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  作者: たかはしえりか
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43(壮太の手紙)

えり子、僕が初めて君の手を握った時の事を覚えていますか?

お正月に君の家で双六をした時です。

ハイタッチをしに来た君の手を、僕は無意識に握ってしまったのです。

想像していた以上に柔らかくて温かい手でした。

僕は健の気持ちがよくわかりました。

それからも僕は君に触れる事で、健から聞かされた話を追体験していったのです。

話を元に戻します。

キャッチボールもバッティングも健が納得するまで続けられ、夜遅くなって健の母親が迎えに来る事がしばしばありました。

「オーケー、今日はここまでにしよう」  

というのが、練習終了の決まり文句で、それを聞くといつも切なくなりました。

最後の練習は中学を卒業した日の夜でした。

東京の有名校へ進学する健の為に激励会と送別会が催された為かなり遅くなりましたが、健はいつもと同じメニューをきちんとこなしました。

感傷的になっている僕に反して、健の心はもう東京へ飛んでいました。

翌日、僕は見送りに行きませんでした。

大勢の見送り客がごった返し、話す機会などないと思ったからです。

僕は健が最後にくれたグローブをはめて、ずっと部屋で泣いていました。

それから間もなく倉庫は取り壊されて駐車場になり、二度と健と練習する事はありませんでした。

高校の野球部でも健はすぐに頭角を現し、一年の秋から正捕手の座につきました。

三年間、殆ど鳥取に戻らず、たまに来ても一泊だけして、いつも殆ど話が出来ないまま帰ってしまいました。

電話も数えるほどしかありませんでした。

健が東京でたくさんの人と出会い、ますます自分の世界を広げて行く中で、僕の影が薄くなるのは当然の事でした。

健にとって僕は数多い田舎の友人の一人に過ぎなかったのだと思います。

それでも僕は健と同じ大学に入る事だけを目標に、それだけを心の拠り所にして高校生活を送りました。

だから二人そろって合格とわかった時は飛び上がらんばかりに嬉しかったです。

健もとても喜んでくれました。

野球部の練習が忙しく、期待していたほどには会えませんでしたが、週に何度かは同じ教室で講義を受け、話をする事が出来ました。

逞しさが増し、大人の男の顔になっても、健の中身は前とちっとも変わっていませんでした。

悩みを打ち明け

「こんな事を話せるのは壮太だけだ」

と言ってくれた時はちょっと泣きそうになったくらいです。


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