エピローグ
「陛下、これでどうでしょう?我らは信じるに値しますでしょうか」
「…………う、うむ。確かにそなたらの力はしかと見た。我らもそなたらに協力しようぞ」
呆然とその場に立ち尽くしていた国王陛下に対し、師匠が話しかける。師匠の言葉に、陛下は協力する事を約束した。それに満足そうにうなずく師匠。
中々抜け目ないと思う。けど、これくらいはやらないといけないのが今回の敵なのだろう。実際に黒幕との戦いは今以上の激戦になる筈だ。だからこそ、その戦いは世界全土が総力を挙げて挑む必要があるのだろうと思うし。この程度は仕方がない。
しかし、此処で予想外の出来事があった。
「わ、私も!私も付いていく、スレイと一緒に戦う‼」
「マリス?」
驚いた。思わず、マリスを凝視する。
しかし、マリスの意思は固いらしい。こちらをぎゅっと睨み付けるように真っ直ぐ見る。しかしその決意を挫くように師匠は首を横に振った。
「残念だけど、それは止めて欲しい」
「っ、何で!」
悲痛な表情で、叫ぶマリス。師匠の言葉の後を継ぐように、俺が続きを話した。
「マリス、俺達はこれから決戦に向かう事になる。けど、その間に恐らくは魔物の軍勢が全宇宙の全世界に雪崩れ込む事になるだろう。その数、恐らくは今回とは文字通り桁が違う」
「っ⁉」
その言葉に、マリスだけではなく此処に居る騎士や兵士達全員が息を呑んだ。
当然だ。今の戦闘の比ではない、魔物の大群がこれから押し寄せてくるというのだ。それで絶望しないというのがおかしな話だ。
しかし、だからこそだ。だからこそ、マリスにはどうしても残ってもらわねばならない。
「此処にはランスにも残ってもらう。決戦の地には僕とスレイ、そしてもう一人の計三人で向かう事になるだろうから。だからこの世界は君達の手で守って欲しいんだ」
師匠はそう話を締めくくった。俯くマリス。
そんなマリスに、俺はそっと近付き言った。
「大丈夫だ、必ず俺は帰ってくる。だから、君は俺の帰ってくる場所を守って欲しい」
「……っ‼」
そんな俺に、マリスはぎゅっと強く抱き付いた。鎧越しに感じるマリスの体温。
俺は、そんな彼女を抱き締め返す。しばらく経ち、やがてそっとマリスは離れる。
「必ず、必ず帰ってきて。私も必ず此処は守るから、この世界を」
「ああ、必ずだ」
そう言って、俺はマリスから離れた。




