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スピン  作者: REXULTI
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パワーポイント

その駅━━駅は蒸気機関が吐き出す煙で白く濁っていた。

光の乱反射がまるでその空間を構成する有機物無機物に憚らず溶け込んでいた。

その外━━外では列車の出発を見守る少女と本から目を離しこちらを見つめる母親が画面一杯に映し出されている

母親が━━見る先には草原に佇む納屋が

彼女はその納屋に決して辿り着くことはできない。

彼女は地に伏し、自らの体を月桂樹に変えた。

側にいた何者かがその枝を折り、冠状に編み頭へ被る。

少女が━━少女の目線の先は最早駅ではなかった。

濃い蒸気が雨と混ざり合いその鉄道は無限遠点に向かい進む。

光学的視覚の限界を超えて輝くボイラーの炎は絶えることはない。

それを彼らはバルコニーから見下ろしていた。

彼らの体は両面釘打ちされた木版でできてた。

その階下では老画家がそこから見える風景を描いていた。

その絵画は━━その風景の現実そのものだった。

眼下に見える人人はロウソクが消える瞬間に生じる煙のように儚く荒い画素のままそこにいた。

その人の群れに凝集した所がある。

その群に向かって男がスーツケース内の缶詰を売り込んでいた。

その缶詰は━━金と同じ価格設定がなされていた。

そのセールスマンは声を張り上げる。

この缶詰を買えば今までにない経験ができる。

そして男は紙を取り出した。

そこには一定間隔で32個のキャンベルスープが並んでいた。

軽快な足音が後ろから聞こえ、そのスーツケースを掻っ攫って行った。

その少年たちは"NO SWIMMING"と書かれた看板を背景に服をはだけながら逃げていった。

後に残されたのは水辺だけである。

水辺では━━裸の女たちが全体として幾何学模様を形成するように配置されていた。

睾丸主義で彩られた彼女たちは近づくにつれ肉のマッスを帯びていく。肉体には芳醇な香りが漂い空間を視覚的に充填する。

女たちの持つニンフェット性は時が経つにつれ、彼女の肉体と不可分になり、最終的に局在化された単純な集合体に分解される。

水辺を縁沿いに行くと二本の背の高いヤシの木を目印に

薄いピンクに着色されたモダンな建築物が見える。

その家のプール━━備え付け━で水飛沫があがる。

プールの波はやがて何も起こらなかったかのように静まり、POW!誰も上がってくることもなかった。

それの水面を━━水面を覗く者がいた。

彼はかなりの美貌を持ち、自身もその美しさは石すら魅了することができると自負していた。

彼は水面に映る自身の優美に見惚れその場で釘付けとなっていた。

彼のいる空間が黒く塗りつぶされ消失しまるで発光してるかのように自然に生まれ持った媚態が浮かび上がる。

筋のしっかりとした鼻梁、厚い唇、リンボーに取り憑かれた落ち窪んだ眼窩、堀の深いその顔を覆う繊細なキアロスクーロ。

その水鏡はそれらのフォーンレット性を違うことなく描きだしていた。

それを盗み見て半裸で***行為を行う男がいた。

***━━***する男を特徴づけるものは首輪しかなかった。

その顔を削り取られた男はダボダボのブリーフの間から自身の***を***していた。

やがてそれにも飽き重く垂れ下がったブロブを恭しく抑えつつ背を向けた。

肉薄するキッチュが輪郭を━━現象との関わりを━━失い肉であることしか確認が取れないようになった。男はそのまま重力に逆らえず横になった。

遠くで警笛の音が聴こえる。その帆船は寒暖色のはっきり別れた点の集合によってぼんやりとしか捉えられなかった。沿岸にはいつしか大量の船が停留していた。水に写るその姿は線形v.非線形/微分−可能v.不可能を往復し、固着していた。

時間が経ち帆船から汽船へ、錯乱した空気と光の破片が極彩色に塗り上げられ山積みになり、色彩を失なったフォルムが解体され分裂した細部の静物は意味が文字に散漫し、樹木を型どった線がデカルト座標系に沿って伸長分岐を繰り返すにつれ、建築物としてのユークリッド空間は吐き出され統合され一つの正四角の深淵となった。

