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落掌  作者: 実嵐
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うまみとなりし

卜部は何処かで過ぎ去ってしまった過去と思っているのだろうかと思った。嘘偽りなく生きたわけじゃないのだ。嘘に染まった世界が映す景色というのはきれいなのか?綺麗に映っているように見えているだけで全くそうではないのかもしれない。

「俺はハローナイスの事実を書いてほしいと思っています。暴力団との取引に加えて、障碍者を雇用することで得る金を食い物にしているんです。内藤丈太郎というのはそんな人間なんです。自分が得すればそれ以外は関係ない・・・。」

ハローナイスが経営する施設というのは増えているのだろうが、キチンと運営までは進んでいないのだという。新卒が取れるくらいの時になって新卒を取っていた時期があったのだが、内藤パワハラをしたことで次々にやめてしまったのだ。むさぼり食うような感じで金を扱っていることも弁護士であった経験上知っているのだろう。そこで生まれる不信感には逆らえなかったのだという。

「恭介が殺されたと知った時に内藤は、俺に向かっていったんですよ。良かったなって邪魔者が消えてせいせいしただろうとか言ったんです。悪びれる態度もなかったんです。」

そこで冷や汗ばかりが垂れたのだという。いくら兄弟が悪かったとしても何処かで縁はつながっているものだと思ってしまったのだ。頼れる人としかなれなかったのだろうかと思ってしまったのだろうか。

「あの人は妻子持ちなんですけど、金をもっているとか言いふらして水商売の金に糸目がない愛人を作って安いホテルにいったりしているみたいですよ。何処かで愛想をつかされるのを待っているんです。全てが壊れてしまった時の対応が面白そうだとか思っているんです。」

卜部の願望が見えた気がした。そこから生まれるものの幼稚さがあったのだろうと思ってしまったのだろうか。内藤が通っているキャバクラは基本的に少し相場より高いことで有名なのだが、それをつぶやいたときにやけに強く言ってきたのだという。

「くだらないですよ。俺は何処かで人生に切りをつけたと思っているのに、足取りがいるだけでぞっとしてしまいます。嘘じゃないですよ。守ってもくれないんです。」

そうしか思えなかったのだろうかとも思った。加賀美は新しいコーヒーをマスターに頼んで作ってもらった。コーヒー豆としてはそこまで高くない代物だという。扱い方ひとつで味も香りも変わってくることと同じような気がしてならなかったのだ。

「うまみを飲み込むしかないんですかね。」


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