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落掌  作者: 実嵐
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つぶやくが故に広がる

 加賀美が描いた記事はまさに卜部良助が語った全てだったのだ。ハローナイスで起きている現実を受け取っているようでもあった。その記事を新聞に載せたとたんにマスコミが取り上げるようにもなったのだ。内藤丈太郎が障碍者を雇って行政から金を巻き上げていた実態が映し出されていたのだ。そこに卜部自身も関与していたことが明らかになったのだ。

 加賀美は社会部で自分の机の近くに立っていた。それは金城を待つために過ぎないのだ。諏訪は部長としてずっしりと構えている姿に怯えるものも多いと思ってしまう。それでも見えぬやさしさがあるのだということもわかっている。

「待ったんか?」

「いいえ。」

「そうか。ハローナイスのことを書いたことで週刊誌を書いている連中がお前を欲しがっているっていう話を部長から聞いてな。期限付きやからあかんっていうってと伝えたんや。そしたら、当たり前やって答えてくれてよかったわ。」

ハローナイスの記事でハローナイスは倒産に追い込まれているのだ。内藤丈太郎の後を継ぐ経営者も現れないために多数の失業者を生み出しているのだという。障碍者を雇ってくれる会社はあるが、そこが一挙に引き受けるほどのお人よしの会社ばかりではないのだ。内藤丈太郎はいずれ詐欺罪で逮捕されるうえに以前に拳銃の密売に関与していた履歴が他のところから浮かんでいるので立件されることやむなしといったところだ。

「卜部良助はどうなるんですか?」

「まぁ、内藤丈太郎が捕まる前に自分で出頭したみたいや。お前に全てを話したのは弟の恭介が死んだことや恭介の忠告すら聞かなかった自分の過ちを受け入れるためとかいうってるらしいわ。本当かどうかは裁判開いてからやないとわからん。」

良助は一種のエリートどころで育ったが、それだけで誤った道の選び方をしてしまったが故に大きな事件に巻き込まれてしまったのだろう。抵抗する力ももっていなかったのか、はたまた持たなかったかまではわからないがそこで生み出す過ちを消すまではいかなかったのだ。

「卜部良助は警視庁にいったとしてどうするんですかね?」

「出頭したとしても弁護士としての価値もなくなったことが嫌やみたいなことを言っていたみたいだからな。嘘も方便どころで収まらなかったんやから。」

彼は父親が前に言っていた言葉を思い出した。ぬれぬ先こそつゆをもいとえといっていたのだ。人は最初、雨が降っているとぬれぬようにするが、ぬれてしまえば同じという意味なのだという。そこからいったん、過ちを犯してしまえばもっとひどいことをもはばからないという意味を持つのだと幸之助がつぶやくように言った。

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