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  作者: たかはしえりか
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再会したのは卒業してすぐの春だった。

その頃の私は英語に燃えていた。

四年の時に取った英会話の授業で、アメリカ人講師のエイプリル先生と親しくなったのがきっかけだった。

彼女の好意で、卒業後も土曜朝イチの会話クラスに参加させてもらえる事になった。

初めての授業の日、私は在学中よりも早起きして八時半過ぎに大学に着いた。

教室は七号館一階の階段脇で、偶然四年前の入学初講義と同じ所だった。

甘酸っぱい懐かしさをおぼえた私は、暫し一人で感傷に浸ろうと、大きく息を吸い込んでドアを開けた。

そこには先客がいた。

それが壮太だった。

髪は少し短くなっていたが、銀縁メガネと長袖シャツは以前のままだった。

一瞬驚いたように顔を上げた後、彼はまたすぐに読みかけの本に視線を戻した。

私は廊下側の一番後ろの席にジャケットを置いて、一旦教室を出た。

思いがけない再会に少し戸惑いを感じていた。

ラウンジで時間を潰して、九時ちょっと前に戻った。

席はほぼ埋まっていた。

ほどなくしてエイプリル先生がやって来て、各自十個の英文で自己紹介文を作り、前に出て発表をする事になった。

私は大好きなモンゴメリとカナダの話をした。

内気な性格なのに、面接とか自己紹介の時だけは何故かハキハキと話せるのだった。

壮太がどういう話をするか耳を澄ましたが、声が小さく、私が最後尾の席だったせいもあって、殆ど聞こえなかった。

どうにか聞き取れたのは、nervousという言葉だけだった。

ややマイナスのイメージがある言葉だが、壮太が言うと少年のような清潔感が感じられた。

エイプリル先生は出席を重視するタイプで、よく宿題を出すので、途中で来なくなる者が多い。

しょっちゅう前に出て発表させるのがイヤだと言う者もいた。

でも壮太には残ってほしいと思った。

唯一の同級生だったからだ。

他に理由はない。

後々付き合うことになるなんて、その時は想像もしていなかった。


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