2-11
宿に戻ると、全員が疲れた様子で椅子に座った。
「やっと...終わったな」
ギムリが大きく息を吐いた。
「三ヶ月間、休む暇もなかったわね」
カミラが紅茶を飲む。
「でも、やり遂げましたね」
アリアが微笑んだ。
マルクスは窓の外を見ていた。
「三ヶ月前、俺は底辺のD級冒険者だった」
「前世の記憶を取り戻して」
「この世界で、何をすべきか考えた」
「そして、仲間と出会った」
マルクスは全員を見渡した。
「お前たちがいなければ、ここまで来れなかった」
ティグリスが笑った。
「何を言ってるんだ」
「お前がいなければ、俺たちもここにいない」
ギムリが頷く。
「そうだぜ。お前が俺たちを導いたんだ」
ルーナも微笑んだ。
「マルクスがいたから、私たちは変われた」
カミラが言う。
「底辺から、貴族まで」
「こんな出世、普通じゃありえないわ」
セリアが祈るように手を組んだ。
「全て、神のご加護です」
アリアは感動で涙ぐんでいた。
「私...魔法学院を追い出されそうだったのに」
「今では、男爵...」
マルクスは全員に向かって、深々と頭を下げた。
「本当に、ありがとう」
「お前たちは、俺の宝だ」
全員が、マルクスを見つめた。
そして、一斉に立ち上がった。
ティグリスが手を差し出した。
「俺たちは、仲間だ」
ギムリも手を重ねる。
「永遠にな」
ルーナ、カミラ、アリア、セリアも。
全員の手が、重なり合う。
「灰色の刃」
マルクスが言った。
「これからも、一緒に戦おう」
「この世界の理不尽を、全て倒そう」
(了解!)
全員の声が、テレパシーで響く。
数日後。
王宮で、盛大な授爵式が行われた。
大広間には、貴族たちが集まっている。
王エドワード三世が、玉座に座っている。
「マルクス・フォン・グレイウルフ」
マルクスが前に出る。
「そなたの功績を讃え」
「伯爵位を授ける」
王が、勲章を授ける。
「そして、そなたの仲間たちも」
ティグリス、ギムリ、ルーナ、カミラ、アリア、セリア。
全員が前に出る。
「男爵位を授ける」
王が、一人ずつに勲章を授ける。
貴族たちが、拍手する。
「彼らが、『灰色の刃』か...」
「たった7人で、宰相派を壊滅させたという...」
「信じられない...」
ざわめきが広がる。
式が終わると、祝宴が始まった。
豪華な料理。
音楽。
踊り。
マルクスは、バルコニーに出ていた。
王都の夜景を見つめている。
「綺麗ですね」
振り返ると、王女アリシアが立っていた。
「王女殿下」
「アリシアで構いません」
彼女は微笑んだ。
「マルクス様...いえ、マルクス伯爵」
「あなたは、私の命の恩人です」
「それに、この国の救世主です」
マルクスは首を振った。
「俺は、ただ正しいことをしただけです」
アリシアは、マルクスの隣に立った。
「あなたは、特別な方です」
「他の世界から来た...」
マルクスは驚いた。
「知っているんですか?」
「ええ」
アリシアは頷いた。
「父上から聞きました」
「あなたが、前世の記憶を持つ転生者だと」
「そして、その知識を使って」
「この世界を変えようとしていると」
マルクスは夜空を見上げた。
「前世では、俺は何もできませんでした」
「会社の不正を見ても、何も言えなかった」
「上司の理不尽に、ただ耐えるだけだった」
「そして、過労で死んだ」
「でも、この世界では違う」
マルクスの目が、強く光る。
「魔法がある」
「仲間がいる」
「力がある」
「だから、戦える」
「理不尽と、腐敗と、悪と」
「全てと、戦える」
アリシアは微笑んだ。
「あなたは、本当に強い方ですね」
「心が」
マルクスは微笑んだ。
「ありがとうございます」
「それで」
アリシアは真剣な顔になった。
「お願いがあるのですが」
「何でしょう?」
「これからも、この国を守ってください」
「王家直属密偵団として」
「悪を狩り、民を守り」
「この国を、より良い場所にしてください」
マルクスは頷いた。
