エピローグ
とある樹海の奥地。魔物が跋扈する廃墟の城で……一つの戦いに終止符が打たれた。
燃えている。廃墟の城は炎に包まれている。廃墟の城は壮絶な戦いの痕跡が残されており、その中央には漆黒の外骨格に身を包んだ人型の魔物が剣を突き立てられていた。
漆黒の魔物は、短い断末魔を上げ崩れ落ちる。しかし、魔物を討ち取った少女に達成感というものは欠片も存在しない。むしろ、虚しさばかりが押し寄せるのみだ。
少女は漆黒の魔物の死骸を前に、膝を着き泣き崩れる。
どうしようもない想いを、涙と共に吐き出す。
「…………ねえ、君の仇は取ったよ?魔物は倒したよ?」
胸に押し寄せる虚無感。締め付けられる胸を押さえながら、少女は。勇者マリスは嗚咽を零しながら言葉を吐き出す。何よりも大切な少年への想いを……
漆黒の魔物によって無惨に殺されたスレイという名の少年への想いを吐き出す。
「だから、ねえ!帰ってきてよ……私をもう一度抱き締めてよ…………!」
しかし、少年は其処には居ない。当然誰も抱き締めてはくれない。
悲しみに打ちひしがれる少女は。孤独な勇者は炎の廃城で一人、絶望の泣き声を上げた。
誰も居ない炎の廃城で———
悲しみと絶望に胸を引き裂かれながら———