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1章-4

4話「第1章4話」


『未登場キャラ人気ランキング』

1位 ウナギババア

2位 行き倒れのサニア

3位 おじいちゃん先生

4位 素人歌手ファラード

5位 ガンガンお天気変えますよウェザーチェンジャー


忍者は賢者に向かって親指を立てる。

「という感じでランキング発表からスタートするのはどうだろう?」

「…OKが出る可能性が1%でもあると思ったかい?」


「さて、今回の依頼だが…。」

賢者は前回ナイトが持ち帰った依頼書を読む。

「依頼主はジャンフォレストの西の端にある大規模農場のオーナーのテレンスという人物だ。」

忍者が名前を聞いて反応する。

「ダービーか?」

賢者は素早く返す。

「違う。」

忍者がまた別の名前を挙げる。

「バレなければイカサマじゃない人か?」

賢者は素早く返す。

「それはダニエルの方のダービーだろ!テレンスでさえないじゃないか。

 ていうか、ジョ○ョネタは誰にでも通じるわけじゃないから多用するのはやめろ!」

忍者は待ち構えていたかのようにすぐに返す。

「Exactly(その通りでございます)」

賢者が突っ込む。

「それはテレンスだろ!」

忍者が反論する。

「じゃあ、いいじゃないか。」

賢者が突っ込む。

「よくねぇわ!依頼人とは別人だよ!」


賢者は続ける。

「前金が、5万円だな。

前金だけでさっきのオーガ討伐を上回っているね。

洞窟の中の様子の調査結果の報告で10万円から30万円、事件解決で100万円から200万円、紹介手数料は依頼側が全額負担という破格の、つまり怪しすぎる仕事だ。」

白魔術師が疑問を呈する。

「よく分からないけど調査報告だけやっておさらばするっていう手は無いの?」

問いに忍者が答える。

「調査だけでも欲しがるってことは、逆に言えばこれまで調査結果を持ち帰った奴がいない、つまり全員死んでいるか、何かヤバい事情があって中止して辞退しているっていう可能性が高い。

