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落掌  作者: 実嵐
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運命と故

「そういえば、加賀美さんが此処に訪れたのは何かしらのわけがあるんじゃないんですか。決意をするにも時間がかかるが、それに迫っているとか・・・。」

須藤は何処か考えこんでしまっている顔とにらんだ。以前あった時に見た顔とは表情が全然違ってしまって戸惑った気がしたのだ。加賀美の見たことのない苦笑いを見せた。

「そうです。俺は今から処刑台とブラックリストの事件の真犯人に会おうとしているんですけど、会う予定に近づいても動けないんです。」

「俺は無理にいいません。貴方が導いた答えを驚いて動けないのだとしたら、背中を押す人間が必要になってくるものです。嘘を言う人間より真実を明かす人間のほうがいいです。俺にはできなかったりするのだろう。」

 須藤の声が届いた彼は椅子から降りた。決意をにじませた顔を何処かに見えない不安と戦っているのだ。時間が迫っているのも事実なのだ。カウンターに金を置くと須藤はいらないといったのだ。

「俺の親父が追ったものを諏訪さんに渡した手紙がいまだに残っていたうえに、その犯人に近づいて会うことにしようとしている人間に俺ができるのはその決意を揺るがすことでもなくて、託すことしかできないんです。」

相沢隆成も何処かかかわりたかったという表情をしていた、崖から逃げたではなくて、分かれ道でその分岐点で逃げてしまった後悔があるのかもしれない。祐樹はカウンターからそっと手を握った。

「貴方に託した未来っていうのは明るいかどうかはわからないです。けど、真実と向き合うことの苦しさは金城さんから聞いています。真実と戦って見えるものに向き合うしか方法がないことも・・・。」

彼からははっきりした声で頑張ってくれと言われた。加賀美に残されたのは向き合う力だったのだと改めて思ってしまった。コーヒーカップに残っていたコーヒーを飲み干して出て行った。アスファルトに残っているかすかにある暑さに耐えきれないほどではないが、迫ってくるものには耐えられないものがあるのだ。とぼとぼと歩いているとふと空を見上げた。澄み切った空が何を問いかけているようにしか思えなかった。空の青さに濁った心を潤すほどの力があることを忘れていたように。空を見上げて歩いていると見覚えのあるビルについた。そこには目的の事務所があった。加賀美は鞄を見つめた。何もなく問い詰めるほどではないのだ。そこには証拠となる資料が入っているのだ。もし処分されたとしても複製が可能なのだ。そんな愚かな行動をしないことも何処かでわかっている。

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