つまらないとき
諏訪に言われた通りに先に加賀美はカフェへと顔を出した。
「いらっしゃい。」
「初めまして。俺は日楽新聞の社会部の記者をしています。加賀美仁です。」
「そう。諏訪さんが上に上がったっていうことだね。ハローナイスの情報なら漏らすよ。だって青臭い夢語っている青二才が言うだけじゃないんだから。」
マスターが新聞記者にハローナイスについて漏らすのは夢を語るだけならいいとは思っているのだが、それを語って裏切っていることをわかっているからだ。内藤は時々地元の小さな記事に乗ったことをしていたこともあったのかもしれない。
「内藤丈太郎っていう人間は荻元光が導いたとしか考えてしまうしかないんだよね。いいことばかりじゃないし、ハローナイスに就職した子たちはそこそこ喜ぶんだけど、真実を知った時にうんざりしたと思うんだよね・・・。まぁ、そんなことよりハローナイスに行ってさ、こっちに連れてきなよ。うまいコーヒーくらいは入れるから。」
「有難うございます。」
しゃれたカフェにはしゃれた心意気も漂っていた。ハローナイスが入っているビルには以前別の会社が入っていた時に強盗が入って人が一人死んでいるのだ。今はきれいになっているため、わからないかもしれないが、それでもわかることがあるのだ。ハローナイスは最上階にはおらずに真ん中にいるのだ。ハローナイスのインターホンを押すと受付の女性が現れた。
「どちら様でしょうか?」
「日楽新聞のものです。諏訪さんから話を受けてきました。」
「内容はどのようなものでしょうか?」
受付の女性が少し強気な言葉で言った。林良助に会いたいというとすぐに社長に電話で伝え始めたのだ。林と会うにはアポが必要だの駄々をこねると思ってしまった。林は内藤にとっては大切なものだとしか考えないとしか思えないのだ。
「よろしいとのことです。林と会うには近くにあるカフェで会うことになりますが、構いませんか?」
「いいですよ。」
受付の女性が姿を一時だけ消したのだ。その時に声が漏れていた。
「日楽新聞の記者が卜部良助に会いたいだなんて許可をしてもよかったのですか?」
「いいんだよ。うちはただでさえ腕のいい弁護士もつぶされてしまったんだ。後遺症を持った会社にとって光となる道があるかもしれないのを断るのは困るな。」
「わかりました。林を呼んでまいります。」
「頼んだよ。卜部良助と名乗っていても今はもう同じなんだけどな。弟も死んで生き残った自分もつまらない人生を歩んでいるとしか思えないがな。」