「もちろんです」
「それが、俺たちの使命ですから」
アリシアは安堵の表情を浮かべた。
「ありがとうございます」
「それと...」
アリシアは少し恥ずかしそうに言った。
「もし、よろしければ」
「私の...護衛騎士になっていただけませんか?」
マルクスは少し驚いた。
「護衛騎士...ですか?」
「はい」
アリシアは頷いた。
「あなたなら、信頼できます」
「それに」
アリシアは顔を赤らめた。
「あなたと、もっと一緒にいたいんです」
マルクスは微笑んだ。
「光栄です」
「喜んで」
アリシアの顔が、パッと明るくなった。
「本当ですか!?」
「ええ」
二人は、しばらく夜景を眺めていた。
静かな時間。
だが、その平和も長くは続かない。
新たな敵が、影で動き始めている。
その頃。
王都の地下、暗い部屋。
黒いローブを纏った男たちが、円を描いて座っていた。
「『灰色の刃』が、宰相派を壊滅させた」
一人が言った。
「予想以上に、強力だ」
別の男が続ける。
「このままでは、我々の計画も危うい」
「ならば」
中央に座る男が、低い声で言った。
「排除する」
「『灰色の刃』を」
「全員、殺す」
男たちが、頷く。
「了解」
「準備を始めろ」
「あの7人を、この世から消す」
暗闇の中、不気味な笑い声が響く。
新たな戦いが、始まろうとしていた。
(第一部・完)
灰色の刃の物語は、これからも続く。
前世の知識と、この世界の魔法。
そして、最強の仲間たち。
マルクスは、理不尽と戦い続ける。
この世界を、少しずつ変えていく。
次なる敵は、誰か。
次なる戦いは、どこで。
全ては、これから明らかになる。
物語は、まだ始まったばかりだ。
数日後。
マルクスは、新しい屋敷に引っ越していた。
伯爵としての領地と、王都の屋敷。
両方が、王から与えられた。
「すげえな...こんな豪華な屋敷に住めるなんて」
ギムリが、広い部屋を見回している。
「俺たちも、それぞれ屋敷をもらったぜ」
ティグリスが笑った。
「男爵だからな」
ルーナが窓から外を見ている。
「庭も広いわね」
「訓練場も作れるわ」
カミラが、豪華な家具を撫でている。
「これ、本物の金細工ね」
「さすが貴族の屋敷」
アリアは、書斎を見て感動していた。
「こんなにたくさんの本...!」
「魔法書もあります!」
セリアは、小さな礼拝堂を見つけた。
「素晴らしい...ここで祈りを捧げられます」
マルクスは、自分の執務室に座っていた。
机の上には、山積みの書類。
領地の管理。
税の徴収。
民衆からの陳情。
「伯爵って、こんなに仕事があるのか...」
前世のサラリーマン時代を思い出す。
書類仕事の山。
「まあ、慣れてるけどな」
マルクスは、一つずつ書類を処理していく。
その時、ノックの音。
「入れ」
執事が入ってくる。
「伯爵様、お客様です」
「誰だ?」
「冒険者ギルドのギルドマスターです」
マルクスは少し驚いた。
「ギルドマスターが?」
「はい。お会いになりますか?」
「ああ、通してくれ」
数分後。
大柄な男が、部屋に入ってきた。
50代。傷だらけの顔。元冒険者だろう。
「初めまして、マルクス伯爵」
男は頭を下げた。
「私は、王都冒険者ギルドのギルドマスター、ガレス・ブロンズハンマーと申します」
「どうぞ、座ってください」
ガレスが椅子に座る。
「本日は、お願いに参りました」
「お願い?」
「はい」
ガレスは真剣な顔で言った。
「最近、王国北部で魔物の大量発生が起きています」
「村が襲われ、多くの死者が出ています」
マルクスの表情が、険しくなる。
「魔物の大量発生...」
「ええ」
ガレスは地図を広げた。
「この辺り一帯です」
地図の北部に、印がつけられている。
「オーク、ゴブリン、ワイバーン」
「通常の数倍が出現しています」
「原因は?」
「不明です」
ガレスは首を振った。
「だが、何かがおかしい」
「まるで、誰かが魔物を操っているような...」