 解決に導けるチームなどほんの1握りだろう。もし調査を成功させるという実力を見せれば当然そのまま解決までを依頼されるだろう。逃げ道は無い。

何にせよ、そんなヤバい案件である確率が高いにも関わらず、前情報ゼロで挑まなきゃいけないって訳だ。

当面の金に困ってない現状では、いや、金に困っていたとしても、避けられるなら避けたい案件の筆頭だな。」

狩人が小声で呟く。

「さっきまでダービーとかなんとか言ってた奴とは思えないまっとうな意見だな。」

ナイトが忍者の意見に補足をする。

「逃げるという選択肢は無いのであれば洞窟対策を万全にして挑むほか無いな。」


一行は町外れの農場に到着する。

白魔術師は農場を取り囲む高い壁を見上げている。

「ずいぶんと高い壁だね。何のために建設したんだろう。」

忍者が壁を眺めながら答える。

「そりゃ、壁の外をうろつく巨人を入れないためだろう。」

賢者がすかさず突っ込む。

「おい、やめろ!そのアニメのバックのN○Kを敵に回すと献金先の政治家経由で消されるぞ!」

忍者は壁の上に張り巡らされた有刺鉄線を見ながら続ける。

「もしくは、盗賊対策か。

ただ、これをやると、盗賊が壁を越えてしまうとその後は人の目を気にせず活動できてしまうという欠点がある。

盗賊対策でないとすると…。」

忍者は何も言わず壁の方に向かって歩き出す。

ナイトがしびれを切らして尋ねる。

「盗賊用じゃないとすると、何だよ?」

忍者は壁の方から振り向いて一呼吸置いて周りを軽く見回してから口を開く。

「壁の向こうで外から見られたくないことが行われているか、中にいる何かを外に出したくないか、だ。

要するに、これから我々は法律に触れるかスレスレの光景を目にする可能性がある。

我々は仕事で来ているんだ。たとえそれ以外の許しがたい何かがあったとしても耐えてくれよ。

 正義感に負けずに絶対に手も口も出すなよ。」

ナイトは当たり前だという様子で答える。

「私だってお前たちと同じくずっとプロとして働いてきたんだ。そのぐらいはわきまえている。」

忍者はちょっと意外そうな様子だったが、特に気にすること無く門の方に視線をやる。

「…ならいいんだ。念のための確認をしただけだよ。」


一行は扉の前に移動すると一旦立ち止まる。

賢者がインターフォンのボタンに指をやる。

「覚悟はいいかい?押すよ?」

賢者がインターフォンのボタンを押すと短い音楽が流れる。

聞き覚えのある曲に賢者が突っ込みを入れる。

「なんでファ○マの入店音なんだよ!」

インターフォンから定型のメッセージが流れる。

『しばらくお待ちください』


30秒ほど待つが、扉が開く様子はない。白魔術師はゴクリと唾を飲む。

「扉が開いたらいきなりドーベルマンが出てきて顔をなめられる可能性もあるんだよね。」

賢者が突っ込む。

「想定被害がショボいな。」

狩人が続く。

「心配するな。門の向こうにドーベルマンの気配はない。」

賢者がすかさず突っ込む。

「いちいちそんなくだらないことで気配を探らなくていいよ!」

狩人が補足をする。

「ちなみに、門の方に人が近づいているようだ。」

賢者が突っ込む。

「そっちを先に言え、というかそっちだけ言え!」


しばらくすると、メッセージが流れる。

『扉から離れてください』

一行が扉から離れると、扉が内側に向かって開いていく。

賢者が思わず突っ込む。

「内開きなんかい!離れなくてよかったじゃねーか!」


扉の向こうには案内人が立っていた。

賢者の突っ込みに少し気圧された様子だったが、すぐに気を立て直し仏教式に合掌しながら挨拶をする。

「どうも、案内人のミオス、です。」

賢者は反射的に突っ込みを入れる。

「なんて挨拶がニ○ジャスレイヤー方式なんだよ。」

案内人は感嘆する。

「噂に違わぬ突っ込み力…さすが『突っ込みの賢者』と呼ばれるだけのことはありますね。」

「その突っ込みの専門家みたいな二つ名やめろ!」

案内人は隣の忍者に目を移す。

「そちらは『大ボケ忍者』エリア様…。」

「そのポンコツみたいな名前では呼ばないでもらおうか。」

続けて白魔術師の方に向き直る。

「そして『返り血』のリン様…。」

「白魔術師の逆を行く呼び方やめて欲しいんですけど!」

続けて狩人の方を見る。

「『おしゃべり料理人』ルーネイト様ですね。」

「その狩人要素の無い呼び方やめてもらおうか。そもそも私にそんなイメージを抱いている奴なんていないんだよ。」

「えっ!?」「!?」「!?」「!?」

案内人は最後にナイトの方を見る。

「そして『呪われた聖騎士』レスター様ですね。」

「その呼び方はやめてもらおうか。

まるで私自身が呪いに蝕まれているみたいじゃないか。」

変な空気が流れる中、賢者がぼやく。

「このくだり毎回やる必要ある?」

案内人が困惑しつつ答える。

「そう仰られましても、私にとっては初めてですので…。」


案内人は自己紹介の続きを始める。

「見ての通り、私は魔族でございます。

他所の大陸、ここでは火の大陸と呼ばれている大陸ですね。火の大陸からやって参りました。

移り住む前こらこの大陸では魔族に対する差別が無いと聞いてはおりましたが実際に来てみるまでは半信半疑で…。

同じ魔族が経営するこちらの農場があると聞いて藁にもすがる想いでこの大陸に渡って参りました。

今でも不思議なのですが、本当にこの大陸の方々は私たち魔族を見ても嫌悪の顔をしないのですね。」

忍者が当たり前だという風な様子で答える。

「そりゃそうだ。何しろ別の星の全身緑の生命体が運転免許を取りに行っても顔色が悪い、でスルーされる世界だからな。」

賢者がすかさず突っ込む。

「それはこの世界の話じゃないだろ。

それと、ド○ゴンボールZのアニオリのネタは古すぎて今の時代にはちょっと厳しいだろ。」

話を中断させられた案内人が続きを話そうとしたが、狩人が割り込む。

「魔族とは、かつて人間と魔物の間に生まれたハーフたちが由来とされる種族だ。

特殊な性癖を持つ者たちが生み出した奇跡の種族だが、子供に教えにくいという理由で学校ではその起源を詳しく教えない。

大昔、野生のサキュバスを拉致して監禁するのが流行した時期に生まれた子供が初代とされる。

普通の人間より魔法に長けて生まれてくる場合が多いが、ちょっと努力すれば簡単に埋まる程度であり特筆するほどでもない。ちょっと顔色が悪めの普通の人と言えるだろう。

…とまあ、簡単に説明するとこんな感じだ。」

セリフの大部分を奪われた案内人も負けじと補足を入れる。

「おおよそ仰られた通りです。

しかし、この大陸以外では、強い魔力を持って生まれる悪魔というような扱いです。

石を投げられるなんてことも日常茶飯事ですよ。」

忍者が石投げというワードに反応する。

「石を投げる…さてはあんた仙台を訪問した田舎者だな?」

案内人ご困惑する。

「すみません、仰っている意味が分かりかねます。

というかもう案内始めていいですか?

