残った代償
羽鳥に話を聞いた後にパソコンへと向かった。須藤哲司という名が載っているとも思わないが、かすかな道でもたどるべきだと思ったのだ。検索に須藤哲司と打つと何処から漏れたのかというほどの情報が載っていた。日楽新聞という項目が上がった。息子の須藤哲明がバリスタとして活躍していることが載っていた。文化部が調べたとなると少しでも残っている可能性がある。隣の金子に声をかけた。
「おい、金子。これってお前が書いた記事じゃないのか?」
「そうだよ。確か企画を出して試しにやっていたんだよ。部長には全く受けなかったけど、読者の一部に受けて続けているよ。それがどうかしたのか?」
「その記事をコピーしてくれないか?」
「いいぞ。簡単だからな。」
金子はそう言って記事をコピーするために立ち上がった。金子は趣味で喫茶店をめぐっていてそれを発展させた企画を立てたのだ。それが一部に受けたことで羽鳥も止められなくなってしまったのだ。今も金子は古い喫茶店から新しくできた喫茶店を回っている。冷やかしを言いに来た同僚とは全く違うと思ってしまう。彼の企画には誰もが食いつくようなものを生み出さず、何処かひねくれた案を生み出しては羽鳥に怒られてしまっている。地方に飛ぶという話が上がっているほどの危うい立場もわかっているのかわからないのか皮肉を周りに振りまいている。金子が記事をもって来た。
「悪いな。」
「構わないよ。どうせあいつみたいに悪質な行為に使うわけじゃあるまいし。」
「あいつって何かやらかしたのか?」
金子によるとその同僚は金子の記事をコピーして出向き喫茶店を見て回った後にありもしないデマを書き上げたのだ。それは店主からの苦情と受け取った名刺で発覚したのだ。彼が言うには羽鳥に認められるためなら何でもやるといったのだ。
「今じゃああいつはやめるように人事の奴にいわれているんだよ。それを断っているから。形ばかりに飛ばされてクビになるじゃないのか。だから、周りの奴も相手にしないんだよ。新聞にとってはデマなんて命取りな行為を取ったわけなんだから。」
その記事を書いた後に謝罪文を載せ、彼自身に謝りに行ったのだという。本心からの謝罪であったために裁判まではいかなかった。だから彼には自主的にやめるか残って記事を書けないようになるかを選ぶことになり書かないことになったのだ。人事としても残られることは会社にとっては痛手であるためにやめないといっているので実質クビになる結末なのだろう。