1章-7
7話「第1章7話」
「パーティの構成員の変更、承りました。」
受付はいつものように淡々と業務をこなす。
「今、登録情報の更新手続きをいたしますとでしばらくお待ちください。」
そう言うと受付は奥へ下がる。
忍者が黒魔術師に声をかける。
「テス。ひとつだけ言っておくことがある。」
黒魔術師が少し緊張しながら尋ねる。
「…何?」
忍者が残念そうに答える。
「お前の加入が予定より遅れたせいで『話数よりメンバーの方が多いじゃねーか』っていうネタが使えなくなった。」
黒魔術師は答えに窮し賢者に助けを求める。
「こういう時はどう答えるのが正解なの?」
賢者が淡々と答える。
「そうだな。自分が知り得ないことなら、とりあえず『知らないよ』とか『何の話だよ』と答えるのが基本じゃないかな。」
「なるほど。」
賢者は皆の方に向き直る。
「そんなことより、喫緊の問題は金だ。」
白魔術師が首をかしげる。
「この間のオーガ退治の分と今回の前金もあるんでしょ?そんなに危ないの?」
狩人が小さな声で呟く。
「オーガ退治か…すごい昔みたいな感じがするけど、作中の時間で言うと昨日の昼なんだよな。」
賢者は狩人の呟きは聞こえなかった振りをしながら白魔術師の問いに答える。
「数日中に餓死するというような事態ではないけど、洞窟攻略の支度にも金はかかるし、準備期間の食費や宿泊費がかかる。
今回の調査分の報酬をもらえればそんな問題は発生しないけど、攻略と継続案件だからどうなるかなあ。
もらえなくても最悪、野宿をすれば大丈夫だけど。」
白魔術師が敏感に反応する。
「野宿は絶対、嫌だからね!」
ナイトが不思議そうな顔で狩人に尋ねる。
「野宿をしたことがないんだが、そんなに大変なのか?」
狩人は遠い目をしながら答える。
「あの日味わった地面の固さと冷たさを君たちはまだ知らない…。」
「お、おう…。なんだその言い回し。」
しばらくすると、アローワークのカウンターの奥から受付が上司とおぼしき人物を伴って戻ってくる。
受付が真面目な顔で話し始める。
「皆様に…。」
遮るように白魔術師が必死な様子で受付に訴える。
「野宿は嫌です!」
受付は困惑する。
「えっと、何の話でしょうか?」
黒魔術師は受付の答えに感心する。
「なるほど。基本に忠実だなあ。」
「さて皆様。ただいまご紹介にあずかり損ねた支店長のジャーニーズです。」
自己紹介をする支店長に忍者が心配そうに尋ねる。
「お、おい。その名前大丈夫か?」
支店長はまたかと言いたげな様子で落ち着いて答える。
「美少年をアレコレする趣味はございません。ご安心下さい。
私のストライクゾーンは10歳前後の女児ですから。」
賢者がすかさず突っ込む。
「それはそれでダメだろ。」
支店長は真面目な顔で一行に告げる。
「皆様に今請け負ってもらっている案件について国の方から重大な変更要請がありました。
詳しくは奥の応接室でお伝えします。」
そう言うと支店長は奥へと戻っていく。
「どうぞこちらへ。」
黒魔術師が狩人に尋ねる。
「こういう途中での契約内容の変更ってよくあることなの?」
「いや、滅多に無いよ。
仕事が面倒になるんだと思うけど、基本的には向こうが契約違反をするという形だから、嫌ならこちらから仕事自体をキャンセルできるし、ここまでの分の代金も当然請求できる。どんな変更か知らないが、今回は既にある程度仕事を終えてそれなりの報酬を得る権利を有しているこっちが有利なんてことは向こうも重々承知だろう。
それでも変更を持ちかけるということは向こうに余裕が無いってことだ。
無理なら断ればいいし出来そうなら踏んだくれるだけふんだくってやろうぜ!」
支店長が呟くように告げる。
「普通それ相手に聞こえる所では言わないと思いますが…。
でもおっしゃる通りで、今回は難易度が高く他のパーティでは難しい案件だからいくら積んでもいいから首を縦に振らせろ、と言われております。
詳しくはこちらにて…。」
黒魔術師が狩人に尋ねる。
「こういう名指しの依頼もたまにあるの?」
「ある程度以上の実績があるパーティ、という条件は珍しくないが、ここまで限定されたのは初めてだな。」
支店長が呟くように告げる。
「私もどのような案件なのか詳細は存じ上げておりませんが、今回がかなり特殊だとは思っております。
詳しくはこちらにて…。」
黒魔術師が狩人に尋ねる。
「こんな風に店の奥に通されることはよくあるの?」
「これは結構ある。内容が複雑だったり…。」
賢者が割り込む。
「もういいだろ!全然話進まないから後にしろ!」
支店長は一行がソファーに腰かけると紅茶を差し出す。
「粗茶ですが…。」
ナイトは紅茶を一気にグイッと飲み干すと思わず呟く。
「失礼を承知で言わせてもらうけど、うっすいなコレ。」
支店長が申し訳なさそうに告げる。
「そのティーバッグ2回目なので…。」
賢者がすかさず突っ込む。
「リアル粗茶やめろ!」