入口に入る前にこんなに時間使ったの皆さんが初めてですよ。」


案内人の先導で一行は敷地内を進んでいく。

すると、すぐに労働に従事する者たちが見えてくる。よく周りを見渡すと至るところに同じような労働者たちがいる。

ナイトは案内人に尋ねる。

「あの者たちは?あまり元気が無いみたいだが。」

案内人は前を向いたまま足を止めずに止まることなく答える。

「ここで立ち止まると面倒なことになることがあるので詳しくは農園の主にお尋ねください。依頼内容も農園の主よりあわせてご説明いたします。

とりあえず、農園の塀は外から見えないようにするため、とだけお答えしておきます。」

ナイトはひとまず納得する。

「なるほど、おおっぴらには話せないほどのとっても健全な経営をしているってことか。まあ、どんな商売をしてようと我々には関係無いけどな。」

「そう言っていただけると助かります。

たまに事情も知らずに、こいつらを解放しろ、的なことを言ってくるクレーマーもいましてね。苦労しています。」

忍者は一人で納得する。

「分かった。今回の仕事はクレーマー退治か。」

「いえ、違いますが…。」

忍者はさらに質問を重ねる。

「ということは、壁の点検と補修か。壁に埋められた巨人を封じるため、かな?」

案内人は少しイラついた様子で答える。

「いえ、違いますけど。

そろそろ屋敷に到着するのでそちらで聞いてもらっていいですか?」

賢者が案内人に苦言を呈する。

「尺が厳しいので無駄な会話は省いてもらっていいかい?」

「ええ、こちらとしても、ぜひそうしたいのですがね!

扉を開いてからここまでの道のりでこんなに時間を使ったのは初めてですよ!」


しばらく歩くとようやく屋敷の入口に到着した。

「到着いたしました。」

賢者は反射的に突っ込みを入れる。

「見りゃわかるわ!

…すまない、癖なんだ。気にしないでほしい。」

「あ、はい…?では改めまして…。

到着いたしました。

さて、私の役目はここまでです。

あとは農場の主である社長からお話させていただければ、と思います。

それではこれにて失礼させていただきます。」

案内人がペコリと挨拶をすると、忍者が拍手をする。

「ブラボー!おお、ブラボー!!」

賢者が突っ込む。

「ポ○ナレフやめろ!なんで今日はジョ○ョ推しなんだよ!」

案内人はこれ以上巻き込まれないように早足で立ち去る。

しばらく逃げ続けた後、もう大丈夫だろうと後ろを振り返る。

すると、一行はまだ建物の入口に留まり、なんらかのやり取りを続けていた。

「(まだ屋敷に入らずに、なんかやり取りしてる…。あの人たちすげえな。ホント噂以上だわ…。)」


一行が屋敷の中に入ると、農園の主が出迎える。

「皆様、遠い所よくぞいらっしゃいました。

こちらへどうぞ。」

一行が応接室に通され、勧められるがままに長椅子に座ると、給仕が紅茶を持ってくる。

農園の主はテーブルの中央に置かれたカップから好きなものを選ぶように一行に促す。

それぞれが選び終わると農園の主は最後に残されたカップを手に取り素早く飲み干す。

「こうしないと折角の紅茶を警戒してお飲みにならないお客人が多いものでね。

さて、皆様ご到着まで少々お時間がかかったようですが、何か問題がございましたでしょうか。」

賢者は紅茶をひと口飲むとカップを置く。

「時間がかかったのは長々と魔族の起源を聞かされたりしたせいで問題は無いよ。」

「…そうですか。案内をさせていただいた者にはキツく言っておきます。」

ナイトが気になっていたことを尋ねる。

「外で働いていた人たちは一体何なんだい?」

農園の主は慣れた様子で聞き返す。

「うちの農場の経営に関わることなのでお話ししたくはないのですが、どうしてもお話ししなければいけませんか?」

ナイトのかわりに賢者が答える。

「戦いってのは頭数だ。素性の分からない大人数に囲まれた状態では落ち着いて話も聞けないのでね。

敵意が無いようには見えたが、外部に対して秘匿しないといけない連中なのだろう?」

農園の主は渋々説明を始める。

「分かりました。ご説明致しましょう。

数年前の内戦のことは当然皆さんも覚えていらっしゃるでしょう。

あの戦いでは多数の戦争孤児が生まれました。」

ナイトが納得した様子で軽くうなずく。

「その孤児を引き取って働かせているってことか。」

「いえ、違います。」

ナイトの横にいた白魔術師が小声でささやく。

「(どう見ても大人もいっぱいいたでしょ。 目立ちたいからって適当に発言するのやめなさいよ。)」

「(ナイトってのは目立ちたいものなんだよ。今回セリフが少ないんだから仕方がないだろ。)」

「(セリフが少ないのはあんただけじゃないんだから我慢なさい!)」


農園の主は続きを話し始める。

「その子達が不憫でね。うちで引き取って面倒をみて、その代わりと言っては何ですが、ちょっと仕事に手を貸してもらおう、と考えていたわけですが、子供を労働目的で確保するのはけしからんと言ってくる連中が多くて断念せざるを得なかったのです。」

農園の主はポットから自分のカップに紅茶を注ぐ。

「でも孤児は何人か引き取って面倒を見ていますよ。もちろん農作業などさせておりません。自身の身の回りの世話とごくわずかな雑用はしてもらっていますがね。

 私が信用されていないからなのか、独り立ちできるようになるまでは、子供たちに過度な負担を強いたり、故意に身の安全が脅かされる状態にさらしたりしたのがバレたら厳罰に処するという厳しいおまけ付きです。」

