虹のかけ橋
諏訪の言葉を聞いた翌日に弁護士事務所に行くために準備をし始めた。着飾った服で飾るよりかは何時も通の服装に徹底している。下手に服装を変えただけでもばれてしまいそうで怖いということもある。予定の時間になる前に加賀美は須藤哲明が営んでいる喫茶店へと顔を出した。
「ちょっと時間が速いですか?」
「構わないですよ。・・・そうだ、加賀美さんに本格的に紹介したい人がいるんです。」
須藤はそう言ってカウンターから若者を呼んだ。シックな服装をして年齢の割には大人びいて見えた。彼はそっと一礼した。
「兄が貴方の連載を止めてしまったという話を聞いているので何処かで謝りたかったんです。すいません。」
「兄ってもしかして・・・。」
「相沢隆成です。兄は日楽新聞に入ったのはコネで入ったに過ぎないんです。社会部にいても目が出なくて、文化部にいって貴方の連載を請け負った時に重さを知ったそうです。けど、記事は足元にも及ばなかったといっていました。」
彼は名乗るのを忘れていたといって付け加えるように言った。相沢祐樹と言った。相沢の家庭は裕福で会社を興しているのだ。そこが大きくなったこともあって、他の会社も有利な目を見るようにもなかったのだ。隆成は甘やかされて育ったこともあって大学もろくに通っていなかった時期があったのだ。バイトもしていなかったこともあって父親に激怒されて勘当されそうになったのを母親が止めたという光景があったのだ。兄はその系列で新聞社に受かったことを自分の実力と勘違いをしていることを周りは指摘する様子もなかった。
「兄を見てきっとあきれたんだと思います。高校は兄よりもいいところで自分の力で入るといって入ったんです。けど、大学に行っても専門学校に行っても何も見いだせなかったらつまらないと思っているんです。俺にはコーヒーという興味があるものができたので、突き止めることにしたんです。決断するのには時間がかかったんですけど・・・。」
彼は照れ臭そうに髪を掻いた。海外に出ることに今更ながらに躊躇してしまったことにも後悔してしまった。
「兄のことも気になるでしょう。兄は小さな出版社の人事を担当しています。記者に戻れるかはわからないみたいです。その会社は常に日楽新聞を取っていて記事を見たことをあるようで、文才がないからといわれているみたいです。」
鍛えるほどの金も持ち合わせていない会社なので人事に入って人を見る目を養ってほしいといわれているのだ。その言葉に抵抗しかけたらしいが、その会社の社長が君にはその道くらいしかマスコミに残れないじゃないのかとも言われたのだ。
「兄を注意した初めての人ですよ。そのこともあって人事をしているんです。新たに決意をしているようです。逃げ出さないと・・・。」