支店長は真面目なトーンで話を始める。
「そろそろ仕事の話に移らさせてもらってよろしいでしょうか。」
そう言うと新しい契約書を提示して上部を指さす。
「まず、依頼人が農園の主人と国との共同になります。」
支店長はそのまま指を本文の方に移動させる。
「仕事内容は、洞窟の奥にいる魔物の討伐と、残っていれば資料の回収です。」
狩人と忍者がほぼ同時に反応する。
「なんで洞窟の…。」
「どうして奥に…。」
両者は顔を見合わせる。
「ごめん。」
「こちらこそ。」
そう言うと両者はどちらもだまり込んでしまう。
しばらく沈黙が続いたあと白魔術師が手を挙げる。
「はい!はい!はい!」
狩人と忍者が声を合わせる。
「「どうぞ、どうぞ。」」
賢者が突っ込む。
「ダ○ョウ倶楽部みたいなノリやめろ!」
ナイトが割って入る。
「取り敢えず、話を全部聞いて質問はあとでまとめてでいいんじゃないか?」
支店長は一行を見回し落ち着いたことを確認すると続きを話し始める。
「報酬についてですが、ここまでの調査分の30万円はこの依頼に関係無く満額すぐにお支払いします。
この依頼の分は既存契約から上乗せで500万円となりますが、不足だというのであれば仰って下さい。
なるべく要望の額に沿うよう努力は致しますが、既に最大の額を提示したつもりです。
言うまでも無いと思いますが、理由なき増額要求は信頼を損なう、ということはお忘れなく。」
うますぎる話に一同は警戒感を強める。
「最後に特記事項です。
今回の攻略に際し目下、助っ人を準備している最中につき、洞窟攻略は3日後にしていただきたい。
延期に伴う必要経費は別途お支払い致します。
攻略時には洞窟の壁から染み出る液体にはなるべく触らないようにしてください。
何かご質問は? 」
一行は顔を見合わせるが誰も何も言わない。
逆に支店長が焦る。
「えっと、何もないってことは無いでしょう?
一体どうなさいました?」
賢者が答える。
「いや、また誰かと被るかなと思って互いに譲り合った結果こうなっただけだよ。」
白魔術師がなにやら得意気に喋り始める。
「ふっふっふ。そんなこともあろうかとこれを持って来た。
…ジャーン!
トランプだよ!ババ抜きで勝った人が最初に質問するってことで!」
忍者はトランプを受けとる。
「やれやれ…。」
そう言うとすさまじい速さで皆にカードを配っていく。
黒魔術師が感嘆の声を上げる。
「おおー。速い!」
賢者が忍者のかわりに答える。
「困ったときはいつもこれで解決しているからね。カード配りは回数を重ねる内に段々と速くなってくるものさ。
実は私だって結構速いんだよ。」
支店長はババ抜きに勤しむ一行を見つめながら、隣の受付に尋ねる。
「なあ、いつもこんな感じなのか?」
「ええ、そうです。トランプはよく見ます。」
「相手するの凄く疲れるんだけど…。」
「問題を起こさない問題パーティとして有名ですので…。」
白魔術師が支店長に尋ねる。
「なんで助っ人?洞窟の奥って何がいるの?急ぎっぽいのに3日後でいいの?」
賢者が突っ込む。
「絞れよ!答えにくいだろ!」
狩人が白魔術師に代わって尋ねる。
「疑問点が山ほどあるから、個別にひとつずつ聞いても時間がかかるだけだ。
この件に関して国…上から聞かされていることをすべて教えてくれ。」
支店長は、ババ抜きの意味無くね、という言葉を飲み込み、狩人の質問に答える。
「私が知らないこと、知っていること、口止めされていないこと、の3種類の内、私が言えるのは口止めされていないことだけです。
それでよろしければお答えしましょう。」
狩人は軽くうなずく。
「あの洞窟ではかつて政府が何らかの、これは本当に存じ上げませんが、何らかの実験を行なっていて、その結果危険なモンスターが生まれたらしいのです。」
支店長がそう説明すると賢者は紅茶を口にしながら呟く。
「おおかたそんなことだろうと思ったよ。下へ下る道と踊り場みたいな広場が交互に出てくる地形なんて自然ちできたとは思えないからな。」
「生まれたモンスターは巨大なスライムで、動物の肉や植物を吸収して大きくなるというスライム共通の性質に加え、数秒間隔で体色、つまり弱点属性を変えるという厄介な性質を持っていました。」
狩人が補足を入れる。
「スライムは弱点によって体色が異なるモンスターだ。なぜか弱点っぽい色をしているのが特徴で、赤なら炎が弱点、青なら水が弱点、白なら冷気が弱点といった具合だ。」
支店長は紅茶にレモンを入れてかき混ぜると続きを話し始める。
「 一番厄介だったのは、魔法陣を通じて離れた位置に自分の体の一部を、召喚魔法の原理で転移させる能力で、離れた体は個別のモンスターとして活動し、周囲の生き物に襲いかかります。
つまりそのモンスターと対峙している限り背後にも注意をしなくてはなりません。
そうして産み出された個体が獲物を補食すると、本体が召喚を解除してエネルギーを回収するのです。」