賢者は農園の主がポットから注いだ紅茶を飲むのを確認してから自分のカップに紅茶を注ぐ。

「当然、何かの対価、メリットがあるんだろう?」

「ええ、もちろんです。

孤児という不良債権を抱えるかわりに、国から安価な労働力の提供をいただいております。」

賢者は紅茶をひと口飲む。

「労働力の提供?」

「ええ。我が国は外国から身売りに出された人間を買っているということを明かされた上で、労働力の提供頂いております。おそらくその一部の横流しなのではないかと。

法律上、外国人であろうと労働者に過酷な労働を強いることは禁じられています。

しかし、抜け道はいくらでもあるのですよ。人ではなく労働力という物として輸入する、という方法を取っているとのことです。物資としての取り扱いなので人権保護の対象外なんだとか。

 その関係なのか知りませんが、本人たちに事情を聞いてはいけないという制約を課されています。

 それと、10年働いたら自由の身にしてやれ、と。よく意味が分かりませんが、そのおかげで少ない希望を糧に働かせることができるので結果的には助かっていますがね。

1人当たり100万円支払うことになりましたが1年も働かせられれば十分もとはとれますので非常に助かっていますよ。」

賢者はカップを置く。

「そういうことなら特に問題は無いよ。」

賢者が横目で狩人と忍者の方をチラリと見る。

それで、ルーネイトとエリアは随分と静かだけど何かあるかい?」

忍者は警戒しながら答える。

「いや、随分と部屋の外にギャラリーが多いなと思ってね。ちょっと緊張しているだけだよ。」

狩人が補足する。

「武装した警備員が18人もいるなんて、この農園は儲かってるんだな、てね。」

農園の主は落ち着いて対応する。

「いや、すみません。別に危害を加えるつもりはないのです。

たまに襲いかかってくる方々もいるのでね。単なる用心ですよ。気になっていらっしゃるようなので下がらせましょう。」

農園の主は立ち上がり扉の方に向かって大声で呼び掛ける。

「暗殺部隊の皆さん、今回は出番はありません。外に出ていて下さい。」

賢者が突っ込む。

「堂々と暗殺とか言うな!」

扉の向こうから指揮官と思しき人物の声が聞こえてくる。

「引き上げじゃあ!」

賢者が突っ込む。

「ド○クエ4のデスピサロか!」


護衛の撤収が終わると農園の主は席の方に歩きながら説明を再開する。

「今回の依頼は西にある洞窟の調査、可能であれば問題の解決です。

西の洞窟は売れ残りの野菜や果物を廃棄する場所として利用していたのですが、ここ最近、中に入った者が帰ってこない事例が増えてきてまして。

先日ついにうちの正社員が犠牲になってしまいました。洞窟のそばに買い出しの荷物を残して姿を消してしまったのです。

その洞窟は街の中心部への経路の近くにありまして、魔物が出るなんてことが噂になれば今後の商売に影響が出かねません。

どうか我が農園の経営のため原因の究明、可能ならば原因の排除をしていただきたい。」

賢者は普段と変わらない様子で答える。

「分かったよ、問題ない。報酬のやり取りは全部アローワーク経由でいいかい?」

農園の主は椅子に座る。

「承知しました。

 それと、洞窟までの道と洞窟の内部の案内に、当園で保護している戦争孤児を一人つけましょう。よく洞窟に荷物を運んでくれているらしいので適任かと思いますよ。」

賢者は少し嫌そうな顔をする。

「つまりその子を守りながら探索する必要があるってことか。」

農園の主は軽く笑いながら答える。

「別に最前線に立たせてもらっても構いませんよ。どのように取り扱っていただいても結構です。

孤児なんて建前のために一人いれば十分。二人目以降はただ金を食い潰すだけです。

契約上さすがにわざと減らすことはできませんが、仕事の手伝いの雑用中の事故であれば誰からも文句は言われないでしょう。」

賢者は静かに答える。

「なるほどね。分かった。

 …必ずその子は無事にここに連れて戻るよ。」

農園の主は少し残念そうな顔を浮かべる。

「分かりました。では早速呼びましょう。」

農園の主は扉の前に移動し、手をパンパンと叩く。

だが、何の反応もない。

農園の主は扉を開けて呼び掛ける。

「スタッフぅ~!」

しかし誰も現れない。

賢者が小声で狩人に尋ねる。

「(誰も来ないけど、どうなってるんだ?)」

狩人が小声で答える。

「(今この屋敷に誰もいないよ。

さっき警備を外に出しただろ?

