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悪い奴を成敗する話  作者: 慈架太子


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24/24

3-7

三ヶ月後。

冬が訪れた。

王都は、雪に覆われていた。

マルクスは、アリシアの隣で眠っていた。

その時。

「マルクス様...!」

アリシアが、マルクスを揺すった。

「陣痛が...!」

マルクスは、飛び起きた。

「何!?」

「今!?」

「はい...痛い...!」

アリシアが、お腹を押さえている。

マルクスは、慌てて医者を呼んだ。

「誰か! 医者を! 急いで!」

執事が駆けつける。

「すぐに!」

数分後。

医者と助産師が到着した。

「王女様を、分娩室へ!」

アリシアが、分娩室に運ばれる。

マルクスは、外で待つしかなかった。

「頼む...無事でいてくれ...」

祈るように、手を組む。

数時間後。

ティグリスたちも駆けつけた。

「マルクス!」

「大丈夫か!?」

「まだ...生まれてない...」

マルクスは、不安そうだ。

「アリシアが...心配だ...」

ギムリが肩を叩いた。

「大丈夫だ」

「王女様は、強い」

ルーナも微笑む。

「きっと、無事よ」

セリアが祈っている。

「神よ、お守りください」

さらに数時間。

ついに。

赤ちゃんの泣き声が聞こえた。

「オギャー! オギャー!」

マルクスは、立ち上がった。

「今の...!」

扉が開いた。

助産師が現れた。

「おめでとうございます」

「元気な男の子です」

マルクスの目から、涙が溢れた。

「本当か...!」

「はい、母子ともに健康です」

マルクスは、分娩室に飛び込んだ。

アリシアが、ベッドに横たわっていた。

疲れた顔。

だが、幸せそうな笑顔。

腕の中に、小さな赤ちゃん。

「マルクス様...」

アリシアが微笑む。

「私たちの子供です」

マルクスは、赤ちゃんを見た。

小さな顔。

閉じた目。

小さな手。

「俺の...子供...」

マルクスは、涙が止まらなかった。

「前世では...こんな日が来るなんて...」

「思わなかった...」

アリシアが、赤ちゃんをマルクスに渡した。

「抱いてください」

マルクスは、そっと抱き上げた。

温かい。

柔らかい。

命の重み。

「重い...命って、こんなに重いのか...」

赤ちゃんが、目を開けた。

マルクスを見上げる。

「ああ...」

マルクスは、赤ちゃんに語りかけた。

「俺が、お前の父親だ」

「これから、お前を守る」

「どんな危険からも」

「必ず、守る」

赤ちゃんが、小さく笑ったような気がした。

アリシアが聞いた。

「名前は、どうしますか?」

マルクスは、少し考えた。

「エドワード」

「父さんの名前と同じだ」

「エドワード・フォン・グレイウルフ」

アリシアは微笑んだ。

「素敵な名前です」


数日後。

王宮で、エドワードのお披露目が行われた。

大広間には、貴族たちが集まっている。

王エドワード三世が、玉座に座っている。

「本日は」

王が声を上げた。

「我が孫、エドワードの誕生を祝うために」

「皆を集めた」

拍手が、広間を包む。

マルクスは、アリシアと共に前に出た。

アリシアが、赤ちゃんを抱いている。

「これが、我が孫」

王が微笑む。

「エドワード・フォン・グレイウルフ」

「王家の血を引く者だ」

貴族たちが、次々と祝福に訪れる。

「おめでとうございます、侯爵様」

「可愛いお子様ですね」

マルクスは、一人ずつ丁寧に対応した。

「ありがとうございます」

祝宴が始まった。

音楽、食事、踊り。

だが、マルクスは早めに退出した。

「アリシアと、エドワードを休ませないと」

屋敷に戻ると、仲間たちが待っていた。

「マルクス!」

ティグリスが笑顔で迎えた。

「赤ちゃん、見せてくれよ」

アリシアが、エドワードを見せた。

「可愛い...」

ルーナが目を細める。

「本当に、小さいのね」

ギムリが指を差し出した。

エドワードが、その指を掴む。

「おお! 握力あるな!」

「将来、戦士になるぞ、これは」

カミラが微笑む。

「それとも、魔法使いかしら」

アリアが魔法書を閉じた。

「どちらでも、私たちが教えます」

セリアが祈っている。

「神の祝福がありますように」

マルクスは、仲間たちを見た。

「この子の、叔父さん叔母さんだ」

「よろしく頼む」

ティグリスが胸を叩いた。

「任せろ」

「俺たちが、守る」

全員が頷いた。

「当然だ」

その夜。

マルクスは、エドワードを抱いて窓の外を見ていた。

星空が、広がっている。

「エドワード」

マルクスは、息子に語りかけた。

「お前が大きくなる頃には」

「もっと平和な世界になっている」

「俺が、そうする」

「戦争も、悪も、理不尽も」

「全部、なくす」

「お前が、安心して育てる世界を」

「作る」

エドワードが、小さく笑った。

マルクスは微笑んだ。

「前世では、何も残せなかった」

「ただ、働いて、死んだ」

「でも、この世界では違う」

「家族がいる」

「子供がいる」

「未来がある」

マルクスは、星を見上げた。

「これが、俺の新しい人生だ」

「転生して、良かった」

「本当に、良かった」

アリシアが、後ろから抱きついた。

「何を考えているんですか?」

「幸せだなって」

マルクスは答えた。

「お前と、エドワードと」

「仲間たちと」

「この世界で生きられて」

「幸せだ」

アリシアは微笑んだ。

「私も、幸せです」



一年後。

エドワードは、元気に育っていた。

歩き始め、言葉を話し始めた。

「パパ」

「ママ」

マルクスとアリシアは、毎日が幸せだった。

だが、マルクスは冒険者でもある。

ある日。

ティグリスから、テレパシーが届いた。

(マルクス、久しぶりだな)

(ああ、どうした?)

