表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖約のスレイ  作者: ネツアッハ=ソフ
1,はじまりの契約
5/23

4,無と契約の宇宙

 話を()えたシリウスは、火の中に枯れ木をそっと()げ入れた。その表情は真剣そのもの、真実を知るからこその強い使命感(しめいかん)のようなものを感じる。


「それで、そのはじまりの怪物(かいぶつ)が……固有宇宙が世界に広がった原因ですか?」


「………いや、確かに(やつ)はきっかけではあるが直接的には僕が原因なんだ」


「…………?」


 どういう事だ?疑問(ぎもん)を感じる俺に、シリウスは苦笑を()かべながら続けた。


「確かに、固有宇宙が世界に広がったのはそいつが人類に進化(しんか)の可能性を与えたからだ。けど直接的に固有宇宙が世界に広がったのは僕が原因なんだ」


「……えっと?つまり、直接的な原因はシリウスさんだって?でも、何で?」


 俺の疑問に、シリウスさんは(だま)り込む。


 しかし、話す気はあるのだろう。黙って続きを待っているとやがて話し始めた。


「それも、さっき話した奴の……アーカーシャという名の怪物が世界そのものに書き(くわ)えたシステムの一つなんだよ。人類が人類として、霊長(れいちょう)としての進化を果たさねば世界が破綻(はたん)すると」


「世界、が……?」


「そう、人類が霊長としての進化を果たせなければ世界が(ほろ)びを迎える。或いは、人類が進化を果たす事により世界が次の時代(アイオーン)へと更新されるという意味なのだろう」


 それは、つまり———


「シリウスさんは、世界の滅びを回避(かいひ)する為に。人類を霊長として進化させる為に固有宇宙を広げたという事ですか?」


「より厳密に言えば、人類が進化した結果固有宇宙を全人類が()にしたという事だ」


 ……えっと?つまりだ。


 話を(まと)めよう。


 全ての始まりに、何も無い完全な()の中にただ(ひと)りアーカーシャという怪物が居た。


 その怪物は、孤独に()え切れず世界を。そして世界に住まう生命(いのち)を創造した。


 怪物の創造した世界で、人類は無限の進化の可能性(かのうせい)を持っていた。それは怪物が意図して全人類に与えたシステムの一つだったという。


 そして、同時に世界に(ほろ)びという概念を与えた。それは、人類(ヒト)が霊長としての進化を果たせなければ乗り越えられない強固なシステムだったらしい。


 恐らく、それは人類が進化を放棄して停滞(ていたい)する可能性を()む為の措置だったのだろう。


 そして、シリウスさんはそれを乗り越える為に世界を更新(こうしん)したという。その結果、全人類は固有宇宙という異能(いのう)の力を手にしたという事……になるらしい。


 …… ………


「……話は理解したんですが、一つだけ()いですか?」


「ああ、僕に答えられる範囲(はんい)なら(かま)わない」


「どうして、俺にそんな話をしたんですか?もちろん理由があるんですよね?」


「ふむ…………」


 僅かな沈黙(ちんもく)。俺は黙って続きを待つ。


 やがて、シリウスさんは話し始める。ゆっくり、重々しく口を(ひら)いて。


「……それは、お前という人間のみがアーカーシャを(たお)しうる可能性を持っているからだ。契約の固有宇宙を保有し、始まりの()と直結するお前の魂のみが」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