どうも命令を勘違いしたらしく、人員をすべて屋敷の外に退去させたみたいだ。

言ってやった方がいいんじゃないか?)」

賢者は無人の扉の向こうに連呼し続ける農園の主に視線をやりながら小声で答える。

「(いや、なんか助ける気が起きないからしばらくこのまま見てよう。)」


「皆様、お見苦しい所をお見せしました。

こちらがガイドをつとめる…何と言ったかな?」

農園の主はガイドの方に顔を向けるが、ガイドは動かない。

農園の主が自己紹介を促す。

「ほら、ご挨拶なさい。」

忍者が制止する。

「待ちな。その子の名前…。」

忍者が賢者の方に向き、無機質に問いかける。

「『名前を入力してください。』」

賢者が反射的に突っ込みを入れる。

「昔のRPGか!」

連れてこられたガイドは困惑する。

「えっと…もう名乗っても大丈夫でしょうか。」

ナイトがため息をつく。

「なんとなく、ボケが出尽くしたな、と思ったらいつでも言ってくれ。」

連れてこられたガイドは引き続き困惑する。


一行は屋敷を出て門の所まで来ていた。

ガイドは開門の操作をしながら尋ねる。

「皆さんは芸歴長いんですか?」

賢者が突っ込む。

「誰が芸人だ!

まあいいや。それより目的の場所は遠いのかい?

…えっと、名前はテスでいいんだっけ。」

「はい、名前は合ってます。」

「どちらかと言えば前半の方の質問に答えて欲しかった。」


ガイドは門の外に出ると、街の中心部に向かう道を先導していく。

ある程度の所まで進むと道を外れ草むらの方に入り、生い茂った草を掻き分けながら進んでいく。

賢者が突っ込む。

「全然町への道の近くじゃないじゃねーか!」

ガイドは手を動かしながら尋ねる。

「依頼の途中で私を処分するよう言われているのでは?最近2回ほど、私たちと社員さんの二人組で調査に行き社員さんだけが帰ってくる事件が発生しています。

この前は何かしくじったみたいで誰も帰って来ませんでしたが。

さすがに社員さんの犠牲はまずかったみたいで今度はプロを呼ぶと言っていました。

おそらく皆さんがそうなのでしょう。

もしかしてみなさんも社長から事故に見せかけてでも私を処分するよう言われているのでは?」

賢者が正直に答える。

「先方の願いとしてはそういうことみたいだったが、そんな無茶苦茶な要望を叶えてやるつもりは無いよ。無事に連れて帰ると約束したから安心してくれていい。」

ガイドは浮かない顔を浮かべたまま呟く。

「今日は生き残れても、いずれは覚悟しないといけない運命です。早いか遅いかの違いしかありません…。

 さて、到着しましたよ。」

案内された洞窟には立て札が掲げられていた。

『危険だと思う』

賢者は立て札を一瞥すると吐き捨てるように言い放つ。

「そんな弱いボケでも突っ込んでもらえると思っているなら大間違いだからな。」

狩人がつぶやく。

「…しっかり突っ込んでるじゃないか。」


ガイドは立ち止まり一向に確認する。

「それでは準備はいいですか?」

白魔術師は首を傾げる。

「準備って何すればいい?」

ガイドは困惑する。

「そんなこと聞かれても…。」

狩人がフォローに入る。

「一般的には灯りとか飲食、魔物もいるだろうから武器とかかな。」

ガイドが慌てて同意する。

「あ、はい。そういったものの準備です。

皆様、

洞窟に入る準備は…。」

だが狩人の話は終わっていなかった。

「洞窟がどのぐらいの広さかによっても色々と変わってくる。

通路の幅や高さによっても使える武器も変えなければならないだろう。

洞窟内の温度や湿度、その他…。」

ガイドは聞き流しながら心の中で呟く。

「(これ絶対長くなるやつだ…。)」

狩人は話し終わるとガイドの方を向く。

「…といった情報が欲しいのだが、中はどうなっている?」

内容を聞いていなかったガイドは問いを投げ掛けられ困惑する。

白魔術師は呆れた様子で告げる。

「校長先方の話じゃないんだからちゃんと話は聞かないとダメだよ。」

忍者が乗っかる。

「うん、まったくだな。」

賢者が全力で乗っかる。

「そう。まさにそれ。間違いない。」

狩人が3人に冷たい目を向ける。

「そうだな。今の言葉を数日前のお前たちに聞かせてやりたい。」


一同は洞窟の入り口の少し手前で作戦を立てる。

ナイトがガイドに聞いた内容を確認する。

「高さは電車の天井と同じぐらいってことはだいたい2m30cm位か。高くもないけど低すぎるという程でもないな。幅の方は電車の横幅2つ分ぐらいあるか。十分に広いな。」

