54.逃げろ
(ヤバい、ヤバい、ヤバい!)
俺は通路を全速力で走っていた。
ハナコの傷は治るだろうが、相手がヤバい。
魔王がどのような存在か、本で調べてもイマイチ分からなかったが――それを直接眼で見るだけで分かった。
勝てない――。
勝てる未来が見えない――。
「とにかく、ここから脱出しないと……」
「止まりなさい!」
前から守護者が迫ってくる。
錫杖を突き出し、土の矢を撃ってくる。
俺は左腕に魔力を込めガードしながら、全力で突っ込む。
「きゃあ!?」
すり抜け際に攻撃を左腕に受けた。
鎧袖ナックルが壊れてしまった……ゲートの中へ仕舞う。
振り返ると、追っ手が来ている気配がする。それも複数だ。
「確かこの辺のはず……白皇、一閃!」
俺は天井目掛けて斬撃を放つ。
斬撃は天井を切り裂き、不可視の結界も破る。
川の水を浴びながら、俺は地下水道へと出た。
「出口は――」
「おーい! ヨーイチ殿!」
水路の奥――俺達が来た方向から声がする。
その声には聞き覚えがある。
「ヤスオさんとヒナコさんか!」
「良かった……無事だったでゴザルか」
「間に合った見たいっすね」
良かった。
顔見知りで、しかもプロの忍者だ。これ以上頼もしい援軍は他にいるだろうか。
だから、俺は気が緩んだのだろう――。
「なんでここに……スライムカウントは終わったんです?」
「――御免ッ!」
突然ヤスオが刀で斬りかかってきた。
それを寸前で回避するも、横からの斬撃は避けられなかった。
「ニンポウ、カマイタチのマイっす」
「なっ!?」
左腕でガードするも、いきなりの事で腕の装甲に大きく傷が付いた。
そのせいで、中に何も無い空っぽの状態なのが見えてしまう。
『ダメージレベル中。内部魔力を使用し、復元します』
「本当に空っぽなんすね」
「い、いきなり何を……」
「申し訳ありませんヨーイチ殿――その身柄、抑えさせて頂きます」
水場のせいで思うように動けないのに、2人の息が揃った連携攻撃を剣と魔力でガードするも、必ずガードの薄い場所を狙われて斬撃を受けてしまう。
徐々に鎧に傷が増え、自己復元では追い付かなくなる――。
「あら、やっていますね」
俺の空けた穴からクロエと守護者が4人、姿を見せる。
「これも、お前らの、仕業か!」
「そうですよ――私が2人にお願いしたんです。任務をお願いしたいって……報酬はジロウさんの命――」
「ッ!」
「その話は!」
「街で偶然会ったように仕向けたのも……そう、貴方の事を詳しく問い質したり、テッカンさんの工房に鎧の詳細なデータを盗み見て貰ったり……色々頑張って貰いました」
「そうか。通りで、ロータスが俺の事を、知ってた訳だ!」
「ええ……父にマナの制御に貴方が必要だと虚偽の報告をしたのも私――全て、私の罪なのです」
「クソが!」
「さて――貴女達、行きなさい」
クロエが命令すると、錫杖を構えた守護者達が一斉に飛び上がり……ヤスオの攻撃によって、バランスを崩した俺の両腕と両脚を破壊した――。




