じゃあ、作戦成功を祈って」
「乾杯、か」
ティグリスも続く。
アリアも小さく頷いて、グラスを持ち上げた。
「成功を、祈っております」
四人のグラスが触れ合う。
カチンと、乾いた音が響いた。
「明日は早朝出発だ。今夜はゆっくり休め」
マルクスは部屋を出ようとした。
「マルクスさん」
アリアが呼び止める。
「はい?」
「私たち...本当に、マルクスさんについていって大丈夫でしょうか」
「不安か?」
「少し...でも」
アリアは真剣な目で言った。
「マルクスさんを信じています。この三ヶ月、あなたは私たちを裏切らなかった」
「だから、王都でも、ついていきます」
マルクスは微笑んだ。
「ありがとう。お前たちがいるから、俺も戦える」
「おやすみ」
扉が静かに閉まった。
マルクスは自分の部屋に戻った。
窓を開けると、夜風が入ってくる。
星空を見上げる。
「三ヶ月か...」
前世の記憶が戻ってから、確かに三ヶ月が経った。
底辺冒険者から、ここまで来た。
仲間を集め、レベルを上げ、魔法を習得した。
「だが、まだ足りない」
マルクスは拳を握る。
「王都での戦いは、今までとは違う」
相手は騎士団長。権力も金も持つ男。
「証拠を集め、弱みを握り、確実に仕留める」
「前世の俺は、会社の不正を訴えても潰された」
「でも、この世界では違う」
マルクスは剣を手に取った。
「証拠を集めて、それでもダメなら...」
「この剣で、直接裁く」
月明かりが、剣の刀身を照らす。
「さあ、始めるか」
「王都での、本当の戦いを」
翌朝。
一行は早朝に出発した。
馬車は順調に王都へ向かう。
「あと一日で着くな」
ティグリスが言った。
「ああ。今日中に、もう一度作戦を確認しておく」
マルクスは資料を取り出した。
王女アリシアから受け取った依頼書。
そこには、騎士団長サー・ヴィンセントの詳細が記されている。
「対象:騎士団長サー・ヴィンセント」
「罪状:賄賂、不正取引、民衆への暴力、反対派の暗殺」
「報酬:金貨100枚」
「金貨100枚...」
ルーナが呟いた。
「それだけの価値がある仕事ってことね」
「いや、それ以上だ」
マルクスは真剣な表情で言った。
「この依頼は、王族からの直接依頼だ。成功すれば、王宮とのコネができる」
「失敗すれば...」
「死ぬ、ってこと?」
「最悪の場合はな。だが、失敗はしない」
マルクスは地図を広げた。
「まず、王都に着いたら宿を取る。目立たない場所がいい」
「次に、冒険者ギルドで情報収集。騎士団長の行動パターンを調べる」
「屋敷の見取り図、護衛の数、弱点」
「全て把握する」
アリアが尋ねた。
「それで、いつ実行するんですか?」
「情報が揃い次第、すぐにだ」
マルクスは答えた。
「ただし、証拠も集める」
「証拠?」
「ああ。騎士団長の不正の証拠だ」
マルクスは前世の経験を語る。
「前世で学んだ。権力者を倒すには、証拠が必要だ」
「証拠があれば、正当性が生まれる」
「ただの暗殺者じゃなく、正義の執行者になる」
ティグリスが感心したように言った。
「なるほどな。ただ殺すんじゃなく、理由を作るわけか」
「そうだ。それが、前世で学んだ戦い方だ」
「具体的には、どうやって証拠を集めるんですか?」
アリアが真剣な表情で聞く。
「いくつか方法がある」
マルクスは指を折りながら説明した。
「一つ、騎士団長の屋敷に潜入する。帳簿や契約書を探す」
「二つ、賄賂を受け取っている商人を特定し、証言を取る」
「三つ、暗殺された騎士たちの遺族から話を聞く」
「そして最後に、王女アリシア様から提供された情報を精査する」
ルーナが首を傾げた。
「でも、潜入なんて危険じゃない?」
「だから、お前の出番だ」
マルクスはルーナを見た。
「お前は元盗賊だろう? 忍び込むのは得意なはずだ」
「...まあ、できなくはないけど」
ルーナは少し照れたように答えた。
「騎士団長の屋敷は、警備が厳重よ?」
「だから、計画を立てる」
マルクスは紙に図を描き始めた。