白魔術師が武器を振り回す。

「武器は存分に振れるね。」

狩人が冷静に指摘する。

「天井にはぶつかるから絶対振りかぶるなよ?お前の力で天井を叩いたら大崩落しかねないからな。」

ナイトが続ける。

「洞窟を普段利用するときは40mぐらいの地点までしか潜らないから洞窟の本当の最奥の深さは不明、か。

つまり規模については何も分からんということだな。」

ナイトが妙にやる気を見せているのを疑問に思い賢者が尋ねる。

「お前、洞窟好きなのか?」

ナイトは待っていたと言わんばかりの調子で答える。

「そりゃそうだ。

一般に道具職人は力作が呪われてしまった場合、そのかけた情熱の分、壊すという選択肢は選びにくくなる。

だが当然売るわけにもいかずどうするか思案した末に選びがちな解決手段は、人目につかない場所に放置する、ということだ。

その候補に上がる二大拠点は、森の奥深くと、そして洞窟だ。

とびきりの逸品に出会える可能性が高いんだから、そりゃテンションも上がるってもんだ。」

白魔術師が少し興味を持つ。

「へえ、そうなんだ。今までではどんなのが見つかったの?一番いいやつは?」

ナイトは自慢気に話す。

「そうだな…一番いいやつか。

やっぱりアビシニアン郊外にある洞窟で見つけた、この…オーガキラーだな。」

白魔術師はナイトが取り出した剣を見ながら尋ねる。

「これはどんな呪いなの?」

ナイトは剣を鞘から抜く。

「こいつは、作者が意図しない効果が付随したのではなく効果が強すぎて呪いの武器に認定されたという珍しいタイプの武器だ。

武器の製作者が購入者から、大きなオーガを切りつけると武器が引き抜けなくて持っていかれてしまう、という苦情を受けて、オーガに対する凄まじい切れ味と、万が一持っていかれても手元に戻ってくるという効果を付与した武器だ。」

白魔術師が感心する。

「へえ、すごいじゃん。でもどの辺がダメだったの?」

ナイトが解説を続ける。

「手元に戻ってくる力が強すぎたんだ。出来上がったはいいが、朝も昼も夜もなく、ちょっと手から離すとすぐに製作者の所に飛んで戻ってくる。つまり、日常のどんな場面でも剣を手放せないということだ。

