業と炎
「ただ行動をするってことは簡単じゃないぞ。エゴとエゴの戦いっていうのは何処かでぶつかり合ってしまって交わらないことが多いんだ。」
「わかっているよ。父さんも無理はしていないんだろうな。」
仕事柄なのかもしれないが、同情することも多くなってしまうのだという。誰かがなくなったと聞いたときに落ち込むことが多く酒で紛らわせているのを見たことがあったのだ。楓はその姿を遠目で見つめていることがあった。何も言わないことがいいことだとも思った時もあった。
「そりゃこんな仕事をしていれば悲しみに飲み込まれてしまうときだってあるさ。だけど、うまく付き合う方法なんてものをもっていれば苦労しないが、それを探すのに時間がかかってしまうのだ。まぁ、お前も迷っても構わないから向き合え。この仕事ができるのは後少しだからな。後悔をするようなことはするな。」
幸之助の言葉が染みていくしかなかった。後悔という単純なものだが、全くないのだろうから。
「わかったよ。・・・また帰るから。」
「その時は連絡をくれよ。修行をすることもあるから今のうちにお祝いをしておきたいんだ。」
修行をしてまた大きくなれるのだとも思ったりするのだ。仁はそう聞いてわかったと子供のような声で答えた。
携帯を切った後にブラックリストを眺めた。そこではいまだに更新されているのだ。過去に犯罪を犯しそして軽い刑になった人物の名前が挙がっていた。それを援護していた人物たちが匿名という仮面をかぶってつぶやいている。そこでは言葉を荒くしているようだった。書き込みを行う人間のうっ憤晴らしのために使われるための小道具に成り下がってしまっているときもあるのだ。つながるを得ることはそれくらいのものを受けないといけないのだろうか。狭い世界で暮らしているのと同じではないかとも思ってしまうのだ。自分の理屈に合わないとすぐに反感を生むのだというのだ。そこに援護が増えると炎が増していく。そして、その炎が人の心までも燃やしてしまうときすらある。広がった炎は全く消えようともしない。そしてその人が姿を消したとしても灰になったとしても何処かでくすぶり続けるのだ。それを傍観者として見ているだけになってしまう。炎を消す人間は現れることはなかなかないのではないかと思ってしまう。それほどまでに人が冷え切ってしまっているのに、心の炎だけはやたらに燃やしているのだろう。その言葉が業として燃やし続けていくのだろう。何処まで燃え続けるのか。