「まず、屋敷の見取り図を手に入れる。次に、警備の交代時間を調べる」
「そして、最も警備が手薄になる時間を狙う」
「前世で学んだリスク管理だ」
ティグリスが笑った。
「お前、本当に前世で何者だったんだ?」
「ただのサラリーマンだよ」
マルクスは苦笑いした。
「プロジェクト管理、リスク分析、データ収集...」
「全部、会社で嫌というほどやらされた」
「それが、今になって役立つとはな」
アリアが不思議そうに尋ねた。
「サラリーマン...って、何ですか?」
「ああ、この世界にはない職業だな」
マルクスは説明を始めた。
「組織に所属して、毎日決まった仕事をする。給料をもらって生活する」
「冒険者とは違って、安定してるが...自由がない」
「上司の命令は絶対。理不尽でも従わなければならない」
マルクスの目が少し暗くなる。
「俺は、その理不尽に殺された」
「だから、この世界では絶対に、理不尽を許さない」
沈黙が訪れた。
やがて、ティグリスが口を開いた。
「お前の過去は知らない。だが、お前の決意は理解した」
「俺たちも、協力する」
ルーナも頷く。
「私も、理不尽は嫌いよ」
アリアも小さく微笑んだ。
「私たち、仲間ですから」
マルクスは心の中で思った。
(前世では、こんな仲間はいなかった)
(会社では、みんな自分のことで精一杯だった)
(でも、この世界では違う)
(信頼できる仲間がいる)
「ありがとう」
マルクスは素直に礼を言った。
「お前たちがいるから、俺は戦える」
「じゃあ、改めて役割分担を確認する」
マルクスは資料を並べた。
「ルーナ、お前は偵察と潜入担当だ」
「屋敷の見取り図を作成し、警備の配置を調べる。夜間に侵入ルートを確保してくれ」
「了解」
ルーナが頷く。
「カミラ、お前は諜報活動だ」
「騎士団長の周辺にいる商人や貴族に接触し、情報を引き出せ。お前の色仕掛けを使ってもいい」
「任せて。男なんて、簡単なものよ」
カミラが妖艶に微笑んだ。
「アリア、お前は魔法支援と分析担当だ」
「騎士団長が使っている魔道具や、屋敷の魔法防御を調べてくれ。特に警報魔法に注意しろ」
「はい、わかりました」
アリアが真剣な表情で答えた。
「ギムリ、お前は装備の準備と強化だ」
「全員の武器を最高の状態に整えてくれ。それと、屋敷の鍵を開けるための道具も作ってくれ」
「任せろ! この俺の腕にかかれば、どんな鍵でもこじ開けてやるぜ!」
ギムリが拳を叩いた。
「ティグリス、お前は戦闘と護衛だ」
「万が一、計画が露見した場合、全員を守ってくれ。それと、騎士団長の護衛騎士の戦闘力も調べておけ」
「任せろ」
ティグリスは剣の柄を握った。
「セリア、お前は後方支援と緊急時の回復だ」
「作戦中、何かあったらすぐに回復魔法を使える態勢を整えておいてくれ。それと、毒や呪いの対策も頼む」
「はい。皆さんの無事を、必ずお守りしますわ」
セリアが優しく微笑んだ。
「そして俺は、全体の指揮と情報収集」
「各自から報告を受けて、最終的な作戦を立てる」
マルクスは地図に印をつける。
「王都は大きい。七人で手分けして動く」
「毎晩、宿で情報を共有する」
「三日以内に、全ての準備を整える」
全員が頷いた。
「おう!」
「了解です」
「任せて」
「わかったぜ!」
「お任せください」
マルクスは仲間たちを見渡した。
「お前たちがいるから、俺は戦える」
「この作戦、必ず成功させる」
「そして俺は、全体の指揮と情報収集」
「各自から報告を受けて、最終的な作戦を立てる」
マルクスは地図に印をつける。
「王都は大きい。四人で手分けして動く」
「毎晩、宿で情報を共有する」
「三日以内に、全ての準備を整える」
「三日?」
ルーナが驚いた。
「短くない?」
「長引けば、相手に気づかれる」
マルクスは冷静に答えた。
「前世で学んだ。スピードこそが、勝利の鍵だ」
「情報を集め、計画を立て、即実行」
「それが、組織を相手にする時の鉄則だ」
ティグリスが感心したように言った。
「お前、本当に27歳か?」
