派遣軍
好評なら続くシリーズ第2弾です。
コメントとか欲しいなぁ
アフリカのとあるサバンナにて二人の男が岩陰に隠れて岩を削る弾丸から身を守っている。
「なんとかならないんですか?!」
叫び声に似た絶叫出す白衣の日本人男。
「大丈夫デス!モスグ助ケキマス!」
ハワイアンTシャツを着た黒人の男が必死に宥めていた。
「Don't resist!」
(抵抗するな!)
現地訛りでAKを盗賊団が射撃しながら警告する。
それに対して応戦するがハワイアン男の武装はAKは1丁のみであり6対1では明らかに勝ち目が無いのだ。
「クソ!来なきゃ良かった!」
白衣の男は日本からある条件で月収150万という破格の待遇で派遣されたが今更無駄である。
足音と射撃音がじわりと確実に近づく、手鏡で男が確認すると20Mほどまで接近しているのがわかったが直後に粉々に砕け散った。
煌めく星のようになった手鏡(税抜500円)。
を(わぁきれいだなぁ)
と半ば諦めながら眺めていると小火器の銃声に混じって大口径の砲声が遠くから轟く。
(ドドドン)
キツツキのようなそんな音と共に辺り一面に血飛沫が撒き散らされる。
「助ケガキマシタ!フセテクダサイ!」
言われるがままに伏せつつそろりと陰から様子を伺う。
逃げ惑う盗賊の背後からキュラキュラと履帯の擦れる音を轟かせて進むのは派遣前の研修中に資料で見た名をBMPと言う装甲車両である、染みの付いた日章旗をはためかせ三十ミリの大口径弾頭を発進寸前の賊の車両に打ち込み爆ぜさせる。
「大丈夫ですか?おい!保健委員を呼べ!」
圧倒的火力に釘付けになっているといつのまにか降車した学生服にボディアーマー姿の生徒たちに囲まれていた。
トントン拍子でジープに乗せられ発車した、荷物は先に載せ替えられてハワイアン男は負傷していたらしく赤十字マークの73式トラックに分乗しているのが窓から見えた。
「君たちはもしかして『派遣軍』かい?」
銃をイジっていた高校生くらいの男の子に問いかける。
「おじさん見た事ないの?意外だね」
「私達は派遣軍じゃなくて『留学自衛官』です、あんまりその呼び方は好きじゃないの」
運転手の女の子はムッとした表情で答える。
「戦う事は怖くないの?」
「怖いけど日本に居場所は無いしお金貰えるからこれでいいの」
「そうか…」
窓の風景を見ながら物思いにふけるが数年前から始まったばかりのこの制度に暗澹とした気持ちが抑える事が出来なかった。
遡る事三十年程前に人口を増やす為に人造人間法なるモノが採択され人間一人からでも子どもを造り出せる、つまりはツガイが不要となる技術が合法となったのだが急激に増える人口と主に虐待や高齢親の死を原因に孤児は増大、ついに社会問題化してしばらくは国営孤児院で面倒を見ていたが政府は治安維持部隊として海外へ送り出し自分達で食い扶持を稼いで貰おうとした訳である。
「おかき食います?」
「ありがとう」
(彼らは志願兵だ、月給50万円で食いつかない筈はない)
自身の命を投じて戦う学生兵に憐れみを抱き男は出国して行った。
――――
墨をぶち撒けたような空の下、コンクリ造りの隊舎前で演説台に上り話す者がいる。
「諸君らは自衛隊という組織で訓練を受けたれっきとした自衛官である!しかし海外で君たちが戦闘に積極的に参加すれば国会での面倒事は避けられない!」
腕を振りかざす度に胸の略綬がこれでもかと動いていた。
台の真下でスーツを着た男が話す。
「君たちはこれから除隊し選択をして貰うことになる、一つは民間へ就職すること二つはアフリカへ渡り自衛隊OBが運営する日本人学校に入学、任務を遂行し多額の給与と共に卒業、そして帰国するのだ!さぁ選べ!一つ目を選ぶ者は直ちに外に出よ!」
13歳の孤児達はどよめきざわめく、やがて三人が門の外に僅かな手荷物と共に出た。
「よろしい!では明日朝5時に飛行機で我々第十八次留学隊は出発する!」
――――
「へぁっ?」
日本から遥か1万キロメートル離れたアフリカのとある国、日本人学校の寮で彼コウイチは目を覚ました。
2段ベットの2段目から見える時計は朝6時を指している。
「おーいヤマダ!起きろ、朝だぞ」
「ん?んー」
布団に包まる同居人を尻目にラフな半ズボン姿から軍服を想起させる迷彩色の作業着に着替えて起床の合図を待つ。
彼らは擬装された軍隊、この国の法律で理論武装し大統領の私兵として合法的に働く。
鐘が鳴り響く、起床の合図だ。
(起きないか、もう行こう)
キーンコーンカーンコーンと爆音を聞きながら中性的な顔を覗かせる。
「今日遅刻したら巡回だろ?行こうよ!」
毛布を引っぺがして力強く引っ張り出してお姫様抱っこのままサンダルを履き中庭へ急ぐ。
彼の髪が口に入るのも構わず走り鐘が鳴り止む頃には整列に間に合った。
「番号!」
教官もとい先生の声が響く。
1.2.3…矢継ぎ早に答えて自分の番、隣のヤマダは立ちながら寝ていたが奇跡的にバレずに済んだらしい。
涼しげな風が心地良く肌を撫でる、7月中頃だというのに朝に限って過ごし易く異国である事を再認識する。
「生徒全員異常無し!解散!」
(このアホまだ寝てるよ)
スースーと音を立てて寝ている異常大有りのバカを放置して授業の用意をする為に戻った
一般的な学校と違い点呼も有れば軍事訓練もある、今日は一日座学だが。
教科書を肩掛け鞄に入れてヤマダの鞄を手に教室を目指す、途中で中庭に寄り直立不動で寝ている馬鹿野郎を叩き起こした。
「げっ!もうこんな時間!」
「ほら、カバン持って!行くよ!」
「待ってよー!」
肩まで掛かるロングヘアを揺らすヤマダと共に廊下を走り抜ける。