支店長はゆっくりと続きを話し始める。
「モンスターがある程度大きくなってきた段階で実験に携わった軍の方々、いや、失礼。今のは忘れて頂けると助かります。
その場に居合わせた者たちは手に負えなくならない内に実験を止めるつもりで制圧を試みましたが、モンスターは想定していたより遥かに強くなっており既に手に負える状態ではなく、関係者全員が無事に逃げ出せたのが奇跡だと口々に話していたそうです。
この辺りから話すことが許されていない事柄が出てくるので慎重に話すことをご容赦ください。」
支店長は紅茶を一口飲む。
「洞窟の奥の方に封印を施し、モンスターがエネルギー切れで消滅するのを待つため、洞窟の入口に危険がある旨の立て札を立てたのですが、ご存知の通り、どこかの悪い農園がそれを見て逆にゴミの不法投棄場所にしてしまいご破算。
本体が外に出てこないところをみると、本体の封じ込めはうまくいっているようですが、召喚を止めることは出来ておらず、悪いことに知恵をつけたようで召喚魔法陣を出口に集中的にトラップのように配置することで獲物を逃さずに捕らえる仕組を作り上げたようです。」
支店長は一呼吸入れると少し考えてから話し出す。
「大量に置かれた食品を糧に急速に力をつけ、とうとう召喚モンスターが上層でも観測されるようになった、というのが真相のようだ、と聞かされております。」
支店長は姿勢を正す。
「もはや本体の封印が解かれるのも時間の問題で、そうなれば大規模なモンスターハザードになりかねません。
知能を持つモンスターに時間的猶予を与えると何をするか分からないので一刻も早く倒したいのはやまやま。
ですが失敗すれば事態は更に悪化するので完璧に準備をした最強のメンバーでの攻略をする方針になったそうです。」
支店長はカップを横にどける。
「明日にはあの洞窟についての資料を、お渡しできる範囲ですべて提供するとのことです。宿が必要ならば私どもで用意致します。国も我々も全面的にバックアップ致しますので、なにとぞこの街を救っていただきたい。」
支店長はそう言うと深々と頭を下げる。
白魔術師が賢者に尋ねる。
「要約すると、どういう話なの?」
「話が長くなると自分で理解するのを放棄するのやめろ。」
忍者が支店長に尋ねる。
「農園に対する措置は?」
「…孤児たちは大切にするよう注意を入れる予定とのことです。
それと、今まで通り変わらず営業しろ、と。
…どうして急にそんなことをお尋ねになるのです?」
忍者は狩人をチラッと見ると歯切れ悪く答える。
「いや、何て言うか…ちょっと気になっただけだよ。」
狩人が忍者に尋ねる。
「そろそろ、店長では話せない部分についてのお前の名推理を聞きたい所だな。」
忍者はナイトに確認する。
「正義感を出して暴走するのはやめろよ?」
狩人が何も反応しないのを横目で確認したナイトが慌てて答える。
「当たり前だろ。ただの推論を信じて行動を起こすようなバカはこのパーティにはいないぜ。」
「…それならいい。」
忍者が語り始める。
「昔むかし、ワンスアポンアタイム。」
賢者がすかさず突っ込む。
「同じ意味だろ。てか、そんな昔から始まる話じゃないだろ!」
ナイトがしびれを切らす。
「お前たちそのぐらいにしておけよ。これじゃ話が進まないだろ。このままだとまた尺が足りなくなるぞ。」
忍者が話を再開する。
「今から数年ほど昔、とある国で次期国王の座を巡る激しい内戦がありました。
内戦は両大将が戦死するというむなしい結果となり、後には莫大な費用が必要となる事後処理だけが残されました。」
忍者は地図を広げる。
「中でもダメージが大きかった都市は、東部中央の山岳都市メインクーンと南東の工業都市ラガマフィンだ。
両都市は武器弾薬の原料の採掘場と加工場を担っており、その両方が機能しなくなり軍備に不安が出てしまいました。
この事態を乗り切るには、どうすればいいと思う?」
白魔術師が手を挙げて元気に答える。
「分かった!『注視する』!」
賢者がすかさず突っ込む。
「日本の政治家か!何も方策が浮かばない無能ムーブやめろ!」
忍者が白魔術師に向かって親指をビッと立てる。
賢者がすかさず突っ込む。
「いいボケだった、じゃないんだよ!早く話を進めろよ!」
「そこで国は戦力をモンスターで埋めようと考えた。」
黒魔術師が狩人に尋ねる。
「モンスターってそんな都合よく扱えるの?」
狩人が少し驚いた様子で応じる。
「テス、いたのか。全然しゃべらないから気づかなかった。」
「ひどくない?なんかこの短期間に同じようなこと2回も言われたんだけど…まあ、いいや。
それで、どういうことなの?」
狩人が答える。
「召喚士というジョブを知っているか?」
「いや、知らないけど…。」
「そうか…。」
しばらく沈黙が支配する。
「いや、説明してよ!普段は要らないことまで話すのになんで今回は黙ってるのさ。」
