5,魔軍強襲
「……以上が、私の知った世界の真実にございます」
師匠が話を終えると、場は静寂に包まれる。それも当然だろう。今聞いた話は何もかもがあまりにも規模が大きすぎ、そして出鱈目にも思えるような突飛もない話だから。
しかし、誰もその話を疑う事は出来ない。師匠の語り口が、そして身に纏う空気そのものが彼自身本気である事を如実に表しているからだ。そう、師匠は全て本音で話している。
それ故に、誰も茶化す事すら出来ない。ふざけた態度を取れず、生唾を呑む者すら居る。
そんな静寂の中、緊張した空気を破るように国王が静かに息を吐く音が聞こえた。
「……無論、その話は嘘偽りのない真実なのだろうな?」
「はい、私は一切王の御前で偽りは申しません」
「ふむ、では———」
瞬間、地を大きく揺るがす爆音が響いた。その爆音に、騎士達の動揺が広がってゆく。
その混乱を、国王の大喝破が鎮める。
「静まれ‼‼今の爆発音は何だ!調べてまいれ!」
「その必要はございません」
室内を、師匠の声が響き渡る。結果、国王や騎士達の視線が一気に師匠一人へ集まる。そんな中師匠は平然とした態度で国王に告げた。
「どうやら魔物達が大軍勢を率いて強襲を仕掛けてきたようです。ですがご安心を、この事態も既に想定の範囲内になりますので。我らに事態の収拾を任せていただけませんか?」
「ふむ、出来るのか?」
訝しげに師匠を見る国王。だが、その反応も想定内だと師匠は頷いた。
「疑うお心も理解出来ます。ですので、我らの戦力を知ってもらう為にも我ら三名に事態の収拾を命じて欲しいのです」
その言葉に、誰より驚いたのはマリスだった。
「っ、僅か三名で魔物の大群に挑むつもり‼?」
その言葉は、恐らく半分以上俺の身を案じるものだったのだろう。マリスはきっと、以前俺の故郷が滅ぼされた時のようになるのを恐れている。
だが、その不安を俺は出来る限り優しく振り払った。
「大丈夫だ、俺も以前までの弱いままの俺じゃない。魔物の大群にだって立ち向かえるさ」
「それは…………」
それでも尚、不安そうに俺を見る。
そんなマリスと俺のやりとりを見た国王は何かを納得したような表情で頷いた。
「承知した、どのような意図でその言葉を吐いたかは知らぬが今はそち等に任せるとしよう」
「感謝します、王よ」
そうして、俺達は三人揃って謁見の間を出た。




