1,再会
しばらく泣き崩れていたマリスだったが、やがて落ち着いたのかその顔を朱に染めながら改めて椅子に座り直した。そして、俺とランスを同じ席に座るよう促してきた。
取り合えず、俺とランスも黙って席に座る。最初からマリスと同席していた少女がしげしげと俺の顔を興味深そうに見つめてくる。少し、居心地が悪い。
周囲の人たちも、俺たちを興味深そうに見ている。
「えっと?貴方が以前からマリスの言っていたスレイくんかな?あ、私の名前はホリィ。知っての通り彼女の名前がマリスだよ。改めて君達の名前を教えて貰えると助かるよ」
断られるとは微塵も考えていない様子。まあ、別に断るつもりはないが。此処で断ったりしたらどうするつもりだろうか?
試すつもりは無いが、興味はある。
「知っての通り、俺の名はスレイだ」
「俺の名はランサドール、一応スレイとはパーティーを組んでいる。よろしくな」
俺達の名乗りに対し、ホリィは満足そうに笑みを向けた。
そして、恥ずかしそうに黙っていたマリスだったが俺の方をじっと見ながら問い掛ける。
「えっと、スレイは今まで何をして過ごしてきたの?これまでの事を聞きたい、かな」
そう上目遣いに聞いてくる。思わず黙り込むが、しかし黙っていても進まないだろうと思いやがて俺は口を開く事にした。
何より、俺もマリスとの再会を喜んでいる事だしな。
「あの時、魔物の群れに村が襲撃され俺以外の住民は皆殺しにされた。けど、俺だけはどうやら奇跡的にも助かったらしい。死ぬ寸前に、俺自身の固有宇宙に目覚めて」
「スレイの、固有宇宙?」
マリスの言葉に、一先ず頷いておく。
現段階でマリスに俺の能力は話さない。しかし、話せる最低限は此処で話しておく。
「固有宇宙の力によってぎりぎり生き延びた俺は、師匠の手により救われ拾われた。そして、そのまま師匠と共に修行をしながら旅を続けていたんだ。ランスとは、その過程で出会った」
「その師匠って?」
「師匠についてはあまり知らない。ただ、此処とは違う世界からある目的で来たらしい」
「その目的については聞いている?」
何だか、尋問じみてきたな?
「師匠は、どうやらある存在を打倒するために俺に会いに来たらしい。どうやらその存在がこの世界に魔物が増えた原因らしいな」
俺の言葉に、マリスとホリィが目を見開いて驚いた。ホリィが食い気味に聞いてくる。
「ちょ、ちょっと待って!もしかして、世界に魔物が増えた原因について知ってるの?」
「ああ、聞いている。俺達は今、そいつを打倒する為に旅をしているんだ」
「そいつについて、情報を開示出来る?」
食い気味に問うホリィに、俺は首を横に振った。
「今此処では無理だ。人が多すぎる」
「あっ……」
見れば、周囲の人たちがこっそりと聞き耳を立てていた。瞬間、マリスとホリィが恥ずかしそうに身を縮こませて椅子に座り直した。