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悪い奴を成敗する話  作者: 慈架太子


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22/24

3-5

「やった...!」

ティグリスが叫んだ。

「倒したぞ!」

全員が、安堵の息を吐いた。

その瞬間、全員に光が注いだ。

キィン!

『レベルアップ!』

『マルクス レベル71 → レベル72』

『ティグリス レベル68 → レベル69』

『ギムリ レベル65 → レベル66』

『ルーナ レベル62 → レベル63』

『アリア レベル69 → レベル70』

『セリア レベル66 → レベル67』

『カミラ レベル60 → レベル61』

(また上がったな)

ティグリスの声。

(古代の守護者は、強敵だったからね)

アリアが呟く。

キィン!

『パーティー平均レベル: 66.9』

マルクスは、砕けた水晶の破片を拾った。

「これは...凄い魔力だ」

まだ、微かに光っている。

フェリックスが駆け寄ってきた。

「皆さん、大丈夫ですか!?」

「ええ、何とか」

マルクスは頷いた。

「先生、この水晶は?」

「魔力水晶です」

フェリックスが説明した。

「古代文明の技術の結晶」

「膨大な魔力を蓄えることができます」

「これがあれば」

「何百年でも、魔法装置を動かせます」

マルクスは、破片を見つめた。

「凄い技術だな」

「現代では、作れないんですか?」

「はい」

フェリックスは首を振った。

「製法が、失われています」

「古代の技術は」

「我々の想像を超えています」

ギムリが奥の部屋を指差した。

「おい、あそこに何かあるぞ」

全員が、奥の部屋に入った。

石の台座。

その上に、古い本。

「これは...!」

フェリックスが感動で震えている。

「古代の魔法書です!」

「失われた魔法の記録!」

アリアが本を開いた。

古代文字で、びっしりと書かれている。

「読めますか?」

「少しなら...」

アリアは、ゆっくりと読み始めた。

「これは...転移魔法の応用...」

「時空を超える魔法...?」

マルクスが驚いた。

「時空を超える?」

「タイムトラベル?」

「そのようです」

アリアは続けた。

「ただし、理論だけで」

「実際に成功したかは、不明です」

フェリックスが興奮している。

「これは、大発見です!」

「この魔法書を持ち帰れば」

「古代魔法の研究が、飛躍的に進みます!」

マルクスは頷いた。

「持って帰りましょう」



遺跡を出ると、夕日が森を照らしていた。

「今日は、大収穫でした!」

フェリックスが嬉しそうだ。

「魔法書に、水晶の破片」

「そして、遺跡の地図!」

「これで、論文が書けます!」

マルクスは微笑んだ。

「お役に立てて、良かったです」

「いえいえ!」

フェリックスは深々と頭を下げた。

「あなた方のおかげです!」

「守護者が現れた時は」

「死ぬかと思いました!」

ティグリスが笑った。

「まあ、俺たちに任せておけば安心だ」

八人は、王都への帰路についた。

夜になる前に、王都に到着した。

「では、ギルドに報告しましょう」

マルクスが言った。

冒険者ギルド。

フェリックスが、受付で報告する。

「任務、完了しました!」

「『灰色の刃』の皆さんのおかげで」

「無事に、調査を終えました!」

受付嬢が微笑んだ。

「それは良かったです」

「報酬の金貨200枚です」

マルクスは受け取った。

一人当たり、28枚と銀貨57枚。

「それと」

フェリックスが言った。

「私からも、お礼をしたいのですが」

老学者は、小さな袋を差し出した。

「この水晶の破片を、どうぞ」

「私が持っているより」

「あなた方が持っている方が」

「きっと、役立つはずです」

マルクスは受け取った。

青く光る破片。

まだ、魔力を感じる。

「ありがとうございます」

「大切に使います」

フェリックスは微笑んだ。

「いえ、こちらこそ」

「また機会があれば」

「よろしくお願いします」

ギルドを出ると、ティグリスが伸びをした。

「今日も、いい仕事だったな」

ギムリも頷く。

「ああ、平和な依頼だったし」

「マルクスも、無事だった」

ルーナが微笑む。

