音のない部屋
数日後に沼田に呼び出された。沼田が友人にせかすように言って早めに終わらせてもらったのだという。彼女に呼び出されたカフェはパフェが豪華であることで有名な店だった。彼女は加賀美より早めに来て席を取っていたのだ。
「すいません。お待たせしました。」
「いいのよ。どうせ私は今日、休みだからといって簡単に休む気になれなかっただけなの。携わっている事件が終わりも見えないし、嫌になちゃうのよね。」
ショッピングモールの事件においては全くと言いほど警察が機能してないのだ。防犯カメラを壊されてしまっていることもあって警備会社に頼んで映像をもらったとしても不可能に近いのだという。店員が雰囲気を見て声をかけてきた。沼田はパフェとコーヒーを頼んだ。加賀美はコーヒーだけを頼んだ。
「しょせん、新聞社とかマスコミってたたかれる世界にいるわけじゃない。何処で誘導しているとか監視を受けるような感じじゃない。真実を書くことに意義を感じているのよ。週刊誌みたいにゴシップを書いているときはわけが違うから。ただ事件を解決するまで追いたくなるのよね。別の事件へと進みたくないの。終わりを見た後に進んでいる感じもするし・・・。」
沼田が言いたいことが分かっているのだ。中途半端に終えた感じになるのが嫌なのだ。携わったのになんだか途中で逃げ出したかのようにも思えて仕方なかったのだ。
「そうそう、話は変わるけど。友達にせがんだらいいって言ってくれて早めに調べることができたのよ。ジャッジマンと名乗っている男性と貴方がとったボイスレコーダーが一致していたのよ。これで犯人が分かったわよね。」
「わかったのはいいんですけど・・・。」
「いいけど何よ。」
タイミングよくパフェとコーヒーが来た。不穏な雰囲気を感じ取ったのか、そそくさとおいて逃げて行ってしまった。
「俺、その人の深い部分を知ってしまって同情をしてしまって客観的に見られなくなってしまっているんです。そんな俺がこの事件を追ってしまっていいんでしょうか?」
「何言っているの!いいわよ。同情をしてしまうから陥ってしまうこともあることもあるわ。相手の深い部分を見てしまっているからこそ行動が分かっているじゃないの。警察でも知りえなかったことを知っている。止められる可能性を貴方だけがもっているの。」
彼女の言葉はつらつらといっているだけにも見えなかったのだ。経験の上で言っているようにしか見えなかった。それがいいか悪いかは関係ない領域になっていることも・・・。




