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聖約のスレイ  作者: ネツアッハ=ソフ
3,おしまいの契約
17/23

1,それでも諦めない心

「まあ、この結末(けつまつ)は分かり切っていましたけど」


 そう呟くのは、いっそシンプルと言って良いだろう衣服(いふく)を身に(まと)った少年だった。大体10歳かそこらにも見える見た目の少年。衣服は見た目相応の平凡(へいぼん)なもの。


 しかし、その足元(あしもと)に倒れ伏す三人の青年が少年の異彩(いさい)さ、異常さを際立たせている。超然とでも表現するべきだろうか?或いは異質とでも表現すべきか?それとも或いは、そのどちらでも無いか?だがそのどちらであったとしても、やはりこの状況では意味(いみ)はそう変わるまい。


 現在、全多元宇宙で同時に発生した魔物の異常発生。その元凶と戦う為に挑んだ三人の戦士。


 シリウス、アマツ、スレイ。その三人が同時に(いど)んだ。同時に全力の一撃を放った。


 ……そして、その瞬間に気付けば(やぶ)れていた。全くの同時に、全く認識出来ない、それも全く理解出来ない不可思議な攻撃により三人は同時に敗れたのだ。


 意味が分からない。理解出来ない。何だこれは?


 そんな不可解(ふかかい)さ。しかし、そんな事を考えている(ひま)などない。こうしている間にも、刻一刻と陥落していく多元宇宙は()えてゆく。


 この原初世界を構成(こうせい)しているのは、究極集合とも()ぶべき多元宇宙の集合体だ。


 原初世界を構成する粒子の一つ一つが宇宙(てん)であり、木々が、星々の一つ一つが多元宇宙だ。


 原初世界が崩壊してゆく。(くず)れてゆく。


 その宇宙の一つ一つが、消滅していく。それ即ち、この原初世界も刻一刻とその規模を狭めていくという事に他ならない。完全なる虚無(きょむ)が、範囲を広げていく。


 これまでの人類の歴史を嘲笑(あざわら)うかのように、全てが崩壊してゆく。消えてゆく。それはまさしく悪夢というべきかそれとも地獄(じごく)と呼ぶべきか。


 ともかく、此処で(あきら)めれば全てはおしまいだ。


 無論、それを認めるほど三人は諦めが良くない。


「おや?まだ立ち上がりますか。ですが、もう他の全ての宇宙(せかい)も陥落寸前ですよ?貴方がたもそうそうに諦めた方が(はや)いと思いますが」


「僕達が、そんなに物分(ものわ)かり良いと思うか?」


残念(ざんねん)ながら、俺達は其処まで優等生(ゆうとうせい)じゃないんでね」


「……此処で、諦めるという選択肢なんてとっくの昔に()ててきた」


 それぞれが、それぞれの啖呵(たんか)を切って立ち上がった。そんな三人に、少年は笑みを向ける。


「そうですか。では、存分に足掻(あが)いて下さい。そのあがきが無駄(むだ)と理解出来るまで僕は何時までも何時までも付き合いましょう」


「そうか、だがこの世に無駄なものは存在しねえよ」


 そう言ったのは、無銘(むめい)ことシリウス=エルピスだ。


 彼は笑みを浮かべ、全てを覆すべく切り札を切る。


「スレイ、全てを託す。上手(うま)く使えよ」


了解(りょうかい)した」


「概念創造、融合術式起動———」


 そして、シリウスとアマツは光の粒子となり……スレイへと融合。概念的に統合(とうごう)した。


 それは、固有宇宙という概念を超えて新生した新たな異能(いのう)の誕生だった。

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