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  作者: たかはしえりか
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エイプリル先生とアレン氏は二月十一日、日本の建国記念の日にアメリカへ帰って行った。

免許取りたての壮太がレンタカーを借りて、空港まで私たちを乗せて行ってくれた。

私は大きなハート型のココア風味のクッキーを焼き、ホワイトチョコでイラストと簡単なメッセージを描いて、一足早いバレンタインのプレゼントとして三人に渡した。

寂しくてたまらなかったが、必死で明るく振舞った。

先生夫妻の背中を見送った後はもう涙をこらえる事が出来なかった。

大学四年の時からまる三年、先生は実の妹のように可愛がってくれた。

卒業してからの二年間は壮太とアレン氏も仲間に加わり、楽しい思い出がたくさんある。

先生たちがいなくなったら、壮太とこうして会う事もなくなってしまうに違いないと思うと、よけい悲しかった。

「そんなに泣くなよ」

壮太は困ったようにそう言ったが、私がなかなか泣き止まないので、胸に引き寄せて赤ん坊を寝かしつける時のように優しく背中を撫でてくれた。

頭の上に壮太の顎を感じた。

嬉しくて、また更に泣いた。

壮太は私の気の済むまで泣かせてくれた。

涙が止まった後、私は急に恥ずかしくなった。

どのタイミングで顔を上げればよいかわからなくて困っていたら、私がおとなしくなったのに気づいた壮太が

「大丈夫か?」

と覗きこんだ。

私は俯いたままで壮太の胸から顔を離し、黙って頷いた。

「えり子、この近くのホテルでケーキバイキングやってるみたいだぞ。おごってやるから元気出せ」

「うん」

自然に元気な声が出た。

ケーキは私の大好物で、壮太自身は普段殆ど食べない。

恐らくこういう状況を予想して、事前に調べておいてくれたのだろう。

私は壮太の思いやりが嬉しくてたまらなかった。


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