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聖約のスレイ  作者: ネツアッハ=ソフ
3,おしまいの契約
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6,帰還

 一体どれほど(たたか)い続けただろうか?それすら分からなくなる程に戦い続けた。しかし、どのような結末を迎えるのであれ何事も何れは()わりが来る。


 そう、(いず)れは終わりが来るものだ。夥しい魔物の()れと戦い続けていた、何時終わるとも知れないその戦いの最中。やがて終わりの時は唐突に()た。


「———っ⁉」


「こ、これは……⁉」


 突如天地を()め尽くす魔物の群れが苦しみ出した。そう思った直後(ちょくご)、その魔物の群れが次々と消滅してそのまま()えていく。まるで、霞か霧のように。


 魔物の群れは断末魔(だんまつま)の声を上げた後、どれもそのまま(はかな)く消えてゆく。


 その光景に、一人マリスはスレイ達の勝利(しょうり)を確信した。


 勝利を確信はしたが、それでも不安は払えない。果たして、スレイは(かえ)って来れるのか?


 そんな不安を感じる中、次々と魔物達は消えてゆく。やがて、最後の一体が消滅(しょうめつ)した時。


 誰かが、(おどろ)きの声を上げた。その騎士は遥か天高(てんたか)くを指差してじっと見詰めている。その指差す先には遥か上空にぽつんと一つだけ存在する黒い(てん)が。


 その点は、やがて大きくなってゆき……


 その正体を(さっ)したマリスは涙を()かべて声を張り上げた。


「スレイっ‼‼‼」


 その声と共に、ズドンと地面に派手に着地(ちゃくち)する何か。そう、スレイだった。


          ・・・・・・・・・


 世界全土を襲った異形(いぎょう)の魔物達。その全てが消滅したのを確認(かくにん)した。


 ようやく訪れた平和(へいわ)を噛み締める人達。そんな中、ソラ=エルピスはたった一人の帰還のみをひたすらに待ち続けていた。そう、四条アマツの帰還を。


 他の皆はアマツが帰ってくることを一切疑っていない。それくらいに、彼は信頼(しんらい)されているのだろうと思うから。


 だが、いや……だからこそ自分だって信じてひたすら()ち続けるのみだ。


 そう思って待っていた。そして、その信頼に(こた)えるのもまた男というものだろう。


 ソラへとそっと歩み寄る一人の(かげ)があった。


          ・・・・・・・・・


 エルピス伯爵邸。その一室で、彼女は義妹(ぎまい)と共にひたすら彼の帰還を待っていた。


 彼、シリウス=エルピスの帰還(かえり)を。


 彼の帰還を(うたが)ってはいない。しかし、不安に思う気持ちだって確かにある。分かっている、その気持ちにだって嘘偽(うそいつわ)りはない。


 だけど、それでも待ち続ける。一人の義妹と共に、(あい)する彼の帰還を待ち続ける。


 そんな中、一つの朗報(ろうほう)と共に、彼は二人の前に姿(すがた)を現した。


          ・・・・・・・・・


 三人は、それぞれの世界でそれぞれの愛する者に対し同じ言葉を()げた。


 言うべき事は一つだけで良い。たった一言だけで十分だろう。だから、


「ただいま」


 三人は、それぞれの世界でそれぞれの愛する者を前にしてその言葉(おもい)を告げた。

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