マルクスは考え込んだ。
「誰かが、意図的に?」
「可能性はあります」
「ギルドは、冒険者を派遣していますが」
「数が多すぎて、対応しきれません」
「それで」
ガレスはマルクスを見た。
「『灰色の刃』に、お願いしたいのです」
「北部に行き、魔物の大量発生の原因を調査してください」
「そして、可能なら解決してください」
マルクスは頷いた。
「わかりました」
「引き受けます」
ガレスの顔が、明るくなった。
「本当ですか!?」
「ええ。これも、俺たちの仕事です」
「報酬は?」
「金貨500枚」
「それと、ギルドからの感謝状」
マルクスは立ち上がった。
「十分です」
「いつ出発すればいいですか?」
「できるだけ早く」
ガレスも立ち上がった。
「村々が、危機に瀕しています」
「わかりました」
「明日、出発します」
ガレスは深々と頭を下げた。
「ありがとうございます」
「王国北部の民が、救われます」
ガレスが去った後。
マルクスは仲間たちを集めた。
「新しい任務だ」
全員が、執務室に集まる。
「王国北部で、魔物の大量発生」
「村が襲われている」
「俺たちが、調査と解決に向かう」
ティグリスが拳を鳴らした。
「久しぶりの魔物退治だな」
ギムリも笑った。
「貴族相手より、魔物の方が気楽だぜ」
ルーナが地図を見る。
「北部か...遠いわね」
「馬車で三日かかります」
「なら、テレポートで行く」
全員が驚いた。
「テレポート? そんな遠距離を?」
アリアが聞く。
「ああ」
マルクスは頷いた。
「俺たちは、長距離テレポートの訓練をしてきた」
「100キロ先まで、転移できる」
「北部の街まで、直接飛ぶ」
「すげえな...」
ギムリが感心している。
「では、明朝出発する」
「装備を整えろ」
「魔物との戦闘に備えろ」
全員が頷いた。
(了解!)
その夜。
マルクスは一人、バルコニーに立っていた。
北の空を見つめている。
「魔物の大量発生...」
「誰かが操っている可能性...」
マルクスは、先日の地下組織を思い出した。
黒いローブの男たち。
「まさか...関係があるのか?」
風が吹く。
マルクスのマントが揺れる。
「もし、新たな敵が現れたなら」
「俺たちが、倒す」
「それだけだ」
月が、マルクスを照らしている。
新たな戦いが、始まろうとしていた。
王国北部。
魔物の大量発生。
そして、その裏に潜む、真の敵。
灰色の刃の、次なる戦いが始まる。
翌朝。
マルクスたちは、屋敷の庭に集まっていた。
全員、戦闘装備を整えている。
「全員、準備はいいか?」
マルクスが確認する。
(準備完了)
(OK)
(いつでも行ける)
テレパシーの声が、次々と響く。
「では、北部の街、ノーザンクロスへ転移する」
マルクスは地図を見た。
距離は、約150キロ。
「今までで、最長距離のテレポートだ」
「失敗すれば、空中に転移する可能性もある」
「覚悟はいいか?」
全員が頷いた。
「やるしかねえだろ」
ティグリスが笑った。
マルクスは全員に手を繋がせた。
「全員で、同時に転移する」
「俺の魔力に、同調しろ」
マルクスは目を閉じた。
魔力を集中させる。
ノーザンクロスの街。
冒険者ギルドの前。
そこを、イメージする。
空間という紐。
この庭と、あの街を結ぶ。
150キロの距離。
「持ち上げて、折り曲げる」
マルクスの全身から、膨大な魔力が放出される。
「テレポート!」
視界が、激しく歪む。
体が、引き裂かれるような感覚。
そして。
次の瞬間。
七人は、雪に覆われた街に立っていた。
「成功したか...」
マルクスは膝をついた。
魔力の消費が激しい。
「大丈夫ですか!?」
アリアが駆け寄る。
セリアが回復魔法をかける。
「ヒール」
温かい光が、マルクスを包む。
「ありがとう...もう大丈夫だ」
マルクスは立ち上がった。
周囲を見回す。
石造りの建物。
雪が積もっている。
人々が、厚いコートを着ている。
