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今回かなり短め

 燃えている。村も。空も。人の悲鳴も。すべてが炎の中に溶ける。


「穢らわしい異端者め……」


 剣を握る腕が勝手に動く。自分の手で見知らぬ人の人生が次々と絶たれてゆき、血の匂いが鼻腔を刺す。


ーー快感。愉悦。恍惚。忘我。そんな感覚に酔いしれる。


 炎の向こう、瓦礫の間を探し歩く。目に入るのは、次々と倒れる異端者たち。


 そんな中、視界の端に、黒髪の少女の後ろ姿が映った。こちらには背を向けていて、何か叫んでいるが聞き取ることはできない。


 いつものように剣を振るう。


ーーザシュッ。


「兄ちゃん!よかっーー」


 慣れ親しんだ殺人行為なのに、何か重大な過ちを犯したような気がした。


 刃が少女の胸を貫き、彼女の体がゆっくりと弛緩する。焦げた匂いと鉄の匂いが混ざり合い、胸の奥が締め付けられる。


ーーふと、風が吹いた。綺麗な黒髪が揺れ、少女の顔が視界に飛び込む。


「……リナ…?」


 その名を口にした瞬間、頭の中で何かが砕け散った。これまで感じていた優越感も、快楽も、跡形もなく消えた。全身が冷たく、重く、息が吸えない。手が震え、足が崩れる。


「うおぉぉぉおお!やめてくれ!やめろッ!俺は……っ!……リナ!リナ!」


 心臓の鼓動が耳の奥で響き、時間が止まったように思えた。


 倒れたリナの体を抱きしめる。体温はまだ残っている気がするのに、手に触れる感覚は虚ろだ。


 視界がぐにゃりと歪む。地面が反転し、空が足元に広がる。炎の光が波打ち、熱が肌を焼く。


 リナの瞳から最後の燈が消える直前、彼女は確かに言った。


「…どうして……レオン……?」









「………ン…オン……レオ…レオン!」


 レオンの名前を呼びながら、エリカが肩を掴んで揺さぶる。


「……はっ…はぁっ……ゆめ?…」

「大丈夫?うなされてたよ。なに見たの?」

「……なんでもない…」

「…昨日からそればっかり。」


 夢ーーだが、現実のように生々しかった。剣を握る手の重み、血の匂い、焼ける音。今でも鮮明に思い出せる。人を殺したことなんて一度もないのに、殺す快感を一瞬でも理解してしまった自分が怖い。


(なんだよ……なんで、こんな夢を見るんだよ……)


 レオンは深く息を吐き、頭を押さえる。顔を上げると、エリカが心配そうに覗き込んでいた。


 ーーそして、気づいてしまう。


「……おい。お前。服着ろ。服。」

「?私のシュミーズ姿なんて何度も見てるでしょ?」


 レオンは絶句した。無意識に赤面する。マリナから借りたらしいそれは、やたらと……エロい。肩のラインとか、布の薄さとか、あまりにも刺激が強い。


(いや、ダメだろ!?俺も一応健全な男子なんだが!?エリカは腐っても美人だし。一番ダメな組み合わせだろ!……というかマリナさん、こんなの普段着てるのか!?いや違う、そうじゃなくて……!)


 混乱と羞恥で脳内がショートしかけているレオンを見て、エリカはそっとほくそ笑む。



 ーー昨日。夕飯後。


「おい、ちょいと待ちな。」

「え?あ、はい。」


 レオンのいないところで、突然マリナに呼び止められたエリカは驚いた。


「堕ちないなら、これ着て脳殺が一番さ。」


 差し出されたのは、淡いレースの入った大人のシュミーズ。その瞬間、マリナに自分の気持ちを見抜かれているのが分かって、顔が真っ赤になる。


「わたしゃそれでじいさんを堕としたからね。……まぁ、進展になることを願ってるわ。」


 まさかの爆弾発言に思わず硬直するエリカだったが、同時に妙な勇気も湧いた。


(少しだけ、背伸びしてみようかな…)

「あ、ありがとうございます!」



 鏡の前で一回転してみて、頬が赤く染まる。悪戯っぽい笑みを浮かべながら、エリカは小さく呟いた。


「ちょっと……抱きついてみようかしら?」



 そして現在ーー


「どうしたの? レ〜オ〜ン?」


 可愛らしく甘えた声で抱きつこうとした瞬間、レオンが真剣な顔で立ち上がった。


「そういえば、ホルンさんが薪割り手伝ってくれって言ってたな……そうだよな……早く行ってやんないと……」


 ぶつぶつと何か言い訳のようなことを呟きながら、レオンは寝室から逃げるように出ていった。残されたエリカは、唖然とした表情でその背中を見送る。


「……今のは、さすがにタイミング悪かったかも。」


 そう呟きながら、少しだけ唇を尖らせる。





 外の空気はひんやりとしていて、まだ夜明けの気配が残っていた。ブラウンご夫婦の家の裏庭には、朝靄と焚き火の煙が混じり、白い靄が漂っている。


「悪いな、レオン。昨日で薪が切れちまってな。」

「いえ、これくらいならすぐ終わりますよ。」


 レオンは笑って返し、斧を構える。夢の中の血の匂いがまだ頭の奥に残っていた。


(リナの「どうして」という言葉も……)


 振り払うように、レオンは斧を振り下ろす。


ーーガンッ。


 乾いた音と共に薪が割れ、木片が四方に飛び散った。


「おお!いい腕じゃないか!若気の至りってやつか?」


 ホルンさんは感心したように笑う。一方レオンは、自分の腕の感覚に戸惑っていた。


(……なんだ?軽い……?)


 もう一度薪を立て、同じような感覚で斧を振り上げる。筋肉の動きが妙に滑らかで、力が勝手に流れ込んでくるような感覚。そのまま振り下ろす。


ーーバキィィンッ!


 薪が粉々になって、破片が数メートル先まで飛んだ。


(……おかしい。そもそも村では二回ほど斧を振らないとこの長さの薪は割れなかったのに…)


「お前、さては……身体能力を高める系のスキルなんだな?すげー。こんな感じなのか。」

「え……ああ、はい。」


 レオンは慌てて取り繕うが、手の震えが止まらない。呼吸は妙に澄んでいて、体が軽い。


(…これって……あの時の…筋力増強(ブースト)…?)


 袖の中で、黒い刻印が微かに光っている。ホルンが気づく前に、レオンは慌てて腕を隠した。


「大丈夫か?顔が真っ青だぞ。」

「……ちょっと寝不足で。大丈夫です。」


 無理に笑って見せる。だが、さっきの感覚はどう考えても普通じゃない。



「ホルンさーん!レオンー!ご飯ができましたー!」


 エリカの明るい声が遠くから響いた。レオンは軽く息を吐き、斧を地面に突き立てる。


「……ホルンさん、これくらいで十分ですよね。」

「ああ、助かった。」


 木の破片が散らばる中、レオンは半ば無意識に手を見つめる。


(じゃあ……本当に奪ったのか…?スキルを?)


 恐怖の中に微かに混ざる興奮。レオンはそれを確かに感じながらエリカの方へ駆け寄った。

ハーレム要員が増える前にエリカの見せ場を作りたかったんです……



まさかの薬を飲む時間を変えたら二ヶ月悩んでいた症状がかなり改善してショック(元気になってきた分これ書く時間がなくなってきた)

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