剥き身の剣を持ったまま風呂に入ったり寝たりするのを想像すればいかに日常生活を送るのが困難になるか容易に分かるだろう。

製作者は困り果て、とりあえずの対応として鞘を作ったのだが、たまたまそれが正解だった。

症状は見られなくなり、鞘に納めた状態ならば飛んで戻ってくることは無くなった。

だが当然そんなものを世に出す訳にはいかず、かといって破壊するふんぎりがつかなかった製作者は剣を近郊の森の奥に捨てた。

だが事件は数日後に起きた。」

ナイトは少し間を空ける。

その隙を突き忍者が割り込む。

「ゴクリ。」

すかさず賢者が突っ込む。

「それ口に出して言うセリフじゃないだろ。」

ナイトは気を悪くしたのか少し前から再開する。

「破壊するふんぎりがつかなかった製作者は剣を遠い都市の近郊の森の奥に捨てた。

…だが事件は数日後に起きた。

近所がなにやら騒がしいことに気づいた製作者が、何が起きているか様子を確認するために玄関の扉を空けると、そこには信じられない光景が広がっていた。

なんと捨てた剣が地面を引きずるようにしてひとりでに移動していたんだ。

剣はまっすぐに製作者の方に向かって来て、製作者のもとにたどり着くと活動を止め普通の剣に戻った。

製作者は恐怖に駆られ、より遠い森に破棄したが結果は同じだった。

困り果てた製作者はダメもとで洞窟の中に廃棄してみた。

すると不思議なことに今度は戻ってこなかった。」

ナイトは一呼吸置く。

「ここからは私の推測だが、森だと帰ってこれて洞窟だと帰ってこれない所を考えると、恐らく位置情報を掴むのに使用しているのは『電波』だ。」

賢者がすかさず突っ込む。

「携帯電話か!」

忍者が真剣な様子で尋ねる。

「鞘から外した状態だと手放してからどのぐらいで戻ってくるんだ?」

ナイトは不思議そうな顔で答える。

「手元を離れてから戻る動作に入るまで10秒くらいだな。その後は、人が走るぐらいの速度で戻ってくるけどそれがどうかしたか?」

忍者は真剣なままさらに尋ねる。

「つまり、私が敵に投げたとして、相手にちゃんと刺さったあと取りに行く手間無く手元に戻ってきてくれる、という解釈でいいのか?」

ナイトは察した様子で答える。

「その通りだ。もしそういう風に投擲が得意なジョブに就いた人物が使ってくれるのならこの武器はきっと喜ぶだろうな。」

そう言うとナイトは忍者に剣を投げ渡す。

「うまく使えよ。」

忍者は受け取った剣を鞘から抜き刀身の状態を確認する。

「ああ。存分に使わせてもらうよ。」

忍者は賢者の方を見る。

「普通こういうのってどんな作品でも直後に役立つよな。忘れずにフラグ立てておいてくれ。」

賢者がすかさず突っ込む。

「知らないよ、作者に言え!」

忍者は剣を鞘に納めると、ナイトに疑問を投げかける。

「オーガ退治の時はなんでこの剣を使わなかったんだ?」

ナイトが当たり前だと言わんばかりの様子で答える。

「みんなが注目していたからな。大剣の方が格好がつくし目立つだろ?」

賢者が静かに突っ込みを入れる。

「そうか。目立つことが第一目標とか、発想が迷惑系ユー○ューバーとかと変わらんな。」


賢者がガイドに確認する。

「さて、そろそろ中に入りたいんだけど準備はいいかい?」

ガイドは息を吸い込む。

「大丈夫です!いつでもどうぞ!」

「どうぞ、じゃねーわ。先導するのはお前だろ。」

ガイドは慌てて洞窟へと入っていく。


ガイドの先導で、一行は湿度が高い洞窟の中を進んでいく。

若干の起伏がある道をガイドは慣れた様子で進んでいく。

「面白い方々とご一緒できて楽しかったです。これで未練も無いです今」

すぐ後を歩く白魔術師が軽く笑いながら答える。

「なに老人みたいなこと言ってるの。まだまだ人生長いんだから楽しいことなんて山のようにあるよ。」

「そうは言っても農園から離れることは出来ない身ですから。いつ命を狙われるかという不安だけです。」

狩人が横から口を出す。

「別に出ていっちゃダメっていう決まりも無いんだろう?独立して働けばいいじゃないか。」

ガイドは足を止めることなく前を向いたまま答える。

「独立すると告げたところで、内部事情を知っている人間を無事に送り出してくれると思いますか?」

白魔術師がガイドに静かに語る。

「自分で自分の人生を諦めるのはまだ早いよ。

 自分が自分を諦める順番は、一番最後。

 諦めたらそこで、何だったか忘れたけど終了だよ。」

賢者が突っ込む。

「試合、な。そこ忘れる奴あんまりいないんだけどな。」

狩人が白魔術師に続く。

「どうにかしようと思い続けていないから色々見逃すんだよ。

お前は今がどんな状況か分かっていない。

今この瞬間、お前は誰の監視も無く外部の人間と自由に接することができ、しかも生きて戻らなくても何も疑われないという千載一遇、この先あり得ないかもしれない機会を得ている最中なんだぜ。

せっかくのチャンスだが、お前は普段から考えて無かったから、気づいてもいなかったし当然どうすればいいかなんて分からないんだろう?」

そう言うと狩人は何も言い返せないガイドの背中を叩くと声を張る。

「私たちに任せておけ!絶対に助けて見せるから!」

そう言うと狩人は洞窟の奥の方に向けて歩き出す。

賢者が慌てて追いかける。

「お前いつもそんな調子がいいこと言って結局方法考えるの私じゃないか…。」

忍者もあとに続く。

「やれやれ。こうなるとは思ってたけど、

思ったより早かったな。」

白魔術師が追いかける。

「真っ黒な話ばっかりだったからだいぶ不満が貯まってたんでしょ。昔から正義感強くて、それでもって困った人は放っておくことができないんだから…。」

ナイトが呟く。

「ハハッ。農園に入る前に、何があっても我慢しろ的なことを言ってたのは、どうやら私に向けでは無かったようだな。」

ガイドは先を行こうとする4人を呼び止める。

「お待ちください。皆様にご迷惑をお掛けするわけには…。」

ナイトはガイドの頭にポンと手を置く。

「テスは人生経験が少ないから分からないかもしれないけど、困っている人を助けたいと思うのは義務感から来るものじゃない。助けたいという気持ちだ。当然、人により大小はあるけどね。

助けたいから助ける。自分の意思、欲求で助けたいと思っているのだから見返りなんて求めちゃいない。

 だけど、テスが後ろめたい、または恩に報いたいと思うのであれば、手始めに、勢いに任せて前に行ったものの先導がなく立ち往生している4人を助けてやってくれ。

あと、ルーネイト、うちの狩人には後でもいいからお礼を言っておくんだよ。」

ガイドは、軽くうなずく。

「うん、分かった。ルーネイトにお礼を言ってくるね。」

そう言うと先頭集団の方に駆け出していったが、途中で止まり振り返る。

「どうもありがとう。」

そう言うと再び先頭集団の方に駆け出す。


白魔術師は歩くスピードを上げ先導するガイドに追いつくと尋ねる。

「この洞窟から無事に出られたら何をしてみたい?ITエンジニアとか?」

ガイドは少し悩んでから答える。

「今まで本気で考えたこと無かったから…。でもITエンジニアも何かかっこ良さそうでいいかも。」

白魔術師は即座に否定する。

「それはやめた方がいい。ホントに。絶対ダメ!ダメ。それだけは絶対ダメ…。」

「えっ…。じゃあなんで例に挙げたの?」

ガイドは一呼吸入れると続ける。

「みんなみたいに、いろんな場所を回って色んなことを知りたい。でもそんなことより…。」

一瞬ためらったがハッキリと告げる。

「農園の同じ立場のみんなを助け出したい。あと、理由は分からないけどよそから来て外に出ることを許されず働いている人たちも。

具体的にどうすればいいかは分からないけど…。」

ガイドがふと横を見ると、いつの間にか賢者が追いついていた。

「お前の願いを叶えるのに必要なものは3つだ。

まずは具体的な解決方法。これが無いと何も始まらない。

問題点を喚き散らすだけで解決案を提示しない自称活動家なんてものも存在するが、結局何も解決はしない。同じ無用な自称活動家を増やすのが関の山だ。

何も具体的な行動はできず手持ち無沙汰になり芸術品を破壊して自分の要求をアピール、なんてのをテスも見聞きしたことあるかもしれないけど、痛々しい限りだろう?

