グランドエンディング
原初世界、何処までも果てしなく広がるその世界の中央で彼は地面に一人座っていた。
彼は……いや、性別すら存在しないその者は果たしてどう表現すべきだろうか?
ともかく、彼は地面に一人ぽつんと座っておりただ星空を眺めていた。一人、ただ微笑みながら原初世界の空に浮かぶ満点の星々を眺めていた。
原初世界を構成する粒子は全て宇宙だ。原初世界の森も、地面も、水も、星々すらもが全て無限の広がりを持つ広大無比な多元宇宙だ。
無限の広がりを持つ多元宇宙が、更に無限大に広がっている。それこそが、この原初世界だ。
彼は、アーカーシャと呼ばれた彼は星々をただ眺めている。彼の持つ神眼はその星々を構成する粒子たる多元宇宙に住まう一人一人の生命すら見通す事が出来る。
文字通り、彼の神眼に視えないモノなど存在しない。無限に存在する多元宇宙の、更に膨大極まりない数が存在する生命の営み。それを眺めて彼は微笑んでいるのだ。
そんな彼に、一人歩み寄る者が居た。シークレットチーフ、そう呼ばれた男だった。
「……ようやく負ける事が出来たようだな?アーカーシャ」
「貴方ですか。そうですね、私の負けです」
「どうだ?敗北した気分というものは」
「そうですね、いっそ清々しい気分ですよ」
そう言って、互いに笑い合った。互いに清々しい笑みだった。
そう、アーカーシャは自身の敗北を認めて。それでも晴れやかな気分だった。やはり、其処は彼なりの想いというものがあるのだろう。常人には理解出来ないものが。
そして、そんな彼を理解しているからこそシークレットチーフも笑みを浮かべていた。
「全ての命は輝く星。その星々が放つ輝きこそを私は愛した……」
ぽつりと、アーカーシャが呟いた。その呟きこそが、彼の本心だった。
全ての宇宙と生命を創造した父であり、母であるアーカーシャ。彼は満天の星々の如く輝く生命たちこそを愛していた。それ故に、そんな輝きが無価値であるなどと認めたくなかった。
その価値を無にしたくはなかった。だから……
だからこそ―――
「私は全ての命を分け隔てなく愛しています。だから、どうか生命達よ。これからもどうかその命の輝きを失う事だけはしないでくれ」
そう、祈りの言葉を口にした……
全ての命は輝く星。そう、それ故に人々は何処にでも行けるのだろう。
その輝きを失わない限り。何処までも……




