48.再び地下水道へ
俺は今、3つの依頼を受けている。
1つ目は『盗み出された星命の卵を取り返して欲しい』という司教ロータスの依頼。
2つ目は『ウロボロス教団へ行ってしまったアリシアを探す』という魔道ギルドのミルメルモからの依頼。
そして3つ目は――。
――――――――――
「いやぁありがたい。なにぶん夜中の仕事なので、やりたがる人が居ないんですよねぇ」
「まぁそうでしょうね……」
ここはコーディアの地下水道管理事務所。
ギルドで依頼を受けて、ここに詳細を聞きに行けと言われたのだ。
人当たりの良さそうなおじさんだ……少し良心が痛む。
「地下水道の……第7地区で流れてくるスライムの数をカウントしてくれ。夜じゃないと動きが活発化しないんだよ」
「へぇーそうなんですか」
「本当はこの第1地区の入り口から入って貰うんだけど遠いし、この合鍵があればどこからも入れるし出られるから、施錠はちゃんとしてね」
「ありがとうございます」
「あとコレ、地下水道の地図ね」
おじさんすいません。
この依頼……下請け冒険者に出します……。
俺は事務所を後にし、早速行動に移す。
まずは欲しかった地下水道の詳細な地図だ。その地図をざっくり模写した物を手元に置いておく。
受けた以上やらないとギルドに迷惑が掛かるので、依頼は王の爪以外の冒険者に受けて貰う。もちろん報酬は、ロータスから受け取った前金で上乗せしてある。
大体面倒な仕事というのは割に合わないから不人気な訳で……そこを解消すれば受けてくれる人も居るはずだ。
特に今の街中は外部の冒険者も多い。あまり時間は無いが……。
「おや、その鎧は――ヨーイチ殿でゴザルか」
「うん? そのゴザル口調は……ヤスオさん!」
声を掛けて来たのは黒髪エルフ耳の青年だ。
前に見た時は忍者衣装だったが、今はその辺の町人Aみたいな簡素な格好だ。
隣には同じように黒髪ロングな若いエルフの女性がいる。こちらも似たような格好だ。
「お久しぶりです。あっ、こちらは同僚のヒナコ殿です」
「どうもっす。一応、化け物退治の時に参加した1人です」
「という事は彼女も忍者か……任務中じゃないの?」
「……それが今は暇を頂いてまして」
近場の喫茶店で話を聞く。
この間の鉱山の一件から頭領のジロウからは解散を宣言され、各人冒険者として生きる道を選んだという。
「本当は陰ながら見守ることも考えたでゴザル。しかし武器コンテストに出場したという情報を最後に、足跡が途絶えたでゴザル……」
「まぁ、元気にやってるんじゃないっすか」
「ふーん……実はハナコも冒険者やってるんだ。王の爪で一緒にパーティ組んだりしてるよ」
「おぉハナコ殿もこの街に来ているでゴザルか」
「あの子、飽きっぽくて気分屋で……大変でしょ」
「まぁ、あはは――」
ウェイトレスさんが持ってきてくれたお茶を飲みながら、ふと思い付く。
「おっそうだ。ヤスオさん達、ちょっと振りたい仕事があるんだけど……」
地下水道の地図と合鍵を渡す。
「――ふむ。この街の地下水道はそんなスライムが……いいでしょう。仕事を受けようにも依頼が無くて困っていた所でゴザル」
「夜中にここへ行けばいいのか。ニン者は夜目が効くから、もってこいの仕事っすね」
「数え終わったらそれをこの板に書いて、近くの管理事務所に持って行って報酬を貰ってくれ。あ、代理で来たってのは忘れないで」
「お任せあれでゴザル」
「でもいいんすか? 報酬さらに上乗せで貰っても」
「受けたはいいけど絶対外せない用事が出来ちゃって……受けた以上は断ると信用問題になるし……やむなく」
もっともらしい理由だが、一応嘘は言ってない……受けた順番が違う所は嘘だけど。
――――――――――
その日の夜――俺は町外れの遺跡に居た。
ここは前にアムル達と一緒に強盗達の……死体を見つけた場所だ。ここには地下水道への入り口があるのだ。
「お待たせなのじゃ」
「よぉ」
朝から別行動を取っていたハナコが合流した。
今日はバッチシ忍者スタイルで、見た目も15歳の身体だ。
「地図は手に入れたのじゃ?」
「もちろん。頼んでた手紙は出してくれたか?」
「バッチシなのじゃ! ちゃんと郵便屋に持って行ったのじゃ」
実は俺もアリシア先輩に習い、ステラとルビィに手紙を出したのだ。
直接頼めば、もちろん助けてくれるだろう。
しかしステラが動けば、その話はギルドマスターに話が行き、ウロボロス教団に先輩が絡んでいる事を隠していたミルメルモも責任を追求されるだろう。
最悪投獄や拷問なんてことになったら、いくらなんでも可哀想だ。
ルビィは――なんとなく隠し事が苦手そうだし。そこからステラが勘付くかもしれない。
そこで、俺は2人に【もし俺が戻らなかったら地下水道の第11地区へ捜索に来て欲しい――】という手紙を夕方に配達するようハナコに頼んで郵便屋に持って行って貰ったのだ。
俺が戻るのが間に合えば、郵便屋に行って手紙を回収すればいい……完璧な作戦だ。
ゴーン、ゴーン――。
「鐘が……」
「来なかったか――うん?」
「はぁ、はぁ……」
遠くから腰に付けたランタンが揺れているのが見える。
それは見覚えのある黒いローブ――ではなく、長袖のTシャツのような服と、動きやすい短パン。さらに背中にリュックのような革袋を背負い――息を切らして走っていた。
「はぁ、はぁ、着き、ました……はぁ」
「お疲れ様。決心したんだね」
「は、はい……ただ、ここ。凄く遠くて――ギルドからグルっと半周は……」
「あっ」
俺もハナコも街の家や壁なんて乗り越えて来れるけど、普通はかなり遠いのを忘れていた。
「ギルド集合にすれば良かった……」
「よく来たのじゃ、歓迎するぞ」
「ハナコちゃん、だよね? なんか雰囲気が違うような」
「これがアタシの本領発揮スタイル。ニン者じゃ!」
「ニンジャジャ?」
「ニン者! これはクーロン王国の隠れ里の――」
「長くなるから後で。じゃあ行こうかミルメルモちゃん」
「はい。よろしくお願いします――8号さん」
しまった。
俺の事を説明するの忘れてたけど――まぁいいか。
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