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現代のゲームにおける特許および分割出願の有効性に関する考察と解説

作者: さいか

 任天堂がポケットペアを特許侵害で訴えたという訴訟がありました。

 本文ではこちらの訴訟をもとに特許について勉強してみましょう。

 法律的な定義でなく、できるだけわかりやすい表現を心がけますのでよろしくお願いします。



 ではまず特許とは。


 特許とは、発明をして出願した人が一定のあいだ独占的にその内容を実施できる権利です。

 もちろん、その内容が進歩的なものでないと独占してはよろしくないので、特許庁で審査が行われます。

 審査は『出願時点』で世間に公表されている情報をもとに行われます。

 審査基準は複雑ですが、特許出願で主張する権利範囲(請求項といいます)が、世の中にある文献を二つ組み合わせても記載されてない部分がある場合は特許として認められる可能性は高いです。

 そして特許庁の審査で認められると、特許料を支払うことにより特許登録となり権利が発生します。


 審査は出願時点の情報をもとに。

 権利は登録後から発生。

 これが大原則となります。



 特許の権利とは。

 特許は技術を独占できる権利です。そのため、特許侵害した他社に行使できる権利は多岐に渡ります。


 ひとつめ。お金を請求できる。

 他社が不当に利益を得たこと、及び、自社が利益を得られなかった、ことについてお金を要求できます。

 場合により大きく異なりますが、売上の10%程度がお金の相場と言われています。このお金の算出については、あらかじめ警告書を送っておくことで特許が公開されたときからの被害額とすることができます。


 ふたつめ。侵害行為の差止を請求できる。

 特許侵害の内容を実施させないようにすることができます。


 そのほか、新聞に特許侵害をしたことの広告を出させたり、製造ラインの破壊を請求したりもできます。



 さて、ここからは今回の訴訟に関して特徴的な制度に触れていきましょう。

 分割出願についてです。

 分割出願とは、ある特許出願Aをもとに別の特許出願Bを行うことを言います。

 特許出願Aの明細書(説明文)に書いてある内容であれば、別の特許出願Bを行うことが可能です。

 そして、特許出願Bは特許出願Aを出願した時点での情報に基づいて審査されます。

 そのため、特許出願A出願→他社製品が販売→分割出願B の順番で発生すると、他社製品の内容を分割出願Bに含めることが可能になっています。(出願Aの時点で明細書の内容を明らかにしているので、そこについて権利にできる、というロジックです)

 そして分割出願についても権利が発生するのは特許登録となったタイミングです。

 分割出願Bの権利は分割出願Bが登録されて初めて権利行使が可能です。


 また、賠償金の算定は最速でも分割出願公開後の侵害行為に基づいたものとなります。

 つまり、他社製品販売後に分割出願を行った場合、早くとも分割出願Bが公開されてからの売上に基づいた額の賠償金となるということです。

 今回の訴訟が上記のような製品販売後の分割出願であることを、ポケットペアが訴訟内容として公開しています。

 要求金額が1000万円と、パルワールドの売り上げと比較して少ない理由はこのような点も理由にあると考えます。


 つまり、ゲームのような初動で大きく売り上げるようなタイプの製品においては、後出し分割出願によるお金の額は多くならない、ということになります。

 そして、アップデートにより特許回避可能であるならば、差止請求についても特許侵害していないのでクリアすることができるようになります。


 このように、分割出願はある意味で後出しが可能なものですが、その権利は現在のアミューズメント業界のスピード感においては多少限定的であり、バランスは取れているといえるでしょう。

 もともと特許制度自体が古くは機械製品など息の長い製品を対象にしたものでしたから後出し分割出願は強力でしたが、特定の分野においてはそうではなくなってきたかもしれません。



 最後に任天堂、ポケットペアの特許に対する対応について考えてみましょう。

 わたしの所見となりますが、両者ともに十分な対応をとっているものと考えます。


 まず任天堂について。

 任天堂は適切な特許出願を行なっており、あらかじめ明細書に十分な記載をしておくことで後々の分割出願に活用できるようにするとともに、内容を公知することで他社に特許が取られることを防いでいます。

 後出し分割出願についても特許戦略上、適切な対応です。


 次にポケットペアについて。

 製品販売時点で公開されていた特許は侵害していないので、適切な調査と仕様検討が行われたと考えられます。

 より慎重に対応するならば、明細書の記載内容から権利化しそうな内容について検討し、それを回避しておく、ということも考えられますが、狭い業界でない以上、これも費用対効果がよろしくなかったでしょう。


 上記のとおり、両者は特許制度のなかでできることを十分に行っており、どちらが致命的な不手際、特許を軽視した行為を行っているわけではありません。

 今後どのような結論になるか、特許制度を勉強したうえで検討してみると意外と楽しいのではないでしょうか。


 乱文となりましたが、何か得られるものがありましたら幸いです。


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