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落掌  作者: 実嵐
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突き飛ばした方向

荻元の眼は弁護士にもっておくべきの誠実さよりも利益を重視してしまって相談者からも恨まれているのではないかと思ってしまった。人が見れば職業を間違えかねない何かを抱えているようでもある。彼の言葉の節々から感じられるのは相談者すら相手にしていないように思えた。

「卜部商事というのは貿易も行っていましたからね。そこで請け負った区議会議員までなった人がまさか、自分の息子にやってもいないことをなすりつけているとは思いませんでしたよ。テレビでも死人に口なしとばかりに悪口を言われていましたからね。人徳がなかったのでしょう。」

「それでも弁護士をされていましたよね。」

「はい、断れないままだったんですよ。まだ事務所は大きくなかった故に頼っていました。結構金額を上げてくれたり融通が利いたのでたよきってしまったんです。」

卜部商事とはかなり密接な関係であったことが聴いて取れるのだ。荻元もそれで構わなかったが、卜部恭介の事件が起きてしまった上に恭介がいじめをしていたわけでもなく、兄の良助であったことが浮かび上がったのだ。殺された父親にも障害を負った兄も恨まれても仕方ないと思わせるような行動であったのだ。荻元は顔を下に向けているのだ。

「それで卜部良助さんはどんな弁護士だったんですか?」

「卜部君は主に顧問弁護士を担っていました。海外に留学してまで法律を習った経歴というのは武器になりますからね。最初は国内企業で腕を磨いて、事件が起きるころには外資系を行っていました。英語も堪能でしたからこれからというときに起きてしまったんです。」

荻元によるとその外資系の企業との取引も卜部が辞めないと受けないといわれてしまったのだ。彼は悩んだ末にやめてもらうことにしたのだ。すぐにやめさせるのもいけないと思ったのか、荻元とつながりのある企業に引き取ってもらったのだ。そこの企業は刑務所に入っていた経歴がある人ですら受け入れていたのだという。

「そこに入った時はかなり困った顔をしていましたが、右半身のマヒが残ってしまったんですよね。しょうがないという部分もあります。できることは限られていますから。・・・彼が弁護士として動けるとも思えません。」

良助は車いすでの生活を余儀なくされているのだという。荻元は恭介にそのことを告げたときにいったのだ。図太い奴だといって少し乾いた声で笑っていたのだ。何故そんなことを言うのかと荻元が聴くと恭介は言った。

『親父を守ろうとして俺の前に出てきたから突き飛ばしたまでだ。おふくろも親父も驚いた顔をしてさ、何てことをしたみたいな偽善者面した顔には笑ったぜ。』

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