33.のじゃロリ猫耳エルフ忍者
周囲の森の木よりも、スライムの全長はさらに大きかった。
「また巨大生物かよ!」
「あっ、ヨーイチ! スライムの中に……」
「ん?」
そう言われ左の親指と人差し指で丸を作り、魔力レンズを作り出す。
「なんか小さい女の子がいる……黒い衣装の……でもスライムに飲まれてるって事はもう――」
『まだ彼女の魔力は肉体から離れていません。心臓も動いているようです』
「よく分かんないけど、生きてるらしい!」
「そうか……で、どうしようか」
「そりゃ――こうやる!」
鎧袖ナックルへ魔力を込める。今は土鎧のエレメントは無いが、それでもコレで殴ればその辺の魔物も粉砕できるくらいの威力だ。
「鎧袖、ナッコォォォ!」
巨大スライムの頭部分へ飛び上がり、右腕をコアに向かって突き出した。
しかし右腕はスライムの身体に深く突き刺さるだけで……それ以上は何も起こらなかった。
『警告。こちらの魔力を吸収されています』
「マジかよ!」
しかし腕を引き抜こうと踏ん張ろうにもスライムの体表はヌルヌルしてるし、力を入れれば体内にめり込んで取り込まれてしまう。
「――」
特に鳴き声も発しないが、スライムの肉体は徐々に俺の腕から鎧へと浸食していた。
「しょうがない!」
左手でゲートを開き、中に腕ごと突っ込むと目的のアイテムを取り出す。手首には赤や青の宝石の付いたアクセサリーを付け、さらに魔法の呪符を握った。
後は呪符に魔力を入れて簡単な呪文を唱えるだけでいい。後は手首のアクセサリーが火のエレメントに干渉してくれるらしい。
俺は左腕もスライムの中に突っ込み、呪文を唱える。
「火よ、爆ぜろ! ファイアーボール!」
スライムの体内で火球が生み出され、爆発を起こす。
ボンっ――という音と共に、ゼリー状の身体の一部が爆散した。
「――!」
「助かったー」
ひとまず俺自身は爆発のおかげで自由になれた。
その辺りにゼリー状の肉片が飛び散っているが、スライム本人は特に気にせず元通りに修復した。
『先程のスライムの肉体を解析した結果です。あらゆる衝撃を分散して吸収し、取り込んだ生物から魔力を摂取するようです。あの肉体には外気と同じ成分が含まれており、肺をあの粘液で満たせば呼吸もできるようです』
「便利なスライムだな」
『自然的なモノである確率は限りなくゼロです』
「大丈夫かヨーイチ!」
「俺は大丈夫。左手も治ったし」
少し焦げていた左手も修復できた。どうしたものかと考えていたが――。
巨大スライムの体表からたくさんの触手が飛び出してきた。
「危ね!」
俺達を取り込もうとしてる訳か。
(ニーア。奴の魔力吸収速度は早いのか!)
『それ程ではありません。毎秒10マナ程度です』
(……よく分からんけど、あんまり早くないのなら)
俺は再び鎧袖ナックルに魔力を込める。
次は回転を加えるドリルナックルだが、それでもコアに辿り着く前に魔力切れを起こすだろう。
「ジェイド! 女の子が飛び出したら、頼む!」
「分かった! まかせとけ!」
少し後方へ飛び、助走を付ける。
全力で走りながら右腕と、さらに全身にも回転する魔力を右回りに走らせる。
「超ドリルタックル!!」
俺は全身をドリルのように回転させ、一直線にコアを狙う。
「――!!」
スライムの触手を弾き飛ばし、一気にゼリー状の体内へと潜った。
足から魔力を放出させどんどん掘り進め――1つ目のコアを破壊!
(もう1つ……ッ!?)
スライムは器用にも自分の体内で左回転の渦を作り出し、俺にぶつけてきた。
(回転が……)
コアの目の前まで来たが回転は止まり、さらに身動きが取れずどんどん魔力が吸われ――。
「炎よ、爆ぜろ。ファイアーボール」
鎧の中にまでスライムは浸食されなかった為、呪文を唱えれた。
俺は鎧の中に入れていた複数の呪符を起動した――。
ボォンッ!!