「ここが、ノーザンクロスか」
目の前に、冒険者ギルドの建物がある。
「予定通りだ」
ティグリスが感心している。
「すげえな...一瞬で150キロも移動した」
ギムリも驚いている。
「魔法ってのは、本当に便利だな」
「では、ギルドに行こう」
七人は、ギルドの扉を開けた。
ノーザンクロス冒険者ギルド。
受付には、若い女性が立っていた。
「いらっしゃいませ...」
彼女は、マルクスたちを見て驚いた。
「あ、あなたたちは...!」
「『灰色の刃』!?」
ギルド内の冒険者たちが、一斉に振り向いた。
「本物か!?」
「宰相派を倒した英雄たちだ!」
「Aランク冒険者だぞ!」
ざわめきが広がる。
マルクスは受付に近づいた。
「王都のギルドマスター、ガレスから連絡が行っているはずだが」
「は、はい!」
受付嬢が慌てて書類を取り出す。
「ギルドマスターが、お待ちしております!」
「こちらへどうぞ!」
七人は、奥の部屋に案内された。
ギルドマスターの部屋。
中年の女性が、座っていた。
短い髪。鋭い目つき。
「ようこそ、『灰色の刃』」
女性は立ち上がった。
「私は、ノーザンクロスのギルドマスター、エリカ・アイアンハート」
マルクスは頭を下げた。
「マルクスです」
「こちらが、俺の仲間たちです」
一人ずつ、紹介する。
エリカは頷いた。
「よく来てくれた」
「北部の状況は、深刻だ」
エリカは地図を広げた。
「この一ヶ月で、15の村が襲撃された」
「死者は、300人を超える」
マルクスの表情が、険しくなる。
「300人...」
「ああ」
エリカは続けた。
「オーク、ゴブリン、ワイバーン」
「通常の10倍の数が出現している」
「そして」
エリカは、地図の一点を指差した。
「全ての魔物が、この方向から来ている」
「北の森」
「そこに、何かがある」
マルクスは地図を見つめた。
「北の森...」
「ああ」
エリカは真剣な顔で言った。
「ギルドは、調査隊を送った」
「だが」
「誰も、帰ってこなかった」
ティグリスが眉をひそめた。
「全滅したのか?」
「おそらく」
「だから、あなたたちに頼みたい」
エリカはマルクスを見た。
「北の森へ行き、魔物発生の原因を突き止めてほしい」
「そして、可能なら排除してほしい」
マルクスは頷いた。
「わかりました」
「いつ出発すればいいですか?」
「明日の朝」
エリカは答えた。
「今夜は、宿で休んでくれ」
「北の森は、危険だ」
「万全の状態で挑んでほしい」
「了解しました」
夜。
宿屋「雪の宿」。
マルクスたちは、部屋で作戦会議をしていた。
「北の森か...」
ティグリスが地図を見ている。
「何があるんだろうな」
「魔物を操る何かだ」
マルクスは答えた。
「おそらく、人為的なものだ」
「人為的?」
アリアが聞く。
「ああ」
マルクスは説明した。
「魔物が突然、大量発生することはない」
「必ず、原因がある」
「誰かが、意図的に魔物を集めている」
「それか、何かの魔法装置が」
ルーナが考え込んでいる。
「でも、誰が? なんのために?」
「それを、調査する」
マルクスは立ち上がった。
「明日、北の森へ行く」
「敵が人間なら、話は早い」
「倒せばいい」
ギムリが戦斧を磨いている。
「魔物だろうが人間だろうが、関係ねえ」
「俺たちが、叩き潰す」
カミラが微笑んだ。
「頼もしいわね」
セリアが祈るように手を組んだ。
「神のご加護がありますように」
マルクスは窓の外を見た。
雪が、静かに降っている。
北の空は、暗い。
「明日」
「真実が、明らかになる」
そして、新たな敵との戦いが始まる。
灰色の刃の、次なる戦場は。
北の森だ。
翌朝。
雪が降り続く中、マルクスたちは北の森へ向かった。
街から、馬で二時間。
森の入り口に到着する。
「ここからは、徒歩だ」
マルクスが馬を降りる。
森の中は、薄暗い。
木々が密集し、陽の光が届かない。
「気味が悪いな...」
ギムリが呟く。
「静かすぎる」