忍者が狩人に向かって親指をビッと立てる。
賢者がすかさず突っ込む。
「いいボケだった、じゃないんだよ!早く話を進めろよ!」
狩人が静かに説明を始める。
「召喚士ってのは従えた魔物や野生動物を呼び出して使役するジョブだ。
召喚対象を空間移動させるのではなく、コピーを作成して戦わせるから召喚対象が傷つくことはない。
もっとも、召喚対象の意識はコピーの方に移るから肉体は無防備になるんだけどな。
どんな相手でも召喚できる訳じゃない、ってのが難しい所だ。」
黒魔術師が首をかしげる。
「というと?」
狩人が続きを話す。
「相手を腕力で従えないといけないってのが厄介な所だ。
ポ○モンをイメージすると分かりやすい。」
「ポ○モン?」
「あれものびのび暮らしている野生の生き物を拉致監禁して奴隷労働させるためにぶん殴ったり毒にしたりやけど…じゃなかった、氷漬けにしたりするだろ?あれと同じさ。」
「毒と氷漬け…私の属性に合わせて説明してくれたんだね…。
いらないよ、その配慮!」
忍者が咳払いをする。
「そろそろ本編に戻ろうと思うが、いいかな?」
皆が静まり視線を忍者に向ける。
数秒の静寂の後、忍者が口を開く。
「…何を話してたんだっけ?」
賢者がすかさず突っ込む。
「吉○新喜劇だったら全員がひっくり返るようなこと言うのやめろ!」
忍者が顔の前で腕をバツの形に交差する。
「一旦CM入って。CM!」
賢者がすかさず突っ込む。
「CMって何だよ!」
『どうしたんだいメアリー、ずいぶんと暗い顔をしているじゃないか。』
『大変よ、ボブ。二の腕のたるみが落ちないの!』
『おお、それは一大事だ。そんな君には、コレ。
楽々フィットネスマシーン、ファットスイーパー!
少ない負荷で最大の効果を追求した最先端のマシーンだ。
操作は、いたって簡単。一日5分の運動で理想のボディはあなたの物!』
『えっ、こんな簡単な運動で!?これなら挫折せずに続けられそうだわ!』
『お値段は驚きの34,900円。しかも今なら同じお値段であと2台が付いてくるんです!
お申込みは画面右下の番号へ。おかけ間違いないようお願い申し上げます。』
『全国夜間銀行よりATMのメンテナンスのお知らせです。今週の土曜日の22時より全店のATMにおいてシステム更新に伴うメンテナンスを行います。
メンテナンスは3時間ほどを予定しておりますが、その間もATMは問題なくご利用いただけます。
ですが、予期せぬトラブルが起こる可能性もございますので、 急ぎでないご利用はお控えいただきますようお願い申し上げます。』
忍者はふう、と息を吐くと話を始める。
「どこまで話したんだっけかな。
魔物を利用しようと考えた、って所まで話したから、その続きから始めようか。」
ナイトが呟く。
「突然流したCMにはノータッチで進めるんだな。」
忍者は気にせず話を再開する。
「内戦で軍事力を失った国はモンスター、つまり魔物を利用した緊急の補強策を考えた。
なにしろ北側3大陸はいずれ劣らぬ、ならず者国家の巣窟だ。いつ攻めこんで来てもおかしくないからな。
強力な魔物を産み出すための実験場があの洞窟だ。
わざわざあんな洞窟の奥を選ぶってことは、あの洞窟で採取できる何らかの物質が実験に必要なのだろう。」
忍者は一呼吸置くと意を決して話を続ける。
「実験の材料は、おそらく人間だ。そうじゃなきゃわざわざ攻略時に液体に触れるな、なんて注意はしないだろう。」
狩人は支店長の方に視線をやる。
支店長は視線をテーブルに向けたまま緊張した面持ちで言葉を絞り出す。
「先ほど申し上げた通り…口止めされていることはお話しできません。」
狩人が鼻で笑う。
「ふん。認めているも同然だな。」
忍者は2人の話が終わったのを確認すると話を再開する。
「最初は洞窟の比較的浅い階層を利用していたが、液体が出なくなったか深い方が出がいいからなのか分からないが、段階的に掘り進み徐々に下の階層に移動したのだろう。だから、通路と踊場が繰り返す構造になった、のだと思う。
ここまではいいか?」
白魔術師が自信たっぷりに答える。
「大丈夫、分かった。」
賢者がすかさず突っ込む。
「お前の、分かった、は信用できないんだよ。」
「ここからは根拠の薄い想像の部分が多くなるが…。」
忍者はそう前置きをすると後半を話し始める。
「内戦の影響で今うちの国は人材不足に陥っている。被験者、というか被害者は国民から選ぶという選択肢は取りにくい。そうなると必然的に国外から、ということになる。
だが、国が非人道的な実験で兵器を産み出す研究をしている、なんてことがバレると混乱は必至。国の存亡に関わる。
そこでスケープゴート、いざとなれば責任をすべて押し付けて切り捨てることができる弾除けを用意した。
それが何なのか、もう想像がつくだろう?」
白魔術師が自信たっぷりに答える。
「もちろん、分かった。」
賢者がすかさず突っ込む。
