46.探そうぜマナストーン
予想外の内容に俺はしばらく言葉を失っていたが、ロータスはそんな俺の事はお構いなしに話を進める。
「依頼のことはもちろん他言無用。しかし、教会や卵のことを伏せるなら1人くらいなら手伝いを頼んでも構わんが……ステラ君とジェイド君は辞めてくれ」
いきなり出てきた2人の名前に、思わず失った言葉が戻ってきた。
「何でです?」
「あの子らは、王の爪のギルドマスターであるヨド殿の子供であるからだ……余計な探りを入れられ、事がヨド殿に露見する可能性が高い」
いつの間にか俺の横へ来ていたクロエがコソッと。
「お父様、この前のギルドマスター会議でヨドさんに怒られて……ちょっと怖がっているんです」
「こほん――何か、他に質問はあるか?」
「星命の卵って厳重封印されてるって聞きましたけど……犯人はどうやって盗み出したんです? あと、なんで犯人が魔道ギルドに居るって分かったんですか」
「それは……」
「私が説明します。少々お恥ずかしい話になるのですが――」
鉱山やダンジョン、森の中で発見された星命の卵は全て国の研究所で検査をした後に、教会地下の安置所へ送られる。その際に、1つ1つ封印処置を行うらしい。
部屋そのものは魔法錠でカギを掛け、マテリアル鋼製の箱に入れ、そこにもカギを掛けて棚に収納しているという。
犯人は地下安置所のさらに地下からトンネルを掘り進め、安置所の床から内部へ侵入。色がそっくりな箱を2つ用意して入れ替えた。
そしてしばらくして――あの事件が起きたのだ。
俺とステラとジェイドが関わった、商人ドルドによる王の爪メンバーに星命の獣を使った襲撃事件。
事が事なのでギルマスからも口止めをされているが、教会や王都内ではかなりの大事件だったらしい事をステラから聞いた。
「事件が起きて安置所を騎士団の方が立ち会いで検査する前日に、入れ替えに気付きまして……」
「ひとまず、そっくりなレプリカを用意して数だけ合わせた」
「なんと杜撰な……」
そんな事で調査をかいくぐれるのはどうなのだろうか。
「お恥ずかしい限りです。それで、そのトンネルを発見して調べた結果――恐らく鉱山喰いのような魔道生物によるものと判明しました。もちろん自然発生したものではありません」
「そんな特殊な魔道生物を精製できるのは、国の研究所を除けば魔道ギルドしかありえんという話だ」
「なるほど――つまり犯人はまだ1つ持っている訳ですね」
「そうなる。次の犯行に使われる前に、見つけねばならぬ」
一応筋は通っているのかな。
正直大金は魅力的だが、危険な仕事ではある。
しかし、あんな化け物が街中で暴れた所を想像し――俺の覚悟は決まった。
「分かりました。なんとか探してみます」
「うむ。最悪犯人は見つからなくてもいい……卵の回収が優先だ」
「お気をつけて下さい」
――――――――――――
受けてから思ったのだが、実はこの依頼。
犯人を見つけなくていいのなら良い方法があるのだ。
『魔力センサーを展開します……強力なマナは感知できません』
まずこの街の地図を買い、魔道ギルドの場所をチェックする。
複数あるギルドを順番に外から魔力センサーで探すという作業を行っている。
「ここも反応無し……っと」
「なぁにしてるんじゃ」
「ハナコか。いや、えっとその――」
どっかに散歩に行っていたハナコが戻ってきた。
時刻は既に夕方――あと2つくらいギルドを探したら俺も帰るか。
「ちょっとした依頼受けてて……そうだ。ハナコも手伝うか?」
「どんな依頼なのじゃ」
「モノ探しいうか犯人捜しというか――」
最終的には、建物に侵入することになるし、やはり忍者であるハナコの協力は欲しい。
それとなく重要な部分は隠しながら、盗みを働いた犯人が魔道ギルドに隠れているのを探す部分だけを喋った。
「ほぉ犯人探しとな……」
「それで犯人のいるギルドが分かれば、ハナコにも一緒に来て欲しいんだ。忍者ってそういうの得意だろ?」
「もちろん潜入などは得意中の得意じゃ」
「それに前金貰ってるし、後で分け前あげるからさ」
「ほぉ――仕方が無いのぉ。兄ちゃんと私の仲だし、少しは手伝ってやるのじゃ」
早速探索を再開する。
昼からずっと外周から探し始め、今度のは魔道ギルドでも2番目に大きな建物と敷地だ。
敷地の外回りをグルっと1周したが特に反応無し。しかし建物が敷地の真ん中にある為、ニーアのセンサー範囲(約200m)を考えると中へ入る必要がある。
ちなみにニーアの機能が向上し、もし相手が魔力感知を逃れる場所にブツを隠していても、その感知回避そのものを検出できる。
ただし50mまで範囲が激減する上に、俺が常時センサーを注視する必要があるので……不意打ちに使うのは厳しい。