「アリシアさんも、安心するわね」

マルクスは、水晶の破片を見つめた。

「古代の魔法か...」

「時空を超える魔法...」

カミラが聞いた。

「興味あるの?」

「ああ」

マルクスは頷いた。

「もし、時間を遡れたら」

「前世に戻れるかもしれない」

「戻りたいの?」

アリアが心配そうに聞く。

「いや」

マルクスは首を振った。

「戻りたくはない」

「この世界の方が、遥かにいい」

「ただ、少し思っただけだ」

マルクスは微笑んだ。

「前世の俺に、言ってやりたい」

「諦めるな、って」

「いつか、幸せになれるって」

セリアが祈るように手を組んだ。

「神は、あなたを導いてくださいました」

「この世界へ」

マルクスは空を見上げた。

「ああ、そうだな」

「この世界に来れて」

「本当に、良かった」



屋敷に戻ると、アリシアが玄関で待っていた。

「お帰りなさい」

「ただいま」

マルクスは、アリシアを抱きしめた。

「無事で、良かった」

アリシアが微笑む。

「今日は、どうでしたか?」

マルクスは、遺跡調査の話をした。

古代の守護者。

魔法書の発見。

水晶の破片。

「素晴らしい冒険でしたね」

アリシアが嬉しそうだ。

「でも、危険はなかったんですか?」

「少しはあった」

マルクスは正直に答えた。

「でも、仲間がいたから」

「無事に帰ってこれた」

二人は、食堂で夕食を取った。

「あ、そうだ」

マルクスは水晶の破片を見せた。

「これ、古代の魔力水晶なんだ」

「綺麗ですね」

アリシアが破片を見つめる。

「青く光って」

「でも、これが何の役に立つんですか?」

「まだ、わからない」

マルクスは答えた。

「でも、いつか役立つ時が来る」

「そんな気がする」

食後、二人はバルコニーに出た。

星空が、広がっている。

「綺麗な星ですね」

アリシアが呟く。

マルクスは、アリシアのお腹に手を当てた。

「赤ちゃん、元気かな」

「ええ」

アリシアは微笑んだ。

「まだ小さいですけど」

「確かに、いますよ」

マルクスの目に、涙が浮かんだ。

「俺、父親になるんだな」

「ええ」

「どんな子になるんだろう」

「あなたに似て」

アリシアが言った。

「強くて、優しい子になりますよ」

「それとも、私に似て」

「おっとりした子かもしれません」

マルクスは笑った。

「どっちでもいい」

「元気に生まれてくれれば」

二人は、しばらく星を見ていた。

穏やかな時間。

幸せな時間。

「マルクス様」

アリシアが小さな声で言った。

「はい」

「もう少し、冒険を控えませんか?」

「心配なんです」

マルクスは、アリシアの手を握った。

「わかった」

「当分は、安全な依頼だけにする」

「それに」

マルクスは微笑んだ。

「赤ちゃんが生まれたら」

「しばらく休暇を取ろう」

「家族との時間を、大切にする」

アリシアは涙を流していた。

「ありがとうございます」

「あなたは、本当に優しい」

二人は、抱き合った。

星空の下、静かな夜。

灰色の刃の団長は。

今は、一人の夫であり。

もうすぐ、父親になる。



翌朝。

マルクスは、執務室で仲間たちを集めた。

「少し、話がある」

六人が座る。

「どうした?」

ティグリスが聞く。

マルクスは深呼吸した。

「当分、危険な依頼は控えようと思う」

「アリシアが妊娠しているし」

「父親としての責任がある」

全員が頷いた。

「当然だ」

ギムリが言った。

「お前には、家族がいる」

「守るべき人たちがいる」

ルーナも微笑んだ。

「私たちも、賛成よ」

「無理はしないで」

カミラが続けた。

「それに、私たちも少し休みたいわ」

「ここ五ヶ月、ずっと戦い続けてたし」

アリアも頷く。

「はい、たまには休息も必要です」

セリアが祈っている。

「神も、休息を勧めておられます」

マルクスは、仲間たちを見渡した。

「ありがとう」

「お前たちがいてくれて」

「本当に、助かる」

ティグリスが笑った。

「何を言ってるんだ」

「俺たちは、家族だろ」

「ああ」

マルクスは微笑んだ。

「家族だ」

「では、これから一ヶ月」

「安全な依頼だけにしよう」

「護衛、調査、配達」

「戦闘の少ないものだけ」

全員が頷いた。

「了解!」

一ヶ月後。

灰色の刃は、穏やかな日々を送っていた。

商人の護衛。

学者の調査補助。

