8.VSシャドーウルフ
周囲の魔法陣から全身が真っ黒い狼が出現する。その数は1匹、2匹、3匹……いっぱいだ。
『合計で15匹です』
「15匹くらいはいるな」
「なんでこいつ等が――2級討伐対象だぞ」
こちらを囲うように呼び出されたシャドーウルフ達は、様子見をする暇もなくこちらへ飛びかかってきた!
「お前はアムルちゃんを守れ! オレが食い止めてる間に、なんとか水路へ逃げ込むんだ!」
敵の攻撃を剣で凌いでいるジェイドの表情を見るに、2級討伐対象とはかなりの強敵なのだろう。それがあれだけの数がいる。
状況は最悪なのだろうが――不思議と俺は落ち着いていた。
「アムル、悪いんだけどちょっと目を閉じていて貰っていいかな」
「あ、はっ、はい!」
アムルの身体から魔力の流れを感じ取る。それは鎧内のケーブルを通して全身へと伝わっている。
その魔力を脚、そして拳に一時的に集め――一気に放つ。
ゴォッ――!
巨体が動く風の音と共にシャドーウルフ達が粉砕されていく。
目の前で仲間が倒されていくのに目もくれずこちらへ飛びかかってくる。腕や首元を噛まれるが、その程度の牙じゃビクともしない。
「はあっ!!」
腕に嚙みついてきた狼を地面へと叩きつけ、首元のは掴んで引き剝がし、やはり地面に叩きつける。
ジェイドも自分へ襲ってきている奴らの相手をしているのが見える。
「なんかこう、必殺技みたいなの欲しいな」
『魔力不足です』
「だよなぁ」
そんな雑談をしている間に、最後の狼を拳で粉砕した。
――――――――――――
シャドーウルフ達はどういう訳か黒い塵になって消えてしまった。
おかげでスプラッターな場面をアムルに見せないで済みそうだ。
「お前――そんなに強かったのか」
「あはははっ」
「おっと。アムルちゃん大丈夫?」
「あーはい。凄い音とかしましたけど」
「モンスターは全部オレ達で倒したからね」
「さすがジェイドさんとヨーイチさんです!」
そんな微笑ましい会話をしている間に、水路の方から声が聞こえてくる。
「ジェイドさーん」
「あっ。兵士の奴ら呼んでたの忘れてた……こっちだこっち!」
合流した兵士数人と一緒に、一同は通路の奥へと進んでいった。
30分くらいは歩いただろうか。出口の扉へと辿り着いた。
「さて――ハッ!」
扉そのものにも細工している可能性もあるので、ジェイドがさっき見せた飛ぶ斬撃で一気に吹き飛ばした。
その場にいる誰もが、勢いよく明後日の方向へ吹っ飛ぶ扉を視線で追いかけてなかった。
それよりも悲惨な――。
「見ちゃダメだ!!」
俺は咄嗟に振り返り、鎧の中のアムルの視界を塞ぐ。
「でも今の……」
出口の先には――無残にも惨殺された強盗達の死体が散らばっていたのだ。
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