「ではアタシの出番じゃな――しかしアタシ1人なら変化のジツで化けることも可能じゃが……気配消しの結界マントなら……でもこれもアタシの分しかないし」
「一応俺がこの間着ていたのならあるけど」
「それは気休め程度の効果しかない安物じゃろ」
「むぅ――というか、この方法でいいんじゃないかな」
「……おぉ、そうじゃったな」
俺の中へとハナコを入れ、ついでに搭乗登録もしておく。
『搭乗者ハナコを新規登録――成功。操作をハナコへ移行しますか?』
(もちろんだ)
「おー前に入った時は出てこなったウネウネが……あひゃっ、くすぐったいのじゃ! ちょ、そんな所まで巻き付いて――」
『もう薄暗いし、少し静かにしてくれ!』
「兄ちゃんがスケベなのが悪いのじゃ!」
『――さーて、じゃあちゃちゃっと終わらせようか』
「後で追加料金貰うのじゃ……我が身を、己が思うままの姿と成れ――ゲートン=ヘンゲヅキ」
――――――――――――
「結局空振りかー」
変化で俺の姿を魔法使いに変え、正面から堂々と建物の周りをチェックしたのだが――怪しい反応は無かった。
となれば最後はこの街最大の魔道ギルドなんだが……こちらは街中には無く郊外に拠点がある為、非常に面倒だ。
なんせ他に建物も通行人も居ないので、部外者が敷地や建物周りをウロウロなんてしようモノなら目立ってしょうがない。
「まぁハナコの変化あれば多分いけるだろうし……」
「――やぁヨーイチ。君は酒場でお早い夕食かな?」
「ヨーイチ君。ウチらに何か言うことあるんやないかな?」
あっ忘れてた。
「や、やぁステラにルビィじゃないか。勝負と仕事はどうだったんだ?」
「勝負は現役冒険者の私が負けるはずもない……そのせいで張り切り過ぎて仕事も捗ったよ」
「ウチの方が綺麗に耕せてたけど、まぁ勝負は勝負やからな。負けは認めるよ――誰かさんが居らん分もいっぱい耕せれたからなぁ」
「――すいません」
素直に謝り、夕食と酒代は全部俺持ちとなった。
……前金貰ってて助かった。
――――――――――――
次の日。
家出る時は天気も快晴で雲ひとつ無かったのに……何故かこの魔道ギルド【テイルズナイト】の周辺に来ると曇り空になる。
予想通り広い敷地が少し丘のようになっていて古いお城みたいな建物が立っている。侵入は背後に森もあるし崖から登るしかないように思える。
「辞めといた方が身の為じゃ。あんなあからさまに登って下さいって言わんばかりの崖、監視が無い訳が無かろう」
『だよなぁ……』
と、建物近場の木の陰で思案していると――。
「きゃああああ!?」
魔道ギルドとは少し離れた森の中から悲鳴が聞こえた。
『ハナコ!』
「分かっておる」
俺達が急行すると、三角帽子を被った魔女って感じの格好をした中学2年生くらいの女の子が、巨大スライムに追い掛け回されていた。
『もしかしてこの間の生き残りか!?』
よくよく思い起こせば、ここは例の水場とはそれなりに近いのだ。
「この間は不意を突かれたが、今度はそうはいかんぞ」
ハナコは俺の胸元を解放し、鍛冶屋通りで買った刀によく似た形状のショートソードを取り出す。
「ニンポウ、カマイタチのマイ」
逆手に構えた刀に風のエレメントを纏わせ、斜めに斬る。
すると不可視の刃が飛んで行き――スライムの背中を斬り裂く。
もちろん肉体を少し削ったに過ぎないが、スライムは足?を止めてこちら側に振り向いたようだ。
「きゃああ――あれ?」
もう追って来ないスライムに女の子が首を傾げている。
「お前! 危ないからさっさと逃げるのじゃ!」
「だ、誰なの!?」
『あ、変化使ってないや』
スライムは身体からいくつもの触手をこちらに飛ばしてくる。
「面倒な攻撃を――白皇剣!」
ハナコはゲートから俺の剣を取り出し、自分のショートソードは右手に、剣は左手に持つ。
『おお、二刀流!』
「――ニンポウ、カゲムシャのジツ!」
そう唱えると、俺とそっくりな見た目の鎧が出現する。
その偽俺も同じように二刀流だ。
「喰らうがいい。ニンポウ、カマイタチのマイ!」
両者が両手で、交互に剣を振るい風の刃を飛ばす。
先ほどのは違い、連続でいくつもの刃を飛ばす。
「――!?」
触手はごとスライム本体の身体まで――斬る。斬る。斬りまくる。
見る見る内にスライムの体積は減っていき、3つあるコアが露出した。
「今じゃ! 火よ爆ぜろ――カートン=バク!」
武器を投げ捨て、即座に印を構え――スライムのコア部分へ爆発を起こす。
コアは全て破壊され、スライムの身体も辺りに飛び散った。
そりゃもう派手に飛び散った。
「ぶっ」
「きゃあ!?」
俺達と女の子は、全身がスライムまみれになった。
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