実害があるだけ駄々をこねる幼児より始末に悪い。

ああならないように解決策は自分で用意するんだ。時間をかけてもいいから実現性のあるやつをね。」

白魔術師が尋ねる。

「へえ。じゃあ残り2つは?」

「なんでお前の方が食いつくんだよ。まあ、いいや。

次に必要なのは金だな。これは解決策とセットだな。

どんなに解決策が拙くても金があればカバーできる。」

白魔術師が乗っかる。

「金は命より重いって偉い人が言ってたもんね。」

「その人、別に偉くねえわ!会社の中でポジションが高いだけだぞ。それに今回の場合それだと本末転倒だろ!」

「でも焼けた鉄板の上で土下座できる人だよ?」

「もうそっちの話はやめろ!あの漫画は信者が多いから敵に回すと命の危険がある!」

ガイドが話を元に戻す。

「えっと、最後の3つ目は?」

賢者は落ち着きを取り戻す。

「最後は人を動かす力だな。人間、一人ではやれることに限界がある。

どんなにいい策であっても自分が死に金が尽きればそこでおしまいだ。

同志を増やして、活動を未来につないだりあるいは社会のルールや意識を変えたりしないといけない。

義務教育を終えたばかりで右も左も分からない、なんていう今の状態は、社会に訴えかけるという点においてほぼ無力に等しい。

どんな分野でもいいから実績を積み信頼と信用を得る、というのが最初の一歩だろう。」

賢者は一呼吸置いて続ける。

「まとめると、だ。

テスがやらなければならないことは、見聞を広め問題の根本を理解し対処方法を考えるということ。

そして金と社会的な地位。富と名声と言ってもいいだろう。

ほとんど創作世界で、求めることになぜかいいイメージを持たれない物を追い求めなきゃいけないってことさ。」

ガイドは少し考え込む。

「つまり、読者の好感度は捨てろ、と…。」

「どこ気にしてるんだよ!」


しばらく進むと、急に開けた場所に出る。

ガイドは足を止めて説明をする。

「ここがゴミの不法廃棄の場所として使っていた場所。ここより先は未知の領域だよ。」

忍者が周囲を見渡す。

「随分と綺麗だな。何一つ無い。綺麗すぎる。」

狩人が同調する。

「ああ、そうだな。いよいよ始まったってことか。」

賢者が不思議に思い尋ねる。

「どういうことだ?てかお前たち2人の組み合わせだとガチなのかネタなのか分からないんだよ。」

忍者が剣を抜く。

「不法投棄されていたものが野菜や果物とはいえ、微生物に分解されるのには相当な時間がかかるはずだ。

ここには何も無い。ということは、だ。」

ナイトは、特に必要性を感じていなかったがなんとなくノリで剣を抜く。

「既に敵のテリトリー内ってことか。」

忍者が答える。

「そうだ。お釈迦様の手の中の孫悟空みたいな感じだ。」

ナイトは困惑しつつも返事をする。

「…うん?まあ、そうだな。」

忍者が首をかしげる。

「孫悟空を知らないか?」

ナイトが答える。

「いや、ごめん。

それが本家だって知ってるけど別の人物が頭に浮かんでスッと入って来なかった。」

忍者はどういうことか理解したのか即座に乗っかる。

「なんにせよ、ここから先はいつ襲われてもおかしくないって訳だ。オラ、ワクワクしてきたぞ!」

賢者がすかさず突っ込む。

「おい、それ以上はやめろ!金髪の超人たちを差し向けられたら勝ち目なんて無いんだからな!」

白魔術師が普段と変わらない様子で軽くため息をつく。

「結局先に進むしかないんでしょ?早く進もうよ。」

狩人も同意する。

「そうだな。ここからは敵の攻撃を頭の片隅に置きながら、にはなるけど、進むしかない。」


さらに奥へと進もうとする皆を賢者が制する。

「待て!進むのはここまでだ。」

狩人が疑問をぶつける。

「なぜだ?止まる必要なんか無いだろ?」

賢者は苦い顔をする。

「…今回はもう尺が無い。この先は次回だ。」

狩人はふうと息を吐く。

「それなら仕方ないな。」

賢者は暗いトーンでさらに続ける。

「それに伴い、謝らなくてはならないことがある…。」

一同は固唾を飲んで賢者の言葉を待つ。

「ここで切るということはつまり…前話の『次回の予告』の所まで届かずに今話が終わるということだ…。」

白魔術師が小声で呟く。

「そんなことある?普通予告って次話の真ん中か前半ぐらいの想定の内容で書くよね?最後までそこにたどり着かないとか…。

明らかにいらないくだりとかいっぱいあったよね?削ればいいじゃん!」

賢者は申し訳無さそうに答える。

「すでに削った後だよ…。」

白魔術師は呆れた様子で呟く。

「やれやれ。それじゃあ無理だね…。」

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