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61.VSジロウ 決着


 先に動いたのは輪廻無道(りんねむどう)――ジロウだった。

 上段から不可避の絶対斬撃が、まさに天より高い一撃が落ちてくる。


『貰ったッ!』

『……ここだッ』


 俺は白皇剣をその場に”落とし"、空いた両手でヨミノタチを待ち受ける。


『たぁッ!!』


 俺の行動に、一瞬もブレることなく刀を振り下ろす。


『瞬手ッ』


 ステラの祝福(ギフト)を手に使い、瞬時にヨミノタチを挟み込む。

 いわゆる“白刃取り”だ。


『お、の、れぇ』

『お、おおおッ』


 ああ言えば、ジロウの性格なら間違いなく上段斬りのまま正面から来る。そこを受け止める……という作戦はひとまず成功した。

 しかし当然ながら輪廻無道(りんねむどう)の力は凄まじく、手の中でヨミノタチも暴れそうだ。

 輪廻無道(りんねむどう)が押せば、俺が少し力を逃し、さらに引けば押す――せめぎ合いが続く。


『貴様、勝負を、ナメて、るのか!』

『最初に、私情は、挟まないとか、言ってなかったか!』

『俺様は、未熟だ! 故に、貴様を土産に、持っていき、認めて貰う!』

『そのせいで、ヤスオさん達が、お前の命を、人質に、やりたくもない事、やらされてるんだろうが!』

『――それもこれも、お前のせいだッ!』

『人の、せいに、するなッ!』


 ふとこんな時に、考え事をする。


 俺は異世界から魂だけこちらに飛ばされ、この鎧に入り込んだ。この場合は異世界転移なのか転生なのか。

 かつて召喚されたっていう勇者ディアスや、忍びの里の始祖はどう思ったのかは知らない。使命感に燃えたりしたんだろうか。

 それでも俺は、自分の事を勇者だとは思わないし、魔王なんて倒すどころか逃げちゃったし――魔力入れてくれる人や猫が居ないと動けなくなる、ただの鎧だ。


『いいえ。旧時代の神代の器……それがニーアデスの鎧です。ただの、とは心外です』


 凄い新情報が来たけど……結局、俺は1人だと何も出来ないんだろう。


 だから――。

 

『俺は、みんなの力を、借りて、みんなの力で、お前に、勝つッ』


 俺はヨミノタチを掴み、そしてその切っ先を、俺の腹に向けさせ――力を緩めた。


『なにッ!?』


 今度こそジロウは驚きの声を上げる。

 それはそうだろう。わざわざ刺されたのだから……でも俺の狙いはここからだ。

 再び動こうとするヨミノタチを抑えこむ。


『ルビィは全力でエレメントの維持、ハナコは魔力をもっとくれ! ステラは……後を頼む!』


 俺は腹に刺さった刀に、意識を集中させる――俺の中に入ったモノは、俺を着た事にする!


『搭乗者を登録――失敗。再登録を行います――失敗。この手順を繰り返します』


 禍々しい魔力と大量のエレメントの塊が渦巻く刀――このドス黒い感情の魔力。

 魔素――これがジロウに取り憑き、ジロウの感情で成長していったのだろう。

 

 侮辱、高慢、嫉妬、憤怒、後悔――自責の念が流れ込んでくる。

 

 いずれ輪廻無道(りんねむどう)の鎧はこの魔素を糧に、ジロウを喰い殺す――。


『お前のバカみたいなプライド、全部俺が持って行ってやるよ……その代わり、ちゃんとヤスオさんらに、謝れよ!』

『な、何を言って……』


 この魔素をどうにかしなければならないのなら、俺に移せばいい。

 魔素は人間の魂と結合する――。


『搭乗者の登録――失敗』


 星のマナは無いけど……代わりに3人分のマナがある。


『搭乗者の登録――失敗』


 3人のマナをひとつに束ね、俺の”中"に入れる!


『搭乗者の登録――成功しました。ジロウ=ダイナンの登録、完了』


 俺の意識は消失しなかった。

 でも身体の自由は無くなってしまい――その隙に、ステラが白皇剣を拾い――輪廻無道(りんねむどう)のコアを穿いたのを、俺はどこか遠い世界のように見ていた。


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