貴族への配達。

どれも、戦闘のない平和な依頼。

「こういう生活も、悪くないな」

ティグリスが呟く。

七人は、王都の酒場で昼食を取っていた。

「ああ」

ギムリも頷く。

「毎日戦うのも、疲れるしな」

ルーナがワインを飲んでいる。

「でも、少し物足りないわね」

「たまには、強敵と戦いたいわ」

カミラが笑った。

「あら、戦闘狂ね」

アリアが魔法書を読んでいる。

「私は、この時間が好きです」

「勉強できますし」

セリアが祈っている。

「平和が、一番です」

マルクスは、窓の外を見ていた。

王都の街並み。

人々が、笑顔で歩いている。

「平和だな」

マルクスは呟いた。

「俺たちが守った平和だ」

「宰相派を倒し」

「闇の教団を壊滅させ」

「盗賊団を捕らえた」

「だから、この平和がある」

ティグリスが肩を叩いた。

「そうだな」

「俺たちの功績だ」

その時、酒場の扉が開いた。

王宮の使者が入ってくる。

「マルクス公爵!」

「お探ししました!」

マルクスは立ち上がった。

「何かあったのか?」

「王が、お呼びです!」

「緊急の用件です!」

マルクスの表情が、引き締まった。

「わかった」

「すぐに行く」

マルクスは仲間たちを見た。

「行こう」

全員が頷いた。

「ああ」

七人は、王宮に向かった。

平和な日々は、終わりを告げた。



王宮。

謁見の間。

王エドワード三世が、深刻な表情で座っていた。

「よく来てくれた、マルクス公爵」

マルクスは膝をつく。

「何があったのですか?」

王は、地図を広げた。

「北部の国境で、異変が起きている」

「隣国ノーザランドが」

「軍を集結させている」

マルクスの目が、鋭くなった。

「戦争の準備ですか?」

「おそらく」

王は頷いた。

「スパイの報告によれば」

「ノーザランドは、五万の兵を集めている」

「我が国への侵攻を企てている」

ティグリスが拳を握った。

「五万...!」

「我が国の軍は?」

「三万だ」

王は苦い顔をした。

「数で劣る」

「それに」

王は続けた。

「ノーザランドには」

「『魔王軍団』がいる」

「魔王軍団?」

マルクスが聞く。

「ああ」

王は説明した。

「魔物を操る軍団だ」

「ドラゴン、ワイバーン、トロール」

「数百匹の魔物を従えている」

「それを率いるのが」

「魔王ヴォルデモート」

ギムリが息を呑んだ。

「魔王...!?」

「そんな奴が、実在するのか!?」

「ああ」

王は頷いた。

「百年に一度現れる」

「災厄の化身だ」

「前回の魔王は」

「三つの国を滅ぼした」

マルクスは、冷静に考えた。

「それで、俺たちに何を?」

王は、マルクスの目を見た。

「頼みがある」

「魔王ヴォルデモートを」

「倒してほしい」

謁見の間に、沈黙が流れた。

「魔王を...倒す...?」

ルーナが呟く。

「無茶な依頼ね」

「だが、他に方法がない」

王は立ち上がった。

「通常の軍では、魔王に勝てない」

「魔物の大群に、圧倒される」

「だが、そなたたちなら」

「Sランク冒険者なら」

「勝てるかもしれない」

カミラが聞いた。

「報酬は?」

「金貨一万枚」

王が答えた。

「それと、侯爵位」

「領地も与える」

アリアが驚く。

「一万枚...!」

セリアも目を見開いている。

「そんな大金...」

マルクスは、少し考えた。

アリシアの顔が浮かんだ。

妊娠している妻。

お腹の中の子供。

危険な任務だ。

死ぬかもしれない。

だが。

「わかりました」

マルクスは頭を下げた。

「引き受けます」

全員が、マルクスを見た。

「マルクス...」

ティグリスが呟く。

「いいのか?」

「ああ」

マルクスは頷いた。

「この国を守るのが」

「俺たちの使命だ」

「それに」

マルクスは仲間たちを見た。

「お前たちがいれば」

「勝てる」



王は、安堵の表情を浮かべた。

「感謝する」

「そなたたちこそ」

「真の英雄だ」

マルクスは立ち上がった。

「魔王の居場所は?」

「北部の国境」

王は地図を指差した。

「ノーザランドの軍の中心に」

「黒い城塞がある」

「そこに、魔王がいる」

ギムリが聞いた。

「いつまでに?」

「一週間後」

王は答えた。

「それまでに、魔王を倒さねば」

「戦争が始まる」