(ギルドから、依頼が来た)

(お前にも、来てほしい)

マルクスは少し考えた。

エドワードは、まだ一歳。

だが、もう安定している。

(わかった。行く)

マルクスは、アリシアに話した。

「少し、出かけてくる」

「依頼ですか?」

「ああ」

マルクスは頷いた。

「でも、危険なものじゃない」

「すぐに帰ってくる」

アリシアは微笑んだ。

「わかりました」

「エドワードと、待っています」

マルクスは、エドワードを抱き上げた。

「パパ、行ってくるぞ」

「パパ」

エドワードが笑う。

マルクスは、冒険者ギルドに向かった。

六人が、既に待っていた。

「よう、マルクス」

ティグリスが笑った。

「父親の顔してるな」

ギムリも笑っている。

「幸せそうだな」

マルクスは微笑んだ。

「ああ、幸せだ」

「で、依頼は?」

ルーナが依頼書を見せた。

「東の街で、魔物が出現している」

「調査と討伐」

「報酬は、金貨300枚」

カミラが続けた。

「危険度は低い」

「Bランク程度ね」

アリアも頷く。

「私たちなら、余裕です」

セリアが祈っている。

「神の加護がありますように」

マルクスは頷いた。

「では、行こう」

「久しぶりの冒険だ」

七人は、ギルドを出た。

街道を歩く。

「懐かしいな」

ティグリスが呟く。

「こうやって、七人で歩くの」

ギムリも頷く。

「ああ、一年ぶりだ」

ルーナが微笑む。

「でも、まだまだ現役よ」

「私たち、灰色の刃だもの」

カミラも笑った。

「伝説の冒険者集団ね」

アリアが魔法書を開いた。

「レベル77ですからね」

「魔物くらい、余裕です」

セリアが続けた。

「神も、見守ってくださいます」

マルクスは、仲間たちを見た。

「お前たちと冒険できて」

「本当に、良かった」

ティグリスが肩を叩いた。

「何を今更」

「俺たちは、永遠の仲間だ」

全員が頷いた。

「ああ!」

七人は、東の街に向かって歩いた。

新しい冒険が、始まる。

灰色の刃は、まだまだ続く。

父親になっても。

家族ができても。

彼らは、冒険者だ。

民を守り、悪を倒す。

それが、使命だ。

朝日が、七人を照らしている。



十年後。

王都は、さらに発展していた。

街は広がり、人々は豊かになっていた。

マルクスは、執務室で書類を見ていた。

北部の領地からの報告。

順調に発展している。

「良い傾向だ」

その時、扉が開いた。

少年が飛び込んでくる。

「父さん!」

エドワード。

十一歳になった息子。

父親譲りの黒髪。

母親譲りの優しい目。

「どうした?」

「冒険者ギルドに行きたい!」

「俺も、冒険者になりたいんだ!」

マルクスは微笑んだ。

「まだ早い」

「もう少し、訓練してからだ」

「でも!」

エドワードが抗議する。

「父さんは、俺と同じ年で」

「もう冒険してたって!」

「ああ、してた」

マルクスは頷いた。

「でも、危険だった」

「何度も、死にかけた」

「お前には、そんな思いをさせたくない」

エドワードは、不満そうだ。

「でも、俺も強くなりたい」

「父さんみたいに」

マルクスは、息子の頭を撫でた。

「わかった」

「では、ティグリスおじさんに頼もう」

「剣の訓練をしてもらえ」

エドワードの顔が、明るくなった。

「本当!?」

「ああ」

「やった!」

エドワードが飛び跳ねる。

その時、アリシアが入ってきた。

「あら、エドワード」

「また、冒険者の話?」

「うん!」

エドワードが笑う。

「父さんが、訓練させてくれるって!」

アリシアは、マルクスを見た。

少し心配そうだ。

マルクスは微笑んだ。

「大丈夫だ」

「俺たちが、ちゃんと見守る」

アリシアは頷いた。

「わかりました」

「でも、無理はさせないでくださいね」

夕方。

マルクスは、バルコニーに立っていた。

王都の夕景。

平和な街並み。

「十年か...」

マルクスは呟いた。

「あれから、十年」

「魔王を倒してから」

あの後、大きな戦いはなかった。

小さな魔物退治。

盗賊の捕縛。

護衛任務。

平和な依頼ばかり。

「平和だな」

マルクスは微笑んだ。

「俺たちが守った平和だ」

ティグリスが現れた。

「よう、マルクス」

「エドワードから聞いたぜ」

「剣の訓練、頼まれた」

「ああ、頼む」

「任せろ」

ティグリスが笑った。

「お前の息子だ」

「きっと、強くなる」

二人は、夕日を見た。

「なあ、マルクス」

「俺たち、いい人生だったよな」

「ああ」

マルクスは頷いた。

「前世では、考えられなかった」

「仲間、家族、冒険」

「全てを手に入れた」

「転生して、本当に良かった」

ティグリスが肩を叩いた。

「これからも、続くぜ」

「俺たちの物語は」

「ああ」

マルクスは微笑んだ。

「灰色の刃は、永遠だ」


(完)

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