嫌われること
彼女の話を聞いたところで思ったところがあったのだ。黒岩の経歴は決して華々しいものではないということだ。会うまでにまだ時間があるので聞き込みをするのもありかもしれないと思った。黒岩隆吾と検索にかけると古いところから、荻元法律事務所という名前が挙がったのだ。代表のところを開いてみると荻元光となっていた。加賀美はメモ帳に電話番号を書き込み、休憩スペースへと向かった。携帯に打ち込むと緊張した面持ちで携帯を持った。
「もしもし。」
「はい、荻元法律事務所でございます。要望は何でしょうか?」
電話に出た人物は電話対応に慣れているのか、かすかにぶれない声に驚いてしまったのだ。
「あのー、荻元さんにこれからお会いしたいのですが・・・。」
「構いません。事務所にいる予定ですので、でしたら、会社名とお名前をお聞かせ願いますか?」
言われるままに答えた。すると、受け答えをする人の何処かほっとするような声が漏れていた。その人物がどれだけの緊張をもってやっていたのかを感じてしまったのだ。アポを取ることができたので加賀美にとっても落ち着ける状態になったのだ。果たしてあった時に荻元はどのように答えるのだろうかと思ってしまった。黒岩が顧問弁護士になりたいと志願することはないと思ったからだ。言葉から漏れる嘘にはある程度の判断はついているのでどのように言ってくるかが悩ましいところだ。電話を終えて自分の席へと戻ると諏訪が近づいてきた。
「アポ取ったのか?」
「はい、荻元法律事務所といってかなり顧問弁護士として成り立っている事務所ですよ。刑事事件も少ないですが取り扱っていますね。国選によってえらばれたときくらいしかできないんですよね。」
「そうか。だから黒岩にとってはいづらい場所になってしまったわけか。」
諏訪はそう言ってそそくさと戻ってしまった。あれが彼のやり方なのだと思った。
「いいわね。あの行動は部長が認めた人しかやらないのよ。まぁ、もともと部長が認めてきた人で本当に此処までやる人は少ないからね。余計にでしょうね。」
「認めてきた人は結構いたんですか?」
「そりゃいたわよ。文化部にいた人を此処に呼んだりしてね。文化部でやっていたら文化でいいと思う人もたまにはいるから捕まえるのを間違えたりするのよ。他の部署でもやっているのよ。社会部に行きたいと思う人もいるけど、使い物になるかどうかは別だからね。」
社会部では事件を追いかけたりもするので嫌われる部署でもあるといった。




