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落掌  作者: 実嵐
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声を上げて叫ぶ

 卜部は何処かそっけない態度をする様子はなく、ただ打ち明けるように続けた。

「俺は父親の区議会議員の小道具としか思われてなかったんですよ。全くもって俺は恭介とともに一緒に育ったとも思わなかったんです。」

加賀美はその言葉の重さを感じてしまうことしかなかった。消えない道ばかりを探すしかなかったのだろう。卜部商事を受け継いだ時も何処か偉い人との関係を気にしているばかりで知らなかったとも言えないのだろうからと思った。

「良助という名は祖父がつけたといっていました。弟の恭介は父親がつけたんです。誰もが恭しく扱われるようにという立場になってほしいという願いを込めて・・・。」

良助は付け加えたのは恭介を狂わせたのは父親であると。祖父は荻元光と関係を持つようになってから拳銃の取引を行うようにもなっていたのだ。拳銃の裏取引に手を貸すと荻元からそれ相当の額が浮かんできたのだという。それを裏伝票に上げて、売り上げとして評価できないことをいいことに何度か豪華な旅行にも言ったのだ。祖父が時々顔を出す面々に頭を下げているのを見ていると嫌気がさすことは全くなかったのだという。何処かで愚かな行為を行っている代償が起きるとも思っていたのだ。怠った行為の先に待っていることもある。祖父の件が大きく上がらなかったことをよく思ったのか、父親は拳銃の取引を手広くしていったのだ。それでもかすかに良心が残っているのならとも良助自身は思わなかった。

 良助が高校に入学したときには大きなことは起きなかった。むしろ、ただ時間が過ぎていくだけだった。良助は小学生の時に起こしたいじめは何時しか恭介がしたものとして家族全員が認識をし始めたのだ。非がないとされていることで小遣いも多かった。そんなことを繰り返すうちに相手側が声を上げようとしてくるのだ。恭介は黙っているわけがなく、教師に自分ではないと何度も告げたというが父親がそれは嘘だといって聞く耳を持つことはなかったのだ。良助は特段、他の人よりスポーツができるわけでもなかったため、塾に通っていたのだ。恭介は逆に野球に熱を入れていたのだ。高校に入る時も野球に強い高校に入ろうとしていたのだが、父親はそれを嫌がったのだ。大学の進学率のいい私立に入るように何度も迫っていたのだ。

「父が提示した高校は甲子園すら行けず、都大会でも勝ったこともない弱小の野球部で有名だったところだったんです。恭介は嫌がっていました。」


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