ルーナが弓を構える。
「鳥の声も、動物の気配もない」
マルクスは魔力探知の魔法を使った。
「魔力の反応が...ある」
「奥に、強力な魔力源がある」
「どれくらい?」
ティグリスが聞く。
「かなり強い」
マルクスは答えた。
「おそらく、そこが魔物発生の原因だ」
「行くぞ」
七人は、森の奥へ進んだ。
30分後。
マルクスたちは、異様な光景を目にした。
森の中央に、巨大な石碑。
黒い石で作られ、不気味な文字が刻まれている。
そして、その周囲に。
数百匹の魔物。
オーク、ゴブリン、ワイバーン、トロール。
全てが、石碑の周りに集まっている。
「何だ、これは...」
ティグリスが息を呑んだ。
「魔物が...集会してる?」
「いや、違う」
マルクスは石碑を見つめた。
「あの石碑が、魔物を呼び寄せている」
「召喚魔法だ」
アリアが驚く。
「召喚魔法!? そんな大規模な...」
「ああ」
マルクスは頷いた。
「誰かが、あの石碑を設置した」
「魔物を大量に召喚するために」
その時。
石碑の前に、人影が現れた。
黒いローブを纏った男。
「よく来たな、『灰色の刃』」
男の声が、森に響く。
マルクスは警戒した。
「お前は...?」
男はローブのフードを外した。
痩せた顔。鋭い目。
40代ほどの男。
「私は、闇の教団の司祭」
「ゼノス・ダークソウルと言う」
「闇の教団...?」
「そうだ」
ゼノスは笑った。
「我々は、この世界の破壊を望む」
「既存の秩序を壊し」
「新しい世界を作る」
「そのために」
ゼノスは石碑を撫でた。
「魔物を使って、人間の街を滅ぼす」
マルクスの目が、冷たく光った。
「狂ってるな」
「狂っている?」
ゼノスは笑った。
「いや、これが正義だ」
「貴族が民衆を虐げ」
「王が権力を振るい」
「腐敗が蔓延る世界」
「そんな世界は、滅びるべきだ」
マルクスは首を振った。
「お前の言う通り、この世界には腐敗がある」
「だが、だからといって全てを壊していいわけじゃない」
「変えるんだ。少しずつ」
「無辜の民を殺していいわけがない」
ゼノスは冷笑した。
「甘いな」
「お前も、腐敗した貴族を殺したではないか」
「『灰色の刃』として」
「我々と、何が違う?」
マルクスは即答した。
「俺たちは、悪人だけを殺した」
「無実の者は、一人も傷つけていない」
「だが、お前は違う」
「村の民衆、300人を殺した」
「その中には、子供も老人もいた」
「それが、違いだ」
ゼノスの顔が歪んだ。
「ならば」
「お前たちも、ここで死ね」
ゼノスが手を上げた。
「魔物たちよ、奴らを殺せ!」
数百匹の魔物が、一斉に動き出した。
マルクスは全員に命令した。
(戦闘開始! 魔物を倒しつつ、ゼノスを捕らえろ!)
(了解!)
ティグリスが剣を抜いた。
「来い! 全員かかってこい!」
ギムリが戦斧を構える。
「数百匹? 上等だ!」
ルーナが矢を放つ。
次々と、魔物の急所を射抜く。
アリアが魔法を発動した。
「ファイアストーム!」
巨大な炎の竜巻が、魔物を焼く。
カミラが短剣を投げる。
正確に、魔物の喉を貫く。
セリアが後方で回復魔法の準備をする。
そして、マルクス。
「テレキネシス」
10匹の魔物を、同時に拘束する。
そして、空中に持ち上げた。
「まとめて、叩き落とす」
マルクスは手を振り下ろした。
10匹が、地面に激突する。
戦闘が始まった。
七人対、数百匹。
数では圧倒的に不利。
だが。
「俺たちには、魔法がある!」
マルクスが叫んだ。
「連携で戦え! 魔物を分断しろ!」
ティグリスとギムリが前衛。
魔物の攻撃を受け止める。
ルーナとカミラが中衛。
遠距離から攻撃する。
アリアとマルクスが後衛。
魔法で敵を一掃する。
セリアが支援。
負傷した仲間を、即座に回復する。
完璧な連携。
前世のチームワーク理論と、この世界の魔法。
組み合わせれば、無敵だ。
10分後。
魔物の数は、半分に減っていた。
