大きな顔で勘違い
「そういえば、今日金城さんのお姉さんに会ったんです。その時に言われたんですよね。黒岩隆吾が黒岩幸吉の本当の息子じゃないと聞いたんですよ。調べてもいいですか?」
「構わん。姉貴が言った話はつまらない話のほうが多いかと思ったやけど、あれやな・・・。仕事場の人から聞いたんやな。嘘を言わへんし、姉貴はそういうのを嫌っているからな。」
金城は納得した様子でうなずいていたのだ。正美は父親に似た部分だとして彼は言った。金城正一は生真面目さが突発的ではないが、かなりの部分を占めていたのだ。正義感が強すぎても警察には務まらないことをわかっていたこともあって交番勤務をしていたことも知っていた。裏目に出たのが卜部恭介の事件だったのだ。
「親父も刑事になりたくて警察入ったんやないって昔から言っていたんや。警視庁とか言ったら所轄とか本部とか窮屈になる部分が多くなってしもて、最後に誰も守れなくなってしまっても元も子もないって言っていたんや。だから、交番勤務をしていたっておふくろから聞いたわ。」
「そうだったんですね。」
「親父は卜部恭介を止めようとして殺されたことはおふくろにとっては恨みにならへん。むしろ、それを避けたら親父を叱ったやろな。おふくろも曲がったことが嫌いやったからな。」
金城は懐かしそうに言った。正美のこともわかっているのだ。中学生の時に不良グループに巻き込まれそうになった友人を助けるために誰にも告げずに挑んだときもあったのだという。無茶をすることが全ての正義とつながらないと幸之助に言われたことで改めて変わっていったのだという。今は警視庁という職場を眺めるために入っているのだといった。
「姉貴が就職の時に警視庁を受けると聞いたときはおふくろと一緒に止めたんや。親父のこともあったしな。・・・そしたら警視庁に入るのは刑事の行いを見たりするだけだって。刑事になるつもりは全くないって聞かされたときはほっとしていたなぁ。」
金城はかなり止めたのだろう。彼もまた新聞記者という職業になった時は止められたのだろう。親は熱意に押される形で許可したのかもしれない。
「平行してブラックリストと処刑台の事件を追ってくれ。まぁ、時間もないから俺も探ってみるわ。ひとまず、加賀美、お前は黒岩隆吾ではなくて黒岩幸吉について調べろ。何処かで墓穴を掘っている部分があると思うわ。」
黒岩幸吉は検事としての地位を大きな顔をしているのだろうかと思っている部分もある。