「まるで、何十年も戦ってきたベテランみたいだ」
「前世を含めれば、62歳だからな」
マルクスは笑った。
「人生経験は、お前たちより長い」
その時、馬車が揺れた。
「おい、見えたぞ!」
御者が叫ぶ。
前方、地平線の向こうに、巨大な城壁が見えてきた。
王都だ。
「ついに...」
アリアが息を呑む。
巨大な城壁。その向こうに、無数の建物。
中央には、王宮の尖塔がそびえ立っている。
「でかいな...」
ルーナが呟いた。
「ああ。だが、どんなに大きな街でも、悪は潜んでいる」
マルクスは目を細めた。
「この街のどこかに、騎士団長がいる」
「そして、他にも腐敗した貴族や商人がいる」
「俺たちの敵は、たくさんいる」
ティグリスが剣の柄を握った。
「なら、全員叩き潰すだけだ」
「その意気だ」
マルクスは立ち上がった。
「さあ、行くぞ」
「王都での戦いを、始める」
馬車は、ゆっくりと王都の門に近づいていく。
門番が立っている。
「止まれ。入都許可証を見せろ」
マルクスは冒険者ギルドの証明書を出した。
「冒険者だ。依頼で来た」
門番が確認する。
「...よし、通れ」
馬車は王都の門をくぐり、石畳の道を進んでいく。
街は活気に満ちていた。
商人たちが品物を売り、人々が行き交う。
だが、マルクスの目は冷静だった。
「この華やかさの裏に、腐敗が隠れている」
呟くように言った。
馬車は目立たない宿屋の前で止まった。
「ここでいいか」
マルクスが御者に金を払う。
宿の看板には「静月の宿」と書かれている。
中に入ると、年老いた女主人が出迎えた。
「いらっしゃい。部屋をお探しかい?」
「ああ。四部屋頼む」
「四部屋? 随分と大人数だねえ」
「仲間と来た。しばらく滞在する」
女主人は部屋の鍵を渡した。
「二階だよ。騒がないでおくれよ」
「もちろんだ」
部屋に荷物を置くと、マルクスは全員を集めた。
「これから、各自の任務を開始する」
「ただし、目立つな。騎士団に気づかれたら終わりだ」
カミラが髪を直しながら言った。
「心配しないで。私は目立たずに情報を集めるのが得意よ」
「ルーナもな。影に溶け込むのは朝飯前だ」
ルーナが短剣を弄びながら答えた。
「ギムリは?」
「俺は鍛冶屋を回る。武器屋なら、情報も集まるだろ」
ギムリが親指を立てた。
「ティグリスは冒険者ギルドで、騎士団の評判を調べろ」
「了解だ」
「アリアは魔法店を回って、魔道具の情報を集めてくれ」
「はい、承知しました」
「セリアは教会に行ってくれ。騎士団と教会の関係を探ってほしい」
「わかりましたわ」
マルクスは窓の外を見た。
夕暮れが近い。
「日没後、それぞれ動き出せ」
「夜の方が、情報は集めやすい」
全員が準備を始める。
武器を確認し、変装を整え、地図を見る。
マルクス自身も、剣を腰に差した。
「俺は、騎士団長の屋敷の場所を確認してくる」
「遠くから観察するだけだ」
ティグリスが心配そうに言った。
「一人で大丈夫か?」
「ああ。前世で学んだ。敵を知ることが、勝利の第一歩だ」
夜が訪れる。
七人は、それぞれの任務に向かって、静かに宿を出た。
王都での戦いが、今、本格的に始まった。
夜の王都は、昼とは違う顔を見せていた。
明かりが灯り、酒場からは笑い声が聞こえる。
だが、路地裏には闇が潜んでいる。
マルクスは黒いフードを深く被り、騎士団長の屋敷へ向かった。
石畳の道を慎重に歩く。
前世のサラリーマン時代、深夜まで残業した後の帰り道を思い出す。
「あの頃も、こうやって夜道を歩いたな...」
やがて、高級住宅街に入った。
大きな屋敷が立ち並ぶ。
そして、ひときわ大きな屋敷が見えた。
「あれが、騎士団長サー・ヴィンセントの屋敷か」
三階建て。石造りの壁。正門には二人の衛兵。
マルクスは遠くから観察する。
「警備は...見える範囲で四人」
「窓にも人影がある。内部にも警備がいるな」
「正面突破は不可能だ」
マルクスは屋敷の周囲を回った。
裏口、使用人の出入り口、庭への抜け道。
全てを記憶する。
