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  作者: たかはしえりか
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新卒で就職したのは学術書を多く出している出版社だった。

総務に四年いた後、営業に回されたのを機に退職し、派遣会社に登録をした。

時を同じくして一人暮らしも始めた。

家族の反対を覚悟したが、案外すんなり許してもらえた。

最初に就業したのは、派遣会社が企業からの委託を受けて運営しているコールセンターだった。

給料は決して良いとは言えなかったけれども、贅沢しなければ十分生活出来た。

そのうち正社員として就職するつもりだったが、女性ばかりの職場の割に人間関係の煩わしさがないのが居心地良くて、ずるずる先延ばしにしていた。

通信関係の新規契約獲得業務を三年、通販の受付を四年、銀行系カードローンの督促を三年、結局センターが閉鎖されるまで十年勤め続けた。

三十六歳になった私は緩い環境に慣れ切ってしまい、もう正社員として働く気がなくなっていた。

またそれを希望したとしても、景気が下向きで簡単には見つかりそうにない状況だった。

幸い派遣会社からすぐに次の就業先を紹介された。

新しい職場は比較的歴史の浅い消費者金融で、コールセンターより時給が良かった。

私とあまり年の違わない経営者はやり手と評判で、たまに雑誌などで取り上げられていた。

初めてよその会社へ行って、そこの社員に混ざって働くという、本当の意味での派遣デビューだったので、ちゃんとやっていけるかどうか心配でたまらず、面接を受け採用が決まった時も喜びより不安の方が大きかった。

そしてその不安はある意味、的中した。

男性の数が圧倒的に多い職場で、若くて綺麗な女性とそうでない女性に対する扱いの差が歴然としていたのである。

私は残念ながら後者の方で、最初の頃は随分傷ついた。

そういう時、彼氏の存在が大きな支えになった。

私にはあの人たちよりずっと素敵で、優しくて頭脳明晰で趣味の合う恋人がいる。

そう思うだけで、冷遇に耐えられた。


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