35.武器コンテスト
『さぁ今年も始まりましたエルダー=ソー=アルバート=シンディア81世陛下直々主催の第20回王都武器コンテスト! その予選を開催致します!』
会場から盛大な拍手が起こるが、それでも観客席はまだ空きがある感じだ。
「まだ予選やからなー。熱心な観客以外は明日が本番や」
『今年も司会進行はこのオレ! マスクドスミスがやらせて頂きます!』
闘技場は本来の用途であれば試合用のステージが中央にあるが、今はMCのマスクドスミスが拡声魔道具で喋っている。
さらにステージ場下には長机があり、3人の男女が椅子に座っている。恐らく審査員だろう。
『では簡単に予選の内容を発表します。今から自慢の作品を持った職人、またはモデルの方が登場します。前もって詳細な情報を書いたモノは審査員のお手元にあります。職人の皆さんは、制限時間内に作品のアピールをして下さい』
『では今日の審査をする最高の審査員の方々をご紹介致します。その堅物さが有名な王国騎士団の副団長ウォルコット殿!』
「どうぞよろしくお願いします……堅物?」
『商人ギルドの中でも売上上位のママード商店の女店主、ママード殿!』
「去年は3位でした。冒険者さん向けの色んなアクセサリーや食材を取り揃えていますママード商店をよろしくね!」
『最後は毎年審査員としてご参加頂いている、貴族でありながら武具マニアの異名を持つこの方、オリオン=ハワード様!』
「んー、今年も良い作品がたくさん見れる事を期待しているよ。特に今回は20回きぃねん! 特に素晴らしいモノならワタクシが買いたいくらいだ!」
『コンテスト開催中の売買の取引は禁止ですよー。では、まずエントリーナンバー、ワン! 東のドーティアの鍛冶工房よりやってきた――』
――――――――
俺達は控え室になっている部屋で出番を待っているのだが――何故か俺の身体に色々な装飾品が取り付けられている。
「よし。後は審査員の前で、格好良く剣を抜いて構えてくれるだけでいい」
「あの、これはどういう……」
「モデルやモデル。普段は職人本人が担いだり、モデル役の冒険者雇ったりするけど……やっぱこの剣はヨーイチ君に合わせてるからな! ええ格好にせんとな!」
「いや全く初耳なんだけど」
「言ってなかったっけ? まぁそういう事や」
(クソー、前持って教えてくれていたら凄いカッコイイポーズ考えたのにさ!)
『……それが理由では?』
「え、何?」
『なんでもありません』
そうこうしている間に順番が回ってきたので、ステージへ向かう通路を2人と共に歩いて行くと、正面から麻布に包まれた大きな何かを台車で運ぶドワーフがやってきた。
「よぉ、テッカンじゃねーか」
「ゴッチンか」
確か前に聞いた、毎年テッカンさんと優勝を争っているドワーフの鍛冶職人だ。
白い髪と髭が立派なテッカンとは対照的に、頭はツルツルである。髭は三日月のように尖っている。
「風の噂で借金こさえて嫁さんに逃げられて、コンテストほっぽり出して田舎に帰ったと聞いてたが……腰抜けなりにプライドはあったようじゃな」
「ふんッ。ちょっと素材の調達に旅行いっとっただけじゃよ。お前こそ、不出来な品を作ってないだろうな?」
「ワシはあんな茶番みたいな予選に興味は無い! それじゃーの」
台車を押してそのまま控え室へと入っていくゴッチン。
「話に聞いとったのより、仲良さそうやな」
「どこがだ。それより行くぞ」
『さぁ最後の登場だ。4回連続優勝、今年の優勝で殿堂入りを果たせるか! エントリーナンバー72! 南のコーディア出身のテッカン殿だ!!』
ここでの出来事は割愛するが、俺達は無事予選を突破したのだ。
いや本当に剣を抜いて構えるだけで出番終わったし……。
――――――――
「「「かんぱーい!」」」
予選が終わったその夜。
俺達は宿屋と提携している酒場で予選お疲れ様会を開いた。
「いやぁ、特に問題なく終わったのぉ」
「誰かさんの落し物のせいでヒヤヒヤしたけどなー。まぁええやろ!」
周りのテーブルにもコンテストに出場していたであろう職人らしき客もいて、非常に騒がしい店内だ。
「しかしあの神官さんには感謝やなー。眼も見えないのに、よく見つけれたんやな」
「えっ、そうだったの」
「あの服は身体に不自由ある神官が着る特別な奴やで。神より試練を多く賜った者は強い信仰心と共に奇跡を授かるとかなんとか」
「へー」
だから街中でも杖を付いて歩いていたのか……本当によく見つけれたな。
この時の俺は、その程度の事だと思っていた――。
「さぁ、じゃんじゃん飲むでー!」