だが、まだ100匹以上いる。
「くそ...キリがねえ!」
ギムリが叫ぶ。
「石碑を破壊しろ!」
マルクスが命令した。
「あれが、魔物召喚の源だ!」
「わかった!」
ティグリスが魔物を蹴散らしながら、石碑へ突進する。
だが、ゼノスが立ちはだかった。
「させるか」
ゼノスが魔法を放つ。
「ダークボルト!」
黒い雷が、ティグリスを襲う。
「ぐあっ!」
ティグリスが吹き飛ばされる。
「ティグリス!」
セリアが駆け寄って、回復魔法をかける。
マルクスは、ゼノスを睨んだ。
「お前の相手は、俺だ」
「テレポート」
マルクスは、一瞬でゼノスの目の前に転移した。
ゼノスが驚く。
「な...!?」
マルクスは、剣を振るう。
ゼノスが後ろに飛び退く。
「テレポートだと...!?」
「そして、これだ」
「テレキネシス」
ゼノスの体が、見えない力で拘束される。
「ぐ...! この程度...!」
ゼノスが魔力を爆発させる。
拘束が解ける。
「やはり、魔法使いか」
マルクスは構え直した。
「なら、本気で行く」
二人の魔法使いの、戦いが始まった。
マルクスとゼノスが、対峙する。
「テレキネシス!」
マルクスが魔力を放つ。
ゼノスの体が、再び拘束される。
だが、ゼノスは笑った。
「ダークシールド!」
黒い障壁が、ゼノスを包む。
マルクスの魔力が、弾かれる。
「お前の魔法は、読んだ」
ゼノスが手を振った。
「ダークスピア!」
黒い槍が、マルクスに飛んでくる。
マルクスは、テレポートで回避する。
「テレポート」
背後に転移。
「テレキネシス!」
今度は、ゼノスの首を直接狙う。
だが、ゼノスは即座に反応した。
「ダークバリア!」
首の周りに、黒い障壁。
「くそ...防御魔法か」
「お前の戦術は、理解した」
ゼノスが笑う。
「テレポートで距離を詰め」
「テレキネシスで首をねじる」
「それが、お前の必勝パターンだ」
「だが、私には通用しない」
マルクスは舌打ちした。
「なら、これならどうだ」
マルクスは地面に手を置いた。
「クリエイト・スパイク!」
地面から、無数の石の槍が飛び出す。
ゼノスの足元を襲う。
「なっ!?」
ゼノスが慌てて飛び上がる。
だが、マルクスはそれを待っていた。
「テレポート」
空中のゼノスの背後に転移。
「テレキネシス!」
ゼノスの体を、地面に叩きつける。
ドガァン!
ゼノスが地面に激突する。
「ぐあ...!」
マルクスは、すぐに追撃する。
「テレキネシス!」
ゼノスの首を、魔力で掴む。
そして、ねじろうとした。
だが。
「甘いな」
ゼノスの体が、黒い霧になって消えた。
「影分身か!?」
背後から、ゼノスの声。
「ダークブラスト!」
黒い爆発が、マルクスを襲う。
マルクスは、とっさにテレポートで回避。
「テレポート」
距離を取る。
「厄介な奴だ...」
(マルクス、大丈夫!?)
アリアのテレパシー。
(ああ、何とか)
(こっちの魔物は、あと50匹!)
(急いで!)
マルクスは、ゼノスを見た。
「時間がない」
「一気に決める」
マルクスは、両手を前に出した。
魔力を、最大限に集中させる。
「お前は、防御魔法で身を守っている」
「だが、それにも限界がある」
「魔力が尽きれば、終わりだ」
マルクスは、連続で魔法を放った。
「テレキネシス!」
「テレキネシス!」
「テレキネシス!」
何度も、何度も。
ゼノスの体を、あらゆる方向から締め付ける。
「ぐ...!」
ゼノスの防御魔法が、軋む。
「まだだ!」
マルクスは、さらに魔力を込める。
「テレキネシス!」
「テレキネシス!」
「テレキネシス!」
ゼノスの防御魔法が、ついに崩れた。
「ぐああああ!」
「今だ!」
マルクスは、最後の魔法を放った。
「テレキネシス!」
ゼノスの首を、魔力で掴む。
そして。
ねじった。
グキッ。
ゼノスの体が、地面に倒れる。
「終わった...」
マルクスは、膝をついた。
魔力を使いすぎた。
(マルクス!)