俺の鎧の内部で火球は爆発し、右腕はその勢いで吹っ飛び――コアに命中した。
「――!?」
巨大スライムは一瞬膨張し、そして爆散したのだった――。
――――――――――――
「うーん」
爆散するスライムから落ちた女の子はジェイドにしっかり助けられ、俺は辺りに散らばった粘液の中から右腕を回収した。後で洗おう。
「――ゲホッ、ゲホッ」
見た目が10歳くらいの女の子は黒と紫を基調とする民族衣装を着ていた。三角帽子は脱げてしまい、その黒髪が露わに――。
「この子は、獣人か!?」
頭に可愛らしい猫耳が付いていたのだ。
しかしこの服装。どこかで見た事あるような。
「大丈夫か!?」
咳き込む女の子の背中を擦りながら肺の中の粘液の排出を促す。
「ゲホッ……は゛い」
まだちょっとキツそうだが、意識は取り戻したようだ。
「ありがどう。まさか池の中にスライムが居るとは……アタシも油断したよ」
と、ここで俺らの視線が女の子の頭にある事に気付くと、慌てたように三角帽子を被る。
「あわわ――見た?」
「見た」
「君、獣人? エルフっぽい耳もあるみたいだけど」
「へ、変化のジツが解けかけてる――こほん。お主ら、ちょっとそこで話があるのじゃ」
女の子に促されるまま俺達は休憩所へと入り、ひとまず焚き火を起こした。
少し気まずそうな幼い顔が明かりに照らされる。
「えーっと、何から話せば良いか……」
「その前に。ここに君と似た服装の女の人来なかった? 巨大スライム討伐クエスト受けたらしいんだけど、行方不明でさ」
「……あぁ、そうそう。その人ならここへ来た後にどっかへ――」
「どう考えても君でしょ」
「そうなの!?」
「ギクッ」
「さっき変化とかどうとか言ってたし」
「ギクッ……しょうがない。ならば話すしかないな」
女の子がポツリと、話し始めた。
「アタシはハナコ。ここより西のクーロン国よりやってきたニン者じゃ」
「――あぁ、ハナコってあの時」
確か巨大なパンダを出してクイーンマインの攻撃から俺達を守ってくれた女忍者。
「でもギルドの時も顔が違ったような」
「一応抜けニンじゃからな。見つからぬよう、変化のジツで姿形を変えておったのじゃ――今はスライムに魔力吸われてるから元の姿じゃが」
「確かヤスオさんから聞いた話によると、忍者って元々エルフって聞いたけど」
「かつてエルフ達はニン者として生きる事を決めた時、伴侶を外の世界で見つける事にしたのじゃ」
強い人間の戦士や冒険者、獣人やオークの伴侶を持ったエルフも居たという。
「強い遺伝子を持って最強のニン者として売り出す為じゃな――アタシの一族は獅子の獣人と交わったそうだ」
「……猫じゃないんだ」
「あん? ……そして稀に先祖の血が濃くなる子供が産まれる事がある。それがアタシ。この耳も一族の中ではお婆ちゃんかアタシくらいしか生えてないぞ」
「普段から見た目が変わってたのは耳を隠す為か?」
「そうだ。ニン者の里でもアタシは珍しい見た目をしているから変化のジツであの姿になっていた――この事は一族だけの秘密なのじゃ」
「……で、オレらはその秘密知っちゃったけど」
「本来なら記憶を喪失させるジツを使いたい所じゃが、魔力が足りないし――時間が経つと狙った記憶は消せないしな……という事で、この事は黙ってて下さい!」
その場で土下座し、小さく丸くなるハナコ。耳も垂れ下がる。よく見たらお尻から尻尾も見えていた。
「まぁ女の子から頼まれちゃオレも断らない理由はないけど」
「そうだなー。でも俺、この子に公衆の面前で魔物呼ばわりされたしなー。フリー冒険者が勝手に依頼受けちゃったし、冒険者協会に通報しないとなー」
少し意地悪をしてみる。
ハナコはビクッとし、こちらを見上げた。
「あ、あの時はすまなかった……金が入ったら奢ってくれた飯代も返すから……だから通報は……」
プルプルと震えながら涙目になる猫耳の女の子――可愛いが、もちろん俺はそこまで外道ではない。
「分かってるって。俺も真っ当な身体じゃないのは事実だしな」
と言いながら猫耳を撫でたり、背中を撫でたりする。
「にゃっ!?」
「うーむ、猫耳少女――イイな!」
「あ、ずりぃ。オレも撫でさせてくれよ」
「ア、アタシは猫じゃないのじゃ!!」
――――――――――――
「この度は、まことに申し訳ございませんでした」
翌朝。
俺らに連れられて、ハナコはギルドマスターの前で再び頭を下げた。
「まぁ無事だったんなら言う事は何もねぇ。今後、間違えるんじゃねぇぞ。ジェイド。俺は王都へ行くから、ステラにもそう言っといてくれ」
「分かったよ、伝えとく」
「怒られなくて良かったのじゃ……」
下の酒場でお疲れ様会を開いた俺とハナコ。
ハナコの今の見た目は15歳くらいである。大人の姿だと色々怒られそうなので――とジェイド発案。
昨日の巨大スライム討伐の報酬とスライムの死体を売った金が割とまとまった金額になったので、それを3人で均等割りにする事になったのだ。
ちなみにここはハナコの奢りになった。
「で、これからハナコはどうするの?」
「ひとまずはフリーでも受けれる仕事をしつつ、入れるギルド探すかなぁ」
相変わらずここのギルドの新規登録は停止中だ。
ハナコはサラダをムシャムシャ食べながらボヤいた。
「そういえば抜け忍って言ってたけど、やっぱり追っ手が来たりするの?」
「昔ならすぐに里に連絡がいって処刑部隊が来たりするけど。テーマパーク化する時に処刑部隊の人らも……里から出ちゃったのじゃ……」
「世知辛い……」
「あのバカ委員長が追っ手を差し向ける可能性も無くは無いけど。まぁバカだからそんな頭は無い無い」
「ふーん……ハナコさ。俺とパーティ組まないか?」
「ぱーひー?」
焼き魚を頬張りながら聞き返してくる。
「パーティ組めばフリー冒険者も正規のメンバーと同じ依頼に参加できるし、何よりお互いに秘密知ってる仲だし……色々気楽に出来そうだと思うんだ」
「アタシとしては断る理由もないけど……ホントにいいの?」
「ハナコの忍術が凄いの知ってるし、俺も最近結構実力不足を痛感しててさ」
結局は俺自身はそこまで強い訳じゃない。
俺を着てくれる人が居ないと、本領を発揮できないのだ。
その辺の雑魚魔物なら問題ないけど……今後を考えたら事情を知って一緒に戦ってくれる人は多い方が良いはずだ。
「アタシのニンジツ、凄かった?」
「そりゃもう」
「――ふふーん。そうかそうかアタシのニンジツが凄かったのじゃな! ならば仕方が無い、アタシの力を貸してくれようぞ!」
こうしてハナコと一緒のパーティを組む事となった。
決してたまに耳とか撫でたいからではない。
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