見えぬ世界の終わり
「その当時はそれでよかったと思っていました。父親から褒められていたし、これで感じてしまうこともあったんです。事件が起きたときは恭介に対して恨んでいました。ですが・・・。」
良助はぽつぽつと打っている。自分自身の行いが週刊誌の記事に乗ったり、父親がしていた会社についても浮き彫りになったりしたときは1人になり、そして障害を持った状態でできることもあったのだ。そこで雇ってくれたのがハローナイスだったのだ。
「過去の経歴もあってか、ハローナイスで闇の時に使われる弁護士としても雇われていたので給料もよかったですよ。」
荻元光が培ったのは闇で逃れるための方法だったのだ。その知識をもって今はハローナイスにいるのだが、卜部が明かしたというのは全てを終わりにしたいと考えたりしていないのだろうかと加賀美は思った。今や弁護士という資格がなくなってしまったことも変わるきっかけになったのだろうかと思ったのだ。
「そんなことを言ってもいいんですか?」
「えぇ、俺なんて弁護士資格がなくなったらただの障害を持ったお荷物ですよ。特にハローナイスにとってはね。施設に入れて金儲けをすることができなくなってしまうんでね。」
行政に全てを明かす結果になってしまったので、近日において警察が乗り込んでくることになっているのを卜部は知っている。経営者である内藤丈太郎には言っていないのだというのだ。何故、明かさないのかと聞いてみると少しだけパソコンを打つ手が止まった。加賀美はその間にコーヒーを飲んだ。うまみを感じられるほどのコーヒーだった。
「それは・・・、俺を今、ハローナイスのお荷物にしたうえでやりだしたのは俺だと言い出すのが目に見えているからです。擦り付けることは簡単ですからね。」
内藤がやりたいと言い出したことだと彼はボイスレコーダーにとっておいたのだとも明かしたのだ。ばれないところにおいているので、彼は大丈夫だと声に出さずに言った。テーブルにあったアイスコーヒーが汗だけを流していた。彼は最初に出されている水を飲んでいる。
「生きているだけで迷惑をかけているっていう意味が分かったかって恭介が言いに来たかったみたいです。死ぬことも顧みずに出てきた恭介は俺に何かを言い来たかったのかなとも考えるんです。過ちは何処かで振り返らないと進まないんですよね。」
弟の死をそこまで重く受け止められるように変わっていることも驚きだったのだ。卜部恭介が伝えようとしていたことが聴きたかったと加賀美は思った。