セリアが駆け寄ってくる。
「ヒール!」
回復魔法が、マルクスを包む。
「ありがとう...」
マルクスは立ち上がった。
「ゼノスは?」
「死んでます」
セリアが確認した。
「首が、折れています」
マルクスは、石碑を見た。
「あれを、破壊する」
ティグリスとギムリが、駆け寄ってきた。
「任せろ!」
二人は、石碑に剣と斧を叩きつけた。
ガキィン!
だが、石碑は傷一つつかない。
「硬え!」
「魔法で強化されてるのか!?」
マルクスは考えた。
「なら、内側から破壊する」
マルクスは、石碑に手を当てた。
「テレキネシス」
石碑の内部に、魔力を送り込む。
そして、内側から力をかける。
「砕け!」
ピシッ。
石碑に、ひびが入る。
さらに魔力を込める。
「砕けろ!」
バキィ!
石碑が、真っ二つに割れた。
そして、砕け散る。
瞬間。
周囲の魔物たちが、一斉に動きを止めた。
「あ...ああ...」
魔物たちが、混乱している。
そして、森の奥へ逃げ始めた。
「逃げていく...!」
ルーナが驚く。
「石碑が破壊されて、召喚魔法が解けたんだ」
マルクスは説明した。
「魔物たちは、もう人間を襲わない」
「やった...!」
ギムリが叫んだ。
「勝ったぞ!」
ティグリスも笑った。
「やったな!」
全員が、安堵の表情を浮かべた。
マルクスは、ゼノスの死体を見下ろした。
「闇の教団...」
その瞬間、全員に光が満ちた。
キィィィン!
『レベルアップ!』
『マルクス レベル58 → レベル60』
『ティグリス レベル55 → レベル57』
『ギムリ レベル52 → レベル54』
『ルーナ レベル49 → レベル51』
『アリア レベル56 → レベル58』
『セリア レベル53 → レベル55』
『カミラ レベル47 → レベル49』
(2レベル上がった!)
ティグリスの声。
(魔物数百匹と司祭の経験値...)
アリアが呟く。
キィン!
『パーティー平均レベル: 54.9』
『王国最強の実力者集団』
「まだ、他にもメンバーがいるはずだ」
カミラが頷いた。
「ええ。こいつは司祭と言っていたわ」
「ということは、上に教主がいる」
マルクスは拳を握った。
「新たな敵が、現れたな」
「だが」
マルクスは仲間たちを見渡した。
「俺たちなら、勝てる」
「どんな敵が来ても」
「俺たちは、灰色の刃だ」
全員が頷いた。
(ああ!)
テレパシーの声が、力強く響く。
数日後。
ノーザンクロスの街に、平和が戻った。
魔物の襲撃は、完全に止まった。
ギルドマスターのエリカが、感謝の言葉を述べた。
「ありがとうございました」
「あなたたちのおかげで、北部の民が救われました」
マルクスは頭を下げた。
「当然のことをしただけです」
「報酬の金貨500枚です」
マルクスは受け取った。
「それと」
エリカは、もう一つの袋を渡した。
「北部の村々からの、寄付です」
「金貨100枚」
「民衆からの、感謝の気持ちです」
マルクスは驚いた。
「民衆から...」
「ええ」
エリカは微笑んだ。
「あなたたちは、英雄です」
「北部の民は、忘れません」
マルクスは、仲間たちを見た。
全員、嬉しそうな顔をしている。
「ありがとうございます」
王都への帰路。
マルクスは、テレポートで全員を転移させた。
一瞬で、王都の屋敷に戻る。
「やっぱり便利だな、この魔法」
ギムリが笑った。
マルクスは、執務室に座った。
「闇の教団...」
「新たな敵が、現れた」
「だが、俺たちは負けない」
マルクスは窓の外を見た。
王都の街並み。
「この世界を、守る」
「それが、俺たちの使命だ」
灰色の刃の戦いは、続く。
闇の教団。
次なる敵との戦いが、始まろうとしていた。




