改めて
仁が刑事のおじちゃんと呼ぶのは幸之助が刑事であったことを語ったことだ。その人も須藤という人を知っていたのだ。
「まぁ、処刑台というサイトに熱心に調べていたんだよ。最初のころはな。警察もある特定の人物に定めたが海外のサーバーを使っているとかですぐに打ち切ったんだよ。それが気に食わなかったんだよ。須藤さんは。」
「今のブラックリストも特定できますか?」
「できないよ。一人前にサイバーセキュリティの部署を設けても結局は打ちどころなくて動かないんだよ。」
警察としての落ち度を認めないことも多い。今もブラックリストも懸命に捜査をしているといっても何処までやっているのかもわかっていない。上層部もきっとあきらめているとしか思えないのだ。
「海外のサーバーを経由されると警察なんて朝飯前に調べられるかどうかも割られてしまってはどうなるんだろうね。警察の威信がとかいう前に権力に膝まづいてしまうことを選ぶだからな。そんなの威信じゃないんだよ。組織が腐った証を見せびらかして恥をさらしているだけだってね。」
刑事のおじちゃんにとって一番いい吐き出し口になったと思った。誤認逮捕をした際にも科学技術の所為にしたところで最先端の技術を入れてもしょうがないとなるのではないか。短絡的に考えて犯人が見つかる場合があるのかもしれないが、そればかりを繰り返して捕まるとも限らない。
「仁君も警視庁に行ってこんなものかって思うよ。」
「そうですか。有難うございます。」
刑事のおじちゃんはそう言って引き戸を閉めていなくなった。刑事のおじちゃんと話を聞こえていたのか、幸之助は少しにたりと笑った。
「記者クラブに入るのか。新聞記者として一番のところになるのか。すごいな。」
「幸之助さん、そんなこと言っている場合ですか。」
幸之助は少しふらついたからだを立ち上げてリビングへと向かった。リビングにあるテーブルのそばに座って楓がついだ水を飲み干した。
「楓さん、それでいいんですよ。新聞記者になるということは内容に責任を負うということの証だ。それを怠ることをしないんだよ。・・・仁、それと話があるんだ。」
「跡継ぎのこと?」
「楓さんから聞いたか?」
仁がはっきりとうなづくと幸之助が少し悩んだような顔と笑顔を掛け合わせたような感じの表情になった。コップを置いたテーブルを少し眺めていた。
「そうだ。ひと段落したらというよりか1年間だけ事件を追うことができるんだ。」
「そうか。」
今日の氏子との話し合いで決まったことなのだという。今、神社仏閣においても跡取りの問題が来る。別のところから来た住職がいろいろ変えてしまったりして困っている状況もある。それもあって修行をしなおすことになる。