59.VSジロウ その3
『ふ、ふふ……カーッカッカッカッ!』
ジロウの笑い声が、コーディアの夜空に響き渡る。
辺りには粉塵が巻き起こって、何も見えないだろう。
『ヨーイチの鎧は例えバラバラになろうとも復元が可能と言っていた……まずはコアを探すか』
「――桜華、剛閃!」
『ッ!?』
白皇剣から放った飛ぶ斬撃は、油断していた輪廻無道の肩を斬り裂いた。
俺の中には今、ステラとルビィとハナコがいる。
これは心の中にいるとかそういう抽象的な表現では無く、物理的に3人入っているのだ。
もちろん普通なら入っても2人が限度だろう――しかし俺の身体は半壊していた為、3人分の魔力を使ってちょっと大き目に復元したのだ。足りない部分は、ゲートの中の壊れた鎧袖ナックルなどを使わせて貰った。
ちなみに大きさは2階建ての一軒家くらいの大きさ――後で元に戻るだろうか。
『な、なんだその姿は――』
もちろん3人分の搭乗者なので、鎧もそれに合わせて変化する――ニーアの出したモニターで全身の変化を確認した。
右腕は灰色に、左腕はアイボリー色に。
頭は部分的に紅くなり、背中にはカッコイイ金の装飾の入った青いマントが生えていた。
脚、腕、胴体と全体的に分厚くなっている。
ゴテゴテした目の前の巨体に比べると、こちらは若干シンプルで流線型の身体だ。
『3人の魔力供給により、接続した武具の形状記憶と形状変化を獲得しました』
(……分かりやすく)
『白皇剣の見た目を変化させる事が可能になりました。元に戻す事も可能です』
(分かりやすい!)
『操作権限は現在、ステラに移行――』
目に見えて狼狽えているジロウは、こちらを指差す。
『こ、これがお前の鎧の力か!』
『いいや違う――これは、みんなの力だ!』
王道のセリフだが、不思議と心地が良かった。
『小癪な!』
ジロウが包丁刀を振り下ろす攻撃、それを白皇剣で受け止め踏ん張る。
ケタ違いの衝撃が来るが、なんとか耐える――足元の地面は割れた。
◇◆◇◆◇
「もうちょい気張りや!」
「耳元で煩いのじゃ」
「デカいだけはあるな――」
3人はコックピットのような空間に、足はケーブルが巻き付き、両手は自由な状態でバイクのような椅子に座っている状態だ。
1番先頭にステラ。斜め後方右にルビィ、左にハナコだ。
ちなみにこの椅子は操作権限を持っている人間が、先頭に来るようになっている。
昔観た事のあるロボットアニメを参考に、俺がそういう風に内部を改造したのだ。
「あの邪魔な武器を壊すのじゃ!」
そこで椅子が入れ替わり、ハナコが前に出る。
◇◆◇◆◇
『ニンポウ、カゲムシャの――ウデオロチ!』
後ろの影から、俺の腕にそっくりなのが生えた。それが12本。
包丁刀を抑えたまま動けない俺に来た攻撃を、6本の腕で全て受け止めた。
『ハナコ!』
『そっちがバカみたいなデカブツで来るなら、こっちはよりバカになってやるのじゃ!』
全ての攻撃を防いでも、やはり大きさは向こうが有利。さらに押されるが、残った影の腕が印を構える。
「カ、スイ、ドー、フー、キン――五重ニンジツ……テンチメイドウノカメ!」
印から火を吹き高速回転する亀の怪獣、のような円盤が飛び出した。
それは一旦空中に留まっていたかと思うと、一気に直進し輪廻無道の腕を2本切断した。
『なんだそのニンジツは!』
『まずは2本なのじゃ!』
ここでルビィに入れ替わる。
『次はウチの番やな!」
さっきの攻撃て相手が怯み、少し距離が空いた。
そこへ白皇剣の形状が変化する――それは、鞭だ。
『白皇ライジングや!』
超高速のしなりのある一撃――二撃、三撃と連続攻撃を仕掛ける。
『この武器は!?』
『マジメなダイアーと違って、ウチは真っ向勝負や!』
本来なら指定した通りの軌道を描くはずのライジングは、その言葉通り真正面から高速で回転させながら攻撃していく。
『くッ――』
腕でライジングを見切って掴もうとするが、ルビィの強引な攻めがそれをさせない。
掴もうとした手ごと、切断した。
『3本! さらにもう1本や!』
『――ナメるな!』
切断した時に動きが鈍ったのを見切られ、ライジングは残った腕で掴まれてしまう。
引き戻そうにも、全くビクともしない。
『あの時みたいに、引き千切ってくれるッ!』
『あかん!? ――なんてな』
掴まれている間もライジングの切っ先は三又に別れ、さらに伸び続け、切り落とされた輪廻無道の腕3本を突き刺した。
刺された腕は一瞬で分解され、槍になる。そのまま輪廻無道へと飛んでいき、掴んでいた腕の1本に突き刺さり切断されてしまう。
『魔炎鋼竜なら知っとるからな……これで4本!』
『……ならばッ!』
ライジングを離し、再び距離を取る輪廻無道。
それに合わせ、俺もライジングを剣の形態へ戻す。
輪廻無道は落ちていた刀を拾い、両手で構え、振り上げる。
『この命、全てを掛けて……斬るッ』
輪廻無道の全身から魔力が溢れ、そのすべてが刀に集約される。
いや、周囲のエレメントも渦を巻き、それらも集まっているようだ。
どんどん刀は黒から闇に変色し、夜空に影を落とすかのようだ。
『我がニンポウ、最後の一振り――ヨミノタチ。貴様にくれてやるッ!』