その覗き窓の奥に目をやると、薄らクリーム色のデフォルムが見える。それは女の裸体のようだった。

光源は彼女の片手に握られたガス灯。そこからの光が彼女の恥部を血抜きを終えた精肉のように新即物的に照らし出していた。

穴を通ってタブローとの間の暗室(キョスウ)(Камера обскура)に入る。

入口は赤方偏移を伴い遥か後方に消えていった。

眼前に肉が顕在している。

エロース(女性としての初項である2)とタナトス(男性としての不幸の素数である17)━━突如、その蜜壺に入りフロイト的退行し、母体の━━子宮の━━空虚を埋め(putto on)たい欲求に駆られる。

女体の裸肢がアッサンブラージュされたシャム双生児のように連結したその肉は凌辱に抗い、

アブサンに理性が浸され黒胆汁(メランコリー)以外の精神を緑衣のミューズに剥奪された泣き顔の人面蜘蛛の如く、球体関節をコキュコキュ(寝取られ男)と鳴らしながらのたうちまわりやがて茶ぶちのビーファロになった。

その畜牛はがっしりとした体躯で褶曲し迫り上がった路地に足をつけ草を食んでいた。

辺縁━━は空は赤く海は黒く染まる。

岩━━自身の丈を超す岩を押しつつこの傾斜を上がるのは容易ではない。人は強酸を射精する男根に捕まり、帰還不可能(ゲームオーバー)なヴァニタスの島へ白装束の箱舟の上の箱に簒奪され奉納され簡単に臨終(つい)えることはできても・・・

岩を押し上げながらよじ登ると頂上に到達する直前で岩は転がり落ちていく。

毛深いテッポウに五指を突っ込みイチボを鷲掴みに谷間をガバッと押し広げると黒いレースグローブをしたきめ細やかで官能的な(恐らく)淫婦の無数の腕が飛び出してきて首元や頭、肩、腕を掴み中へ引き摺り込んだ。

そこはcomfyな寝室だった。壁紙は青く、掛け布団は赤い。

歪んだ遠近法によりまるでベッドが消失点に引き寄せられるかのように引き伸ばされていた。

握りしめた右手のひらに固い感触があり、開いて見ると青と赤の錠剤が一錠づつあった。

サン=ラザール駅 (クロード・モネ)

鉄道 (エドゥアール・マネ)

クリスティーナの世界 (アンドリュー・ワイエス)

アポロンとダフネ (ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス)

雨、蒸気、スピード-グレート・ウェスタン鉄道 (ウィリアム・ターナー)

マネのバルコニー (ルネ・マグリット)

モンマルトル大通り、冬の朝 (カミーユ・ピサロ)

Manchester City vs Sheffield United (LSロウリー)

芸術家の糞 (ピエロ・マンゾーニ)

キャンベルスープの缶 (アンディ・ウォーホル)

No Swimming (ノーマン・ロックウェル)

大水浴図,1906 (ポール・セザンヌ)

浴女たち (ピエール・ルノワール)

豪奢、静寂、逸楽 (アンリ・マティス)

A Bigger Splash (デイヴィット・ホックニー)

スイート・ドリームス,ベイビー! (ロイ・リキテンシュタイン)

ナルキッソス (カラヴァッジョ)

Chinese Restaurant Mogul Zhang Lan Spent Millions at Christie’s (マルティン・キッペンベルガー)

裸体の男、背面 (ルシアン・フロイド)

Lying Figure (フランシス・ベーコン)

The Port of Marseille (ポール・シニャック)

Port of Trieste (エゴン・シーレ)

The Arrival (C.R.W. ネヴィンソン)

Fruit Dish and Glass (ジョルジュ・ブラック)

灰色の樹 (ピエト・モンドリアン)

Plastic garden (テオ・ファン・ドゥースブルフ)

黒の正方形 (カジミール・マレーヴィチ)

(一)水の落下、(二)照明用ガス/が与えられたとせよ (マルセル・デュシャン)

Homage to the Square (ヨーゼフ・アルバース)

世界の起源 (ギュスターヴ・クールベ)

Je rampe vers Gehamman (ピエール・モリニエ)

the doll (ハンス・ベルメール)

メランコリアⅠ (アルブレヒト・デューラー)

La Muse verte (アルベール・メニャン)

The Crying Spider (オディロン・ルドン)

Ajax (ジョン・スチュアート・カリー)

道路と土手と堀 (岸田劉生)

シーシュポス (フランツ・フォン・シュトゥック)

ゼノモーフ (H・R・ギーガー)

PA_689 (インベーダー)

死の島 (アルノルト・ベックリン)

アルルの寝室 (フィンセント・ファン・ゴッホ)

Raised fist (赤色戦線戦士同盟)

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