「前世の記憶力が役立つ」
会社で何百ページもの資料を覚えさせられた経験が、今になって活きる。
その時、屋敷の門が開いた。
馬車が出てくる。
中には、豪華な服を着た男。
「あれが...騎士団長か」
中年の男。立派な髭。傲慢な表情。
護衛が四人、馬車を囲んでいる。
マルクスは物陰に隠れて観察した。
馬車は街の中心部へ向かっていく。
「夜に出かける...どこへ行くんだ?」
マルクスは後をつけることにした。
人混みに紛れて、一定の距離を保つ。
前世で学んだ尾行の技術。探偵小説で読んだ知識。
馬車は、ある建物の前で止まった。
豪華な装飾。明るい照明。
看板には「夜想曲」と書かれている。
「高級娼館か...」
騎士団長が中に入っていく。
護衛は外で待機。
マルクスは近くの路地に身を隠した。
「腐敗した権力者の典型だな」
「昼は正義を語り、夜は快楽に溺れる」
しばらく待つ。
一時間後、騎士団長が出てきた。
機嫌が良さそうだ。
「毎晩、ここに来ているのか?」
「ならば、行動パターンが読める」
マルクスは記憶に刻んだ。
時間、場所、護衛の数。
全てがデータになる。
騎士団長の馬車が去った後、マルクスは娼館に近づいた。
入口で、華やかな服を着た女性が客引きをしている。
「いらっしゃい。楽しい夜をお過ごしになりませんか?」
「いや、情報が欲しい」
マルクスは銀貨を数枚取り出した。
「さっき出て行った男について教えてくれ」
女性の目が輝いた。
「あら、お金を出してくれるなら...」
「あの方は毎晩いらっしゃるのよ。騎士団長様」
「それで、何をしているんだ?」
「それは...お客様の秘密ですから」
マルクスはさらに銀貨を追加した。
「これで、どうだ?」
女性は周囲を確認してから、小声で言った。
「酒を飲んで、女をはべらせて...それから、商人と密談しているわ」
「商人?」
「ええ。悪徳商人で有名な、ダリウスって男」
マルクスは頷いた。
「ありがとう。助かった」
マルクスは宿に戻ると、すぐに自室に籠もった。
机の上には、羊皮紙と羽ペンが置いてある。
「情報を整理しないと...」
羽ペンでメモを取ろうとしたが、すぐに手を止めた。
「待てよ...羊皮紙は高い。羽ペンはインクが垂れる」
「前世では、メモ帳と鉛筆があった」
「あの便利さが、この世界にはない」
マルクスは考え込んだ。
前世での会議。いつもメモ帳に書き込んでいた。
素早く、消しやすく、持ち運びやすい。
「ならば...作ればいい」
マルクスは魔法理論を思い出す。
アリアから学んだ、魔法の本質。
「魔法は、イメージを現実にする技術だ」
「物質を創造する魔法も、理論上は可能なはず」
手を前に出す。
目を閉じて、イメージする。
前世で使っていたメモ帳。
A5サイズ。紙は薄く、何十ページもある。
表紙は厚紙。リング綴じ。
「紙の成分は...セルロース。植物繊維だ」
「この世界にも、木や草はある」
「ならば、魔力で繊維を圧縮して、紙を作れる」
魔力を集中させる。
イメージを固める。
「クリエイト...ノートブック」
手のひらに、光が集まる。
そして、形になっていく。
パッ。
手の中に、小さなノートが現れた。
「成功したか!?」
マルクスは驚いて、ノートを開いてみる。
紙は薄く、白い。
ページ数は30ページほど。
「すごい...本当に作れた」
だが、次の問題。
「筆記具がない」
羊ペンは不便だ。
前世では、鉛筆やシャープペンシルを使っていた。
「鉛筆は...黒鉛と粘土を混ぜて作る」
「黒鉛は炭素。木を燃やせば炭になる」
「それを細く固めて、木で包めば...」
再び魔力を集中させる。
イメージする。
六角形の鉛筆。
芯は黒鉛。
書きやすく、消しやすい。
「クリエイト...ペンシル」
光が収束する。
そして、手の中に鉛筆が現れた。
「これは...!」
マルクスは早速、ノートに書いてみる。
スラスラと文字が書ける。
前世と同じ感覚。
「完璧だ」
興奮が抑えられない。
マルクスはすぐに情報を書き始めた。




