前編
コウタくんは、私のお隣さん。
昔から、トンネルが大好きだった。
今でもハッキリ覚えているのが、小さい頃の、ある冬の日の出来事。
「お母さん! 屋根から氷が生えてる!」
うちの玄関の軒下に、氷柱が垂れ下がっていた。私にとっては初めて見る氷柱であり、たいそう興奮したものだ。
滅多に出来ない氷柱が出来るほど、冬の寒さが厳しい一日だったのだが……。
「ナオコちゃん、あそぼー!」
いつものようにやって来たコウタくんは、私の「何して遊ぶ?」という質問に対して、
「公園でトンネル作るのー」
と返したのだ。
公園の砂場で砂山を作って、そこにトンネルを開ける。彼の大好きな遊びであり、それは私も承知していた。
私も喜んで付き合ってきたけれど、それは暖かい日に限った話だ。その時は「こんな寒い日にまで、外で遊ぶのか」と呆れてしまった。
それでも、彼と遊ぶのが習慣になっていたせいか、私は断れず……。
いつもと違って誰もいない公園で、夕方まで二人で遊んだものだった。トンネル掘りそのものよりも、公園を独占できたことが嬉しくて、ニコニコ顔で家に帰ったら、
「まあ! この寒さの中、ずっと公園で遊んでいたの?」
と、母親に笑われたのも良い思い出だ。
そんな私と彼も、今では大学生になって……。