光が故の闇
若者は人知れず勝手に大人から期待を持たされてしまって嘆かれる存在に変わってしまうのだろうとも思ったのだ。まだ明るいといえる未来を拓けるほどの力はもっているのだろう。加賀美は指定された部屋へと入っていった。ブラックリストを開けるとそこで繰り広げられているのは黒岩幸吉と妹尾一臣についての議論だった。2人とも犯罪者ではないこともあるのだろうと思っている。加賀美の携帯に電話がかかって来た。
「もしもし。」
「俺や。何か上がっているか?」
「はい、ブラックリストで黒岩幸吉と妹尾一臣がジャッジマンが最後に狙っている宣言をしているようです。書き込みをしている人物からは疑問が上がっているようですが、ジャッジマンのそれ以降の更新もないので探っていくしかなかそうです。」
金城はそれを聞いて考えこむように黙り込んでしまった。加賀美にとっては金城に相談できる内容でもないのだと思った。彼は被害者家族の人間で卜部恭介を恨まずとも恨んでいたはずだからだ。
「ジャッジマンの動向を探ってくれ。そこから浮かんでくることがあるはずだからな。」
「はい。」
加賀美はそう言った後に携帯を切った。犯人は少し残っている良心と戦っているのかもしれないのだ。容易な相手ではないと思ったのだ。金城の電話が終わった後に携帯の連絡帳を眺めた。そこには寺の名前と父親と母親の電話番号を繰り返してみた。それを見ただけで解決するわけではないが、何処かで心のゆとりを誘っているようでもあった。加賀美は父親の名前を押した。何度かコールを鳴らした後に出た。
「もしもし。」
「もしもし。俺だよ。仁だよ。」
「わかっているよ。電話をかけてくるってことはなんか悩んでいるかしているってことだな。」
電話をかける時は決まって悩んでしまった時に限っているので受ける側も内容が分からずとも何となく対応がすることができるのだろう。
「俺はブラックリストと処刑台の犯人が分かったんだよ。」
「それはよかったじゃないか。」
「・・・そうじゃないんだよ。俺はその人を知らないうちに取材をしていて何処か同情をしてしまっている自分がいるんだ。俺は警察じゃないし、捕まえることはできないにしても何処かで助けることができればいいんじゃないかと思っている。」
ぽつぽつと漏らすしかない言葉は悩みながら生み出されるものがあるのだろうと思ってしまった。助けるとは言葉で言うことは簡単でも実行できるかどうかはわからないままだ。
「ひとまず行動をしてみろ。そこからだ。」