「お前の『分かった』は信用できないんだよ。」
忍者が話を再開する。
「例の農園だ。あそこの主人は孤児受け入れと引き換えに特権を得たみたいな感じで話していたが、いつ政府から始末されてもおかしくない立場に置かれた上に孤児の教育生活費の支払いまで押し付けられたってのが実態だな。
どうも政府には悪巧みが得意な奴がいるらしいな。」
狩人が尋ねる。
「でも実験は失敗したんだろう?事件が明るみに出る前にあの主人は口封じに始末されるのが当然だと思うんだが、なぜそうならないんだ?」
白魔術師が素早く反応する。
「こら、簡単に人の命を奪おうとするんじゃない!」
狩人がやや困惑する。
「…?えっと…ごめん?」
狩人の問いに忍者が答える。
「それは、あの洞窟以外にも実験場があるってことだろうな。
今回の依頼で書類の回収が入っているのは、そういうことなんだろう。
呼んでいる助っ人のジョブはおそらく…。」
ナイトが答える。
「シーフか。重要書類はカギのかかった場所に厳重保管されてくれるかもしれないもんな。」
忍者がすぐに反応する。
「おい、いきなり正解出すな!ボケるチャンスだっただろ!」
「お、おう、そうだな…。悪かった。」
白魔術師が忍者に尋ねる。
「で、農園の中で働いていた人たちは何なの?」
忍者が答える。
「それは、そこの黒魔術師に聞いた方が正確だろう。」
黒魔術師はス名されると思っていなかったので少し驚いたが落ち着いて答える。
「みんな外国から来た兵士らしいよ。本人たちがそう言ってた。
国の名前はグリーンなんとかとかレッドなんとかって言ってたのは覚えている。」
狩人が後を受ける。
「なるほど。森の大陸や火の大陸から来た…書類上は輸入された人間ってことか。」
狩人が反応する。
「おそらく違うな。あの連中は人身売買で入って来た者ではないだろう。
兵士ばかりというのが不自然だ。
それによその国の兵士の目撃例がたくさんあっただろ?実際私達も証拠品を拾ったこともある。
買付けていたならそんな大量に脱走される訳がない。人間1人、労働可能ともなれば、安く身売りなんかしない。自分で働けば簡単に稼げるからだ。
復興の負担で厳しい国が高い物を余らせるほど大量に買い付けるなんてことは考えにくいし、高価と分かっているものを逃がすような体制を組んでいたなんてことも無いだろう。
どういう経路で入って来たのかは分からないけど多国籍の大量の兵士がやって来て、その一部が拘束されたと考えるのが自然だ。
内戦の復興で政府は財政難だからな。そいつらを拘束し続けるだけでも手に余ったんだろう。
だから、そいつらを農園に売り渡して、得た金で外国から実験素材として適した人材を手に入れた、のかもしれない。
どうも政府には悪巧みが得意な奴がいるらしいな。」
ナイトがつぶやく。
「その説を思いつくお前もなかなかだけどな。」
ナイトがつぶやく。
「そんなにたくさん多国籍軍が入ってきたとすれば大騒ぎになりそうなもんだがな。そんなニュースは耳にしたこと無いぜ。」
忍者が答える。
「それは本人たちに聞くか、侵入現場に行くか、うちの国の政府関係者に問い詰めるか、あるいは出どころの国を調べるしか無いだろう。
兵士たちは軍に属しているから守秘義務があるだろう。簡単には口を割らないだろうし、無理に言わせるのもかわいそうだ。
侵入現場がどこかも分からんから、現場の調査は出来ないし政府の担当者が誰なのかも分からない。高官に聞けば分かるだろうが、あまり地位が高い相手だと虎の尾を踏む危険性がある。最悪消されるかもな。
となると、残る選択肢は…。」
ナイトが応じる。
「よその国をフラグが立ったな。」
賢者が黒魔術師に静かに伝える。
「テスは農園で働かされている兵隊連中に少しは情が湧いてなんとなく助けたいと思ってるかもしれないが、そいつらはうちの国を侵略するために来たのかもしれないんだよ。一般人の命なんか躊躇なく奪うつもりだったかもしれない。
強制的に徴兵された人であるとも言い切れない。自らすすんで参加している集団だっていう可能性だってある。
あいつらをどうしたいかは、真実を知ってから決めても遅くはないんじゃないかな。」
黒魔術師がつぶやく。
「ふう。世の中には悪い人かいっぱいだ。」
賢者がまとめに入る。
「というわけで、攻略実行までいったん解散。当日まで各自、必要だと思う準備を進める。
言っておきたいことや聞いておきたいことがある人は、いるかい?」
黒魔術師が手を挙げる。
「この国の通貨ってなんで円なの?」
賢者がすかさず突っ込む。
「この世界の住人とは思えないことを聞くんじゃない!今更過ぎるだろ。」
狩人が尋ねる。
「当日の集合場所と時間は?」
賢者が少し考える。
「そうだな。カタバミを摘んだ場所に9時ぐらいで。」
白魔術師が異を唱える。
「なんで屋外?雨降ったらどうするのさ。」
ナイトが対案を出す。
「じゃあこの支店のロビーでいいんじゃね?
