↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/80

3.あれから7年後


 起床というのもおかしいが、ともかく目を覚ました。

 

 目の前に15歳前後だろうか――俺の手入れを行っている少女の様子が映った。

 亜麻色のポニーテールに三角巾を巻いている。簡素なエプロンを掛け、布で拭いて磨いている。


 見覚えがある顔だ――もしかして……。

 

「――よし。最後の掃除終わりっと」

 

(最後?)

 

「うーんっ。明日お引越しだから他の荷物も準備しないと」

 

 見える範囲にあった彫刻には布のようなものが掛けられ、絵画も外され梱包されていた。

 どうやらここにある美術品はどこかへ移動になるのだろう。元々古そうな美術館だし、改築か取り壊しか――。

 

「アムル……おぉ綺麗になったな」


(やっぱりアムルか……爺さんもフケたなぁ)

 

「うん。この美術館も取り壊しになるんだね……」

「あぁ……お前も新しい王立美術館へ志望を出したんだってな。王から賜った鎧、頼んだぞ」


(しかしそんなに時間経ってるとは思わなかった)


 前に寝て起きた時は半年以上経っていた事もあったので、そこまで驚かない――いや、結構びっくりした。

 今回は3年くらい寝ていた事に……。

 

「任せてお爺ちゃん」

「しかし今日は一段と鎧が輝いて見えるな」

「うんっ。なんだか鎧さんも喜んでいる気がする」

 

(……まぁ汚いよりは良いけど)

 

 当然俺の声は聞こえない2人であったが、だが約7年の付き合いもある……寝ていた時間の方が多いけどね。

 娘はともかく爺さんとはもう会うこともないだろう。

 

「さぁ、明日も早いからもう帰りなさい」

「後片付けしたら帰るね」

 

 

 ――そして、事件は起こった。

 


 ――――――――――――

 

 

『なんだ貴様らは!?』

 

 爺さんの大声と共にガラスのようなモノが割れる音が館内へ響き渡る。

 複数の大人と子供のような足音が聞こえ、それはどんどん近づいて――。

 

「ッ!」

 

 扉を開けて駆け込んできたのは、遅くまで掃除でもしてたのかエプロン姿のアムルと、複数の盗賊達だった。

 

「ここだな。お前ら、手早くブツを運び出せ! ゴブリン共は目撃者を消せ」

「兄貴、まだ若いんだしこのまま連れ帰っても……」

「スマートに盗み出す作戦はあのジジイのせいでおじゃんだ。さっきの声を聞きつけて住民か憲兵が寄って……おらっ、早く運び出せ」

「兄貴。梱包しててどれかよく分かりません!」

「だったらでかいの以外全部だ。余ったらどっかの闇市で売って金にすればいい」

「へい兄貴」

「後は、そのデカブツだな」

「ダメっ!!」

 

 アムルは俺を護るように両手を広げて立ち塞がる。

 

(バカッ! さっさと逃げろよ!)

 

「どの道、俺らは見られたんだ……ここで始末していく。さっきのジジイみたいにな」

 

 ニヤリと笑いながら、血がべったりと付いたナイフを見せつけてくる盗賊の親分。

 

「ダメ……これは勇者様の、お爺ちゃんが大切にしていた――」

「うるせぇッ!!」

 

 親分がその太い腕を振るい、こちらへ吹き飛ぶアムル。

 

「おめぇもジジイと同じ場所へ送ってやるよ」

「キィィッッ!!」

 

 4匹のゴブリン達がそれぞれの獲物を構えると、そのままアムルへ飛びかかってきた。

 

(止め、やめろぉッ!!)

 

 そんな俺の声は――当然、誰にも届かなかった。

 

 指先1つ曲げられず、目の前で少女が串刺しにされる所を――ただ見ているしかなかった。

 

「が、はっぁ……」

 

 それでも即死とはいかなかったのか、アムルは最後の力を振り絞り、俺の足元へ這いずってくる。

 

「ゆ、うしゃ様……」

「キシャァァ!」

 

 ゴブリンがさらなる追い打ちを掛け、アムルは背中から刺され、そのままの勢いで俺を巻き込んで倒れこむのであった。

 

「あっ鎧が」

 

「ゴブリン共! それは依頼主が絶対いるって言ってた奴だぞ! 薄汚ねぇ血なんかで汚すんじゃねぇぞ!」

「キィ……」

「下水通る時に洗うか――とにかく運びだぜ。おらっ、油の用意しろ」

 

 作業に没頭する余り、盗賊達は気付いていなかった。

 バラバラになった白い鎧の胴体から淡い光が漏れ、触手のようなものがアムルを包み込みそのまま飲み込んでいく様子を。

 

 そして鎧は、“動いた”のだ。


ここまで読んで下さってありがとう! Thank You!

ポイントが入ると私が喜びます。ありがとう! Thank You!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。