6,帰還
一体どれほど戦い続けただろうか?それすら分からなくなる程に戦い続けた。しかし、どのような結末を迎えるのであれ何事も何れは終わりが来る。
そう、何れは終わりが来るものだ。夥しい魔物の群れと戦い続けていた、何時終わるとも知れないその戦いの最中。やがて終わりの時は唐突に来た。
「———っ⁉」
「こ、これは……⁉」
突如天地を埋め尽くす魔物の群れが苦しみ出した。そう思った直後、その魔物の群れが次々と消滅してそのまま消えていく。まるで、霞か霧のように。
魔物の群れは断末魔の声を上げた後、どれもそのまま儚く消えてゆく。
その光景に、一人マリスはスレイ達の勝利を確信した。
勝利を確信はしたが、それでも不安は払えない。果たして、スレイは帰って来れるのか?
そんな不安を感じる中、次々と魔物達は消えてゆく。やがて、最後の一体が消滅した時。
誰かが、驚きの声を上げた。その騎士は遥か天高くを指差してじっと見詰めている。その指差す先には遥か上空にぽつんと一つだけ存在する黒い点が。
その点は、やがて大きくなってゆき……
その正体を察したマリスは涙を浮かべて声を張り上げた。
「スレイっ‼‼‼」
その声と共に、ズドンと地面に派手に着地する何か。そう、スレイだった。
・・・・・・・・・
世界全土を襲った異形の魔物達。その全てが消滅したのを確認した。
ようやく訪れた平和を噛み締める人達。そんな中、ソラ=エルピスはたった一人の帰還のみをひたすらに待ち続けていた。そう、四条アマツの帰還を。
他の皆はアマツが帰ってくることを一切疑っていない。それくらいに、彼は信頼されているのだろうと思うから。
だが、いや……だからこそ自分だって信じてひたすら待ち続けるのみだ。
そう思って待っていた。そして、その信頼に応えるのもまた男というものだろう。
ソラへとそっと歩み寄る一人の影があった。
・・・・・・・・・
エルピス伯爵邸。その一室で、彼女は義妹と共にひたすら彼の帰還を待っていた。
彼、シリウス=エルピスの帰還を。
彼の帰還を疑ってはいない。しかし、不安に思う気持ちだって確かにある。分かっている、その気持ちにだって嘘偽りはない。
だけど、それでも待ち続ける。一人の義妹と共に、愛する彼の帰還を待ち続ける。
そんな中、一つの朗報と共に、彼は二人の前に姿を現した。
・・・・・・・・・
三人は、それぞれの世界でそれぞれの愛する者に対し同じ言葉を告げた。
言うべき事は一つだけで良い。たった一言だけで十分だろう。だから、
「ただいま」
三人は、それぞれの世界でそれぞれの愛する者を前にしてその言葉を告げた。