そのためのスペースだろ?」
狩人が反対意見を述べる。
「ここ遠いからなあ。もっと郊外の方にコンビニあるから、あそこはどうだ?」
賢者が即座に反応する。
「中で待ち合わせするのは迷惑だろ。」
狩人が反論する。
「外なら構わないだろ?」
白魔術師が反対する。
「いや、それだと雨が降った時にどうするのさ。」
「…そうだな。」
忍者が提案する。
「じゃあ、現地集合でいいんじゃね。」
白魔術師が反対する。
「嫌だよ。私、道分かんないし。」
忍者が再度提案する。
「じゃあ、基本はコンビニ前で雨の場合はここのロビーってのはどうだ?何も集合場所は
1通りじゃなきゃいけない縛りは無いんだから。」
白魔術師は納得した様子で軽くうなずく。
賢者は皆を見回し誰も異論がないことを確認するとメンバーに告げる。
「よし、じゃあ当日の集合はエリアの案で。
他に何かある人はいるかい?」
狩人が真剣な様子で尋ねる。
「当日の昼、みんな何が食べたい?」
一同の話し合いを見ていた支店長が横にいる受付に小声で確認する。
「(普通、洞窟攻略の作戦とか重要なことを話し合うものじゃないのか?
さっきから雨避けとか当日の食事とか下らないことばっかり議論してる気がするんだが。心配事が遠足レベルというか…。)」
「(いい加減、慣れてください。この方々はそういうパーティなんです。)」
黒魔術師は街の中心部の中古コスプレショップに訪れていた。
「おお、黒魔術師用の服がたくさんあるね。」
共に訪れていた白魔術師が声をかける。
「どれでもいいから好きな衣装を選びなさい。
気前よく買ってあげるんだから!」
横にいるナイトが呟く。
「お前、まるで自分の財布から出すみたいな言い方するな。パーティの金だぞ。
それはそうと、私までついてくる必要あったか?」
「呪われた装備を掴まされたら嫌でしょ。ちゃんと鑑定してよね。」
黒魔術師がローブを一着持って、かけてくる。
2人の前にくると持ってきたローブを羽織りその場で一回転する。
「これなんてどうかな?」
白魔術師は手を1回叩くと感想を述べる。
「なかなか素敵じゃないの。よくある無地じゃなくちょっとだけど模様が入っている所がポイント高いね。」
黒魔術師はナイトに確認する。
「一応確認するけど、呪われてないよね?」
ナイトは目を凝らしてローブを確認する。
「残念ながらごくわずかだが呪われてるな。
でもまあ、気にするほどじゃない。」
黒魔術師が不安そうに確認する。
「そう言われても気になるよ。
どんな呪いなの?」
「18時間以上連続で着ているとちょっと背中が痒くなる。」
黒魔術師は呪いが軽微なことに安堵しつつも追加で尋ねる。
「呪いって解除できないの?」
「効果が軽ければ解除は可能だよ。
この程度の呪いなら造作もない。
洗剤を入れて洗濯機で2、3回洗えば完全に消えるよ。」
「それ、本当に呪い?」
忍者は公園で刀の手入れをしている。
「さっきルーネイトに聞いたんだけど、ツタウルシの葉の成分はスライムと体液を通さないんだそうだ。」
忍者は顔を上げる。
「それを聞いてここに来たんだろう?」
ナイトは笑いながら答える。
「いやいや、たまたまだよ。
しかし、植物の体液か。考えてもみなかったな。
これを武器に塗ればスライムも攻撃できるようになるって訳か。
あるいは防具に塗ってもいいかもな。
ツタウルシってどんな植物なんだ?」
「ルーネイトに聞いてこいよ。30分コースの解説が聞けたぜ。」
ナイトはツタウルシの葉をこすり付けた刀に目をやる。
「でも、微弱な呪いが付与されるみたいだな。」
「呪い?どんな?」
「素手で触るとかぶれる。」
「それ、呪いって言うのか?」
狩人と賢者はアローワークのロビーで受け取ったばかりの洞窟の地図を眺めている。
賢者が中ほどを指さす。
「この一番広いフロアが、テスたちが日常的に使っていた所だよな。」
狩人がうなずく。
「そうだな。ということは、脱出したフロアがここか。最深部までは更に3フロアあるな。」
ナイトが感想を述べる。
「トータルだと結構な階層数だな。よく掘ったもんだ。」
賢者が無言でナイトの方を見る。
「…。」
ナイトは不審に思い尋ねる。
「何か?」
賢者が訝しげに問う。
「お前、どこにでも現れるな。
カメラを追いかけてるのか?」
ナイトが当然と言わんばかりの様子で答える。
「ああ。ここまで目立てる場面が少なかったからな。
まずは映ってなんぼだぜ。」
賢者がすかさず突っ込む。
「もっと大事な場面で頑張れよ!