「五万の軍が、国境を越える」

マルクスは頷いた。

「わかりました」

「一週間以内に、倒します」

七人は、王宮を後にした。

外では、雲が空を覆っていた。

「魔王か...」

ティグリスが呟く。

「今までで、最強の敵だな」

「ああ」

マルクスは頷いた。

「でも、やるしかない」

ルーナが不安そうだ。

「本当に、勝てるのかしら」

「勝つさ」

ギムリが拳を鳴らした。

「俺たちは、今まで負けたことがない」

カミラも頷く。

「そうね」

「宰相も、闇の教団も、ドラゴンも」

「全部倒してきた」

「魔王だって、同じよ」

アリアが魔法書を握りしめる。

「私も、全力で戦います」

セリアが祈っている。

「神が、守ってくださいます」

マルクスは、屋敷に向かった。

「まず、アリシアに話さないと」

屋敷に着くと、アリシアが待っていた。

「お帰りなさい」

「ただいま」

マルクスは、アリシアを抱きしめた。

「話がある」

二人は、執務室に入った。

マルクスは、魔王討伐の任務を説明した。

アリシアの顔が、青ざめた。

「魔王...ですか...」

「ああ」

マルクスは頷いた。

「危険な任務だ」

「でも、やらなければならない」

「この国を、守るために」

アリシアは、涙を流した。

「でも...あなたが死んだら...」

「私は...赤ちゃんは...」

マルクスは、アリシアの頬を拭った。

「大丈夫だ」

「必ず、帰ってくる」

「約束する」

「でも...」

「信じてくれ」

マルクスは、アリシアの目を見た。

「俺は、今まで」

「どんな敵も倒してきた」

「魔王だって、同じだ」

「お前と、子供のために」

「必ず、生きて帰ってくる」

アリシアは、マルクスに抱きついた。

「約束...ですよ...」

「必ず...帰ってきてください...」

「ああ、約束だ」

二人は、長く抱き合っていた。



翌日。

マルクスは、仲間たちと作戦会議を開いた。

「一週間で、魔王を倒す」

地図を広げる。

「北部国境まで、徒歩で三日」

「テレポートなら、一瞬だが」

「敵地の構造がわからない」

「まずは、偵察が必要だ」

ティグリスが聞いた。

「どうやって近づく?」

「テレポートで、国境付近まで」

マルクスは答えた。

「そこから、俺が単独で偵察」

「魔王の城塞を確認する」

「その後、全員で突入」

ギムリが拳を鳴らした。

「いつものパターンだな」

「お前が先に行って」

「俺たちが続く」

ルーナが心配そうだ。

「でも、魔王相手に」

「一人で大丈夫なの?」

「見つかったら、すぐテレポートで逃げる」

マルクスは答えた。

「偵察だけだ」

「戦闘は、全員揃ってからだ」

カミラが資料を見ている。

「魔王ヴォルデモート」

「過去の記録によると」

「炎、雷、闇の魔法を使う」

「それに、魔物を操る能力」

アリアも魔法書を確認している。

「対策は...」

「氷と光の魔法が有効らしいです」

セリアが祈っている。

「神の光が、闇を払います」

マルクスは頷いた。

「では、明日出発する」

「今日は、準備と休息だ」

「装備を整え、魔力を回復させる」

全員が頷いた。

「了解!」

その夜。

マルクスは、アリシアと最後の夜を過ごした。

「明日、出発します」

「はい...」

アリシアは、不安そうだ。

「怖いです」

「あなたが、帰ってこないんじゃないかって」

マルクスは、アリシアを抱きしめた。

「大丈夫だ」

「俺は、強い」

「それに、仲間がいる」

「どんな敵でも、倒せる」

「でも、魔王ですよ...」

「ああ、魔王だ」

マルクスは微笑んだ。

「でも、俺は転生者だ」

「前世の知識がある」

「魔法がある」

「最強の仲間がいる」

「何より」

マルクスは、アリシアのお腹に手を当てた。

「お前と、子供がいる」

「守るべき家族がいる」

「だから、負けない」

「絶対に、生きて帰る」

アリシアは涙を流した。

「信じています」

「あなたを」

二人は、口づけを交わした。

長い、長い口づけ。

「愛してる」

マルクスが呟く。

「私も...愛しています」

アリシアが答える。

その夜、二人は深く愛し合った。

明日から始まる、危険な戦いの前に。

最後の、穏やかな時間を。


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