え?
「このコーヒー、結構熱いなあ。でも、アリサちゃんが喜ぶなら!」
僕は両手で熱いコーヒーを持ちながら急いだ。海を眺めている後ろ姿のアリサちゃんが見えてきた。海風にそよぐ栗毛色の長い髪、白い波にも負けない白い肌!まさかマッチングアプリでこんなかわいい子に会えるなんて!超当たりだ!!
少し手前で一度立ち止まり大きく息を吸った。
「アリサちゃん、これ!このコーヒー、熱いから気を付けて」
風にそよぐ髪を軽く押さえながら振り向いて
「あ。ありがとう。隼人さんって優しいね」
ニッコリしてくれた。コーヒーを渡す時に少しアリサちゃんの白い手に触れた。柔らかい!ビリビリッと電気が走った。【この子の為なら僕は死ねるかも!】本心から思えた。
「い、いや、そんなこと無いよ。でも、実際にアリサちゃんに会えてよかったよ」
僕は熱い事も忘れてコーヒーを一気に口に入れた。言うまでもなく口の中が……あっ!……で、でも、何食わぬ顔でいた。
「そうよねえ。いつもラインや電話だけだったけどね。でも、私も今日、実際に隼人さんに会えて……よかった気がする。何でも言える気がするの」
アリサちゃんが一歩僕に近づいて再び笑ってくれた!僕の人生25年。彼女がいなかったが、それは、アリサちゃんに会うために僕は待っていたんだと今、確信した!
「でも、アリサちゃんみたいなかわいい子だと、もっとたくさんの男と会っているんでしょ?」
僕はアリサちゃんが今、誰かと付き合っているかどうかに探りを入れてみた。
「そんな事ないですよ~。でも、う~ん、確かに会ったりもしたけど、次の連絡が来ないの……私、魅力無いのかなあ……?」
小さく呟き、少し俯いた。【ええっ!こんなかわいい子が!?そんな事があるなんて!さては相手は宇宙人?地球人なら全員、絶対!】僕は真剣に驚き、見つめてしまった。この間にも【俯く顔もやっぱりかわいいなあ!】見惚れていた。
「私の事……みんな、受け入れてくれないのかなあ?」
「そんな事は無い!僕は絶対アリサちゃんの全てを受け入れます!」
僕はつい声を荒げてしまった。周りの人たちが一瞬振り向いたが、気にもせず、真剣にアリサちゃんの眼をジッと見た。
「ありがとう!隼人さんって本当にいい人ですね」
アリサちゃんも見つめ返してくれた。何て綺麗な瞳なんだ!アリサちゃんの瞳の中に映る自分に酔いしれてしまった。
「アリサちゃん!なんでも僕に言ってよ!何でも受け入れるから!」
その言葉に嘘は無かった!
「やっぱり隼人さんに会えてよかったあ。じゃあ……実はね、私……1年前までは男の子だったんだあ」
今日一番のアリサちゃんの満面の笑みを見た。
「……え?」
ようやく口の中が火傷でヒリヒリしてきた。僕の脳にビリビリっと電圧の高い電気が直撃した?耳に入ってきた地球の言葉もうまく理解できなかった。と同時に、持っていた熱いコーヒーが手からスルッと離れ、今日の為に買った新しいシューズに向かって落下して……。
「熱過ぎだろーっ、このコーヒーはーっ!!」
海に向かって叫ぶしか……なかった……。
了