なんでこんな日常パートもどきで本気を出すんだよ!」
狩人が呟く。
「お前はお前で、レスターがカメラを追いかけて移動しているってどうやって把握してるんだよ。」
日差しが厳しい中、黒魔術師はタイヤを繋いだ紐を腰に巻き付け砂場をダッシュしていた。
白魔術師はサングラスをし、竹刀をもって見守っている。
「ほら、ペースが落ちてるよ。あと7周!」
忍者は紅茶を飲みながら向かいに座る賢者の方を見る。
「…という感じできっと修行してるんだろうなぁ。」
「そんなわけあるか!昭和でもそんな練習しないだろ!」
白魔術師は公園で、周りに人がいないか確認していた。
白魔術師は周りを見回すと、黒魔術師に問いかける。
「誰も使って無さそうだし、魔法の訓練をしようか。」
黒魔術師は近くにある地面に半分埋まったタイヤに目をやる。
「うん、分かった。
このタイヤを使うの?」
「タイヤなんて使わないよ。パンダじゃないんだから。」
白魔術師はそう言うと落ちていた木の枝で地面に四角を5つ描く。
「魔法には重要なファクターがいくつかあってねぇ。
まずは、威力!」
そう言うと描いた四角の内のひとつに自分が言った単語を書く。
「それと、コントロール!」
同じく四角の中に書く。
「詠唱速度!射程距離!」
同じく四角の中に単語をそれぞれ書くと、白魔術師は少し考え込む。
数秒考えた後、残った四角を足で消し、何も無かったかのように話を始める。
「重要なのはこの4つかな。」
黒魔術師が疑問に思い尋ねる。
「使える回数とか、魔法レベルの高さは?」
白魔術師は四角を2つ追加する。
「それいいね。し…よう…かい…すう…。
じょう…い…ま…ほう…、と。」
白魔術師は書き上げた表を眺める。
「威力と射程距離は被ってるか…。あと、上位魔法は最初のステップとしては要らないね。」
白魔術師は2つを足で消す。
「だいたいこの4つが魔法の重要な要素と言われてるよ。」
「…ふーん。」
白魔術師は黒魔術師に問いかける。
「どれを重点的に伸ばしたい?」
黒魔術師がかかれた4つを見比べる。
「やっぱりある程度威力が無いとみんなの役には立てないからまずは威力かなぁ。」
「それならとにかく数多く魔法を唱えることだね。」
黒魔術師は興味本位で尋ねる。
「ちなみに、コントロールを上げるには?」
「それならとにかく数多く魔法を唱えることだね。」
「…ちなみに、詠唱速度や使用回数を上げるには?」
「それならとにかく数多く魔法を唱えることだね。」
「全部一緒じゃん!」
白魔術師は軽くため息をつきながら答える。
「分かってないなぁ。
同じに聞こえるけど全く違うんだよ。
同じ行為でも目的意識がどこを向いているかによって効果は全然違ってくるんだから!
学校の社会科見学だって事前に、数ある候補からどうしてそこが選ばれたか、どこを重点的に見るべきかっていう説明があったでしょ?漫然と眺めているだけだと効果が低いからね。」
黒魔術師は首をひねる。
「いや、そんな説明無かったよ。なんとなく見ただけで終わり。
後日、原稿用紙何枚以上、っていう縛りのある感想文書かされた。
枚数を埋めるために改行を多用したり無駄に長ったらしい表現を使ったり漢字をひらがなにして文字数を稼いだりするのに苦心したことしか覚えてない。」
「…日本の教育が不安になってきたよ。」
雨が降る朝、一行はアローワークのロビーに集合していた。
「というわけで、攻略当日になりまし…た!」
忍者の宣言に賢者がすかさず突っ込む。
「描写は省略したけど洞窟攻略の日が来たていで進めます、みたいな感じで言うのやめろ!
