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  作者: たかはしえりか
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エイプリル先生は帰国前、引き続き大学の授業に出られるよう他の先生に頼んでみてあげると言ってくれたが、私も壮太もそこまで甘える事は出来ないと思ったし、エイプリル先生以外の人に習う気にもなれなかったので、その申し出を断っていた。

でも共通の趣味があったおかげで、私と壮太との繋がりはその後も続いた。

最初に誘ったのは私だ。

春のリーグ戦まで待っていたら忘れられそうな気がして、何かないかと野球部に問い合わせてみたら、二月の終わりに大学の練習グランドで社会人とのオープン戦があったのだ。

甲子園で活躍した新入生をダシに誘ってみたら、壮太はすぐにオーケーしてくれた。

それ以来私たちは練習試合や新人戦なども応援に行くようになった。

年三回の大相撲東京場所も、期間中一度は必ず見に行った。

それはたいてい祖父が一緒だった。

壮太はいつも祖父に優しかった。

段差があると足元に気をつけるよう声をかけ、混んだ電車の中では素早く空席を見つけて座らせてくれた。

たまには壮太が平日に休みを取って、祖父と二人だけで国技館へ行ったりもした。

二人が仲良しなのは、私にとってとても嬉しい事だった。

夏には花火大会があった。

初めて浴衣を着て行ったら、土手の斜面を降りる時、手を引いてくれた。

壮太はいつもクールなくせに、急にそんな事をして私の胸をキュンキュンさせるのだ。

思いは募る一方だった。

でも、告白なんてとても出来なかった。

壮太は長野の別荘で恋人も好きな人もいないと言った時と全く変わらなく見えるけれど、就職して新しい出会いがあった筈だ。

距離が縮まっていないとは言え、これだけ頻繁に私と会ってくれるのだから恋人は多分いないだろうが、『胸に秘めたる想い人』がいてもおかしくない。

下手に告白して気まずく振られ、二度と会えなくなるよりも、友達のままでいる方がずっと良い。

私はいつの日か自然に恋人へと移行出来る日が来るのを、長期戦の構えで待つ事にした。

たまには手作りのお弁当を持って行ったりしてさりげなくアピールしたが、あまり度重なるとありがたみがなくなるし、下心見え見えになると思い、間隔を空けるよう気をつけた。

状況が変わらないままに時が経ち、私はいわゆるお肌の曲がり角を過ぎたが、気持ちが揺らぐ事はなかった。


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