まあ、いいや。とうとう攻略の日が来たわけだが、みんな準備はいいかい?」
白魔術師が尋ねる。
「助っ人はいつ来るの?」
賢者はメンバーを見回すが誰も反応しない。
賢者はあわてて受付の所にかけていく。
ナイトが呟く。
「自分もだけど、これだけ人数がいて誰もケアしてなかったのか…。」
賢者が丸く巻かれた紙を携えて戻ってきた。
「なんか書き置きがあったらしい。」
賢者はそう言うと、丸められた長い紙を広げていく。
広げられた紙を見ると、そこには大きな文字で漢字が2つ書いてあった。
「 現 地 」
賢者が突っ込む。
「情報が最小限すぎるだろ!それとお前は誰なんだ!」
狩人が冷静に提案する。
「通じるからいいじゃないか。それより、待たせちゃってるんだろ?早く行こうぜ。」
忍者が同調する。
「決して走らず急いで歩いてそして早く合流して、か。
むう、コイツなんて難しい注文を…!」
賢者が支度をしながら突っ込む。
「今時ボ○ケテのネタなんて通じないだろ。何年前のネタだと思ってるんだ。」
一行が洞窟の見える場所まで来た頃には、雨はすっかり止んでいた。一行は立ち止まり、それぞれ傘をたたみ収納スキル的なもので謎の空間の中にしまっていく。
黒魔術師は傘を手に持ち、なにやら考え込んでいる。
狩人が心配して声をかける。
「どうした?何か不安なことでもあるのか?」
黒魔術師は顔を上げる。
「いや、大したことじゃないんだけど、収納スキル的なものを使うのが初めてだから。」
狩人は安堵する。
「なんだ、そんなことか。そんなに緊張するようなことじゃないよ。
みんな見てるから何も不安になることは無い。思い切ってやってごらん。」
黒魔術師はうなずくと、恐るおそる手を前に伸ばす。
そして前方に開いた空間のひずみのような所にゆっくりと手を沈め中に傘をそっと置く。傘が完全に指から離れると、素早く手を亜空間から抜き去る。
手を引き抜き終わるとゆっくりと空間が閉じていき、ゆがみは数秒で完全に消滅する。
何事もなく終わり安堵する黒魔術師に狩人が声をかける。
「どうということは無かっただろう?」
黒魔術師は軽く頷くが、すぐに何かに驚き動きを止める。
「…!
なんか天の声みたいなのが聞こえてきて、初回利用プレゼント、とか言ってるんだけど…?」
狩人はそれを聞くとすぐに黒魔術師に警告する。
「すぐに上からプレゼントが降ってくるぞ!受け止める準備をするんだ!」
黒魔術師は慌てて両手を前に出しお椀の形を作る。
数秒後、上空から小さな物体が手の中央目掛けてまっすぐに落ちてくる。
黒魔術師は自分の手におさまった物体を恐る恐る確認する。
「…黒飴が降ってきた。」
白魔術師が驚きの声を上げる。
「もしかして初回利用のやつ?
人によって違うの?
私の時はハッカの飴だったよ!」
ナイトが続く。
「私はイチゴ味の飴だったなぁ。」
狩人も続く。
「私は青リンゴだったな。今のところ自分と同じ飴だった人に会ったことは無いな。
そっちの2人は?」
忍者が答える。
「私はコーヒー味でノルドはオレンジ味だよ。」
賢者が目線だけを忍者の方にやる。
「お前、よくそんな下らないこと覚えてるな。」
「そりゃ、どこかの誰かも最初に使った時に大騒ぎだったからな。コーヒー味の飴を想定してたら降ってきたのが橙色だったものだから、『オレンジだよ!オレンジの飴が降ってきたよ!』って凄く興奮して…。」
賢者が割り込み話を遮る。
「忘れろよ、そんなこと!」
黒魔術師は飴を舐めながらやり取りを眺めている。
「(人を待たせているかもしれないのにのんびりしているなぁ。)」
賢者がメンバーに声をかける。
「余計な時間を食ってしまった。助っ人を待たせているだろうし、急ごう。」
歩き始めた賢者にナイトが尋ねる。
「その助っ人って誰なんだ?」
「…え?」
ナイトは聞こえなかったのかと思い再び尋ねる。
「さっきアローワークの受付の人から書き置きを受け取ったんだろ?その時に名前を聞かなかったのか?」
「…え?」
「いや、だから、書き置きを受け取った…。
要するに聞いてないんだな!
お前、たまに変な所抜けるな。」
一行は入り口のすぐ前に到着する。
賢者がメンバーに告げる。
「さて、尺の都合で今回はここまでになるが、今回の内にねじ込んでおきたいことはあるかい?」
忍者が洞窟の上を指さす。
「なあ、ルーネイト。洞窟の上に生えている木って何か分かるか?」
狩人は洞窟の上と周囲を見渡す。
「ここら一帯に生えている木はほとんどがレイジュだな。
この世界、いや、この大陸の固有種だ。この大陸では、ありふれた植物だよ。性質としては…。」
賢者が話を遮る。
「待て、まて。その話、長くなるなら次回に回せ。」
「…じゃあ、無理だな。」
「やっぱり長くなるんかい。」
【今日の豆知識】
ルーネイトです!
みんな、インゲン豆を食べてるかい?
もしかしてゴマ和え以外では、料理の上の添え物としてしか見かけない、使い道に困る野菜だと思っていないかい?
そこは私も同感だ!
ところで、インゲン豆の栄養が優れているという話は聞いたこと無い人がほとんどなんじゃないかな?
私もだ!
終わり
「おい、何だこのコーナー!
ディスって終わるんかい。
インゲン豆